戦略的意思決定は、経営者が企業を取り巻く外部環境の機会と脅威を明確に認識し、経営の方向性を明確しながら、経営資源に適した経営戦略を遂行することです(岡本ら、2018年)。日本の経営学者、清水龍瑩(りゅうえい)氏が提唱した概念で、将来構想の構築や執行管理に並ぶ経営者機能の1つに位置付けられています。
佐竹(2019年)によると、経営戦略の意思決定の平均化を防ぎ、イノベーションを促進するために、日本企業での戦略的意思決定は、①カシ・カリの論理の遂行、②根回し、③公式の決定、の3段階のプロセスを踏むとされています。
1つ目のカシ・カリの論理の遂行は、社長がまわりの役員に普段からカシを作っておき、役員が常に社長に対してカリを作っている雰囲気を形成することです。カシとは、役員の業務遂行上の失敗を黙認したり、部下の昇進をバックアップしたりすることが当てはまる。社長がこうしたカシを役員に作っておくことで、社長は考えを役員に受け入れてもらいやすくなります(山﨑、2014年)。
根回しは、具体的な案件を公式発表する前に、関係者に朝食会や昼食会などのインフォーマルな形で提示し、同意を求める方策です(岡本ら、2018年)。朝食会などのオープンな場だけでなく、役員に個別に戦略案を提示するなど、クローズドな根回しなどを通じ、水面下で役員の支持を獲得することを目的としています。
それらの過程を経て、最後に執行されるのが、公式の決定です。公式の決定は儀礼的な側面が強く、迅速に行います。戦略的意思決定では、この時点で、役員の過半数から賛同を得ている可能性が高いと考えられます。
人々のさまざまな思惑が働く組織は、マネジメントそれ自体が困難であるケースが多いとされます。それだけに、経営理念の明確化を軸に、従業員、さらには役員との関係性を重視しながらマネジメントを図る戦略的意思決定は、合理的な意思決定手段だと考えられます。
参考文献集
岡本大輔、古川靖洋、佐藤和、馬塲杉夫『深化する日本の経営ー社会・トップ・戦略ー』千倉書房、2018年、pp2-17、34-36、83-88
佐竹隆幸「中小企業及び小規模事業者の事業承継における課題と対応ー承継者難への対応と持続可能な地域づくりー」『中小企業支援研究』千葉商科大学、2019年、pp1-23
山﨑泰明「ファミリービジネスにおける経営者のケイパビリティ イノベーションを担う経営者のケイパビリティに関する研究」立命館大、2014年
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