選択の境界線で:病を明かすべきか、伏せるべきか

選択の境界線で:病を明かすべきか、伏せるべきか

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コラム
就職や転職という人生の大きな節目において、自らの病を明かす「オープン」を選ぶか、それとも伏せる「クローズ」を選ぶか。この問いは、単なる手続き上の違いに留まらず、その後の働き方や生活の安定を根底から左右する、非常に重い選択となります。

現代社会には、未だ解消されていない不平等や生きづらさが厳然として存在します。例えば、精神疾患の治療中や既往歴がある場合、大手の生命保険や医療保険への新規加入・更新が難しくなるという現実があります。これは将来への備えに影を落とします。さらに、マイホームの購入という夢の前に立ちはだかるのが、住宅ローンの契約に必須となる「団体信用生命保険(団信)」の壁です。審査に通らず、人生の計画を変更せざるを得ないケースも少なくありません。

また、雇用形態と収入の格差という構造的な問題も横たわっています。障害者雇用枠は「適切な配慮を受けられる」という大きなメリットがある反面、短時間労働や契約社員からのスタートが多く、健常者の一般雇用に比べると平均収入が低くなりやすい傾向にあります。

しかし、何よりも当事者の心理的な負担となるのは、周囲の無理解かもしれません。とりわけ精神疾患や内臓の疾患などは身体障害のように外見から分かりにくいため、職場や、時には家族からさえも「ただの怠けではないか」「精神的に弱いだけだ」と誤解されることがあります。かと思えば、過剰に腫れ物のように扱われ、孤立してしまうこともあります。こうした周囲の視線にさらされる結果、「病気を隠して働くしかない」と、クローズ就労の選択を迫られる人も決して少なくないのです。

では、私たちはどちらの道を歩むべきなのでしょうか。明確な正解はありませんが、それぞれの生き方に適した方向性が見えてきます。

まず、「オープン」という選択が向いているのは、次のような方々です。

・毎月の定期的な通院や、決まった時間での服薬が生活に欠かせない方
・ストレスがかかると、今でも不眠や気分の落ち込みといった体調の大きな波が出やすい方
・「業務の指示は1つずつ書面でほしい」など、具体的な配慮がなければ働くことが難しい方
・過去にクローズで無理をして働き、結果として病気が再発し退職に至った経験がある方

一方で、「クローズ」という選択が向いているのは、次のような方々です。

・症状が長期間にわたって安定(寛解)しており、主治医からも「一般就労が可能」と太鼓判を押されている方
・定時退社や有給休暇の取得など、一般企業の通常の労務管理の枠内で、十分にセルフコントロールができる方
・福祉の手厚いサポートを受けることよりも、これまでのキャリアを存分に活かしたい、あるいは収入面を最重視したい方

病と共に生きながら働くということは、常に自分の心身と社会の仕組みとの折り合いをつけ続けるプロセスでもあります。どちらの道を選ぶにせよ、それが自らの尊厳を守り、より自分らしく息ができる選択であることを願ってやみません。

                          沙門蒼俊  合掌
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