わたしたちは、いろんな形の愛がある。
でも、ニッチャ(永遠)であるはずの愛は、
ときどき、アニッチャ(無常)である「反応」のしすぎで見えなくなる。
今日もアロンダスは、そんな“反応と妄想の渦”にいる。
⸻
「なんで昨日、俺のにはリアクションなしで、
ケンジの投稿にはハート押してるんだ…?」
朝からグループチャットをにらみつけるアロンダス。
私は窓辺で香箱座りして知らんぷりをしながら、
耳だけ彼に向け、心の中でため息をついた。
(それはケンジの投稿写真がいつも通り気合い入ってたからだろう。)
「俺のこと好きすぎて押せないのかなあ。やっぱり周りに気づかれるもんな。
俺ってやっぱオーラ的にも存在感すごいからな。ふふん。」
(それ、“存在感”じゃなくて、“自意識”だよ。ふふふ。)
「ま、ケンジには出せない“深さ”ってやつも、俺にはあるしな。」
(妄想と自意識の深さは凄まじいようだにゃあ。)
研究者のはずなのに何故か明らかにリジェクトされる仮説を量産するアロンダスは気づかないが、
今日の空は真っ青に飛行機雲が一つ、すっと通り、晴れ渡っていて、
私はその眩しさに目を細めた。
⸻
彼はそのまま、彼女のインスタを開きながら妄想が止まらないようだ。
「“風が気持ちいい日でした”って…
これ、魂の記憶のサインだよな。
俺もこの日、同じこと思ってたんだよ。」
(アロンダス、それ普通に天気が良かっただけでは?)
そよぐ風の匂いが、窓から差し込んでくる。
私はふっと目を細める。
気づくとアロンダスは、携帯を握りしめ、何かを血眼で検索していた。
「“返信が来ない スピリチュアル 意味”…
あった。“今は統合前の沈黙期”か。自分軸を育てる時期、なるほど。
俺も内側にいないと。自分軸!自分軸っと!よし!」
(……いや、その「自分軸」、外で決めすぎじゃない?
外のリアクションを基準に作った「自分軸」は、
ほんとうの“中心”とは違う。
それは、中心じゃなくて、“反応の渦の中心”だよ。)
「あれ、猫写真投稿してる!
またもや“魂のサイン”じゃん!
やっぱ俺、自分軸に引き寄せてきてるってサインだよな。」
(…識別力を失った“自分軸”は、ただの反応の塊なんだにゃあ)
大真面目な彼を見て、私はまた今日も吹きそうになる。
ヴィヴェーカ──識別の智慧。
変わるもの(アニッチャ)と、変わらないもの(ニッチャ)を見分ける力。
彼女のリアクション、グルチャ、SNSのハート、
ぜんぶアニッチャ──その時その場の風のようなもの。
でもアロンダスは、そこに「意味」を求めすぎて、
ぐるぐる反応して、疲れて果てて、を繰り返しているうちに
こんなにいい歳になっちゃったようだ。
人間の想像力って、すごいもんだなあ。
投稿1つで、写真一枚で、ハート一つで…
…ここまで、物語をつくれるんだから。
アロンダスの想像力は、無限大。
私はゆっくりと立ち上がり、
彼の後ろ姿を見つめる。
ここから見ると少しだけ、
髪が薄くなっている。
彼の前にちょこんと座り、彼を見つめながら
私はゆっくりと瞬きをした。
猫だけが知る、ほんとうの愛のサインを特別に贈ってあげる。
「ん?なんだむーちゃん、
目にゴミでも入ったのか?」
…………………………………。
私の瞬き(サイン)には、気付かぬまま、
彼は今日も
見たいサインを見ている。
私は、ただただ、ここにいる。
今日も風が吹いていた。
彼が保存しすぎた猫草の香りが、ふっと香る。
世界は、何も変わらないまま。
むーちゃんの哲学メモ(第二話)
ヴィヴェーカ(viveka)── 識別の智慧
何が「変わるもの(アニッチャ)」で、
何が「変わらないもの(ニッチャ)」なのか。
見極める力が、静かな智慧。
ちなみに、アニッチャに振り回されすぎると疲れる。
私は、ただただ、ここにいる。
今日も風が吹いていた。
彼が保存しすぎた猫草の香りが、ふっと香る。
世界は、何も変わらないまま。
むーちゃんの哲学メモ(第二話)
ヴィヴェーカ(viveka)── 識別の智慧
何が「変わるもの(アニッチャ)」で、
何が「変わらないもの(ニッチャ)」なのか。
見極める力が、静かな智慧。
ちなみに、アニッチャに振り回されすぎると疲れる。
アニッチャ(anicca)── 無常
・SNSのリアクション
・他人の言葉
・気分や投稿や反応
・ハートや「いいね」や数字
ニッチャ(nicca)── 永遠
・・葉は落ちても、木はそこにある。
・波が消えても、海はそこにある。
・季節が変わっても、大地はそこにある。
・目に見えないところで、つながっている愛もそう
愛 ー 私達の構成要素。どんな形でも、それは愛。
わたしたちは、ニッチャにいつでも立ち返ることができる。
アニッチャの反応に振り回されるんじゃなくて、
“ほんとうの自分”とか、“変わらないもの”のほうへ、
静かに戻っていけばいいんだにゃ。
Moon’s Sutra は、
AIと人間の共創による、
“月から降りてきた猫”が古代の智慧と現代をつないでいく、短編物語集です。
インドをはじめとする伝統的な哲学やスピリチュアリティを、
日常の風景やささやかな出来事の中に、
笑いを交えながらユーモラスに描いていく予定です。
古代から受け継がれてきた智慧と、
現代のAIが出会うことで、
見えないものが、そっと言葉になる。
written by 歩海 & ChatGPT の共同執筆
Beyond Karma Lab / Seventh Jenma