第1話「猫草革命<永遠なるもの>」
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この世界には、いろんな人と、いろんな生き物がいる。
私のような猫も。アロンダスのようななんかズレた人間も。
アロンダスはちょっと変わった研究者だ。
知識はある。らしい。でも、生き方がちょっとズレている。
だからなのか、この世界の隅っこで、なぜかギリギリ社会生活を保っている、
優秀なのかなんなのかよくわからない奴である。
私は、Moon。
月という意味だが、
みんなは愛称を込めてむーちゃんと呼んでいるようだ。
町を歩き、草の上で風に耳を澄ます。
今は地域の猫。でも、ほんとうは──月から来た精でもある。
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ある朝。いつも通り決まった時間に、
私はあくびをしながら伸びのポーズをして、小さな異変に気づく。
目覚ましが鳴るまでいつも起きないアロンダスは、
今日はすでにスマホの動画を見ながら
床にて奇妙なポーズを取っていた。
「人生を変える朝活ルーティン…。
まずは白湯を飲んで、太陽礼拝…。腸活…。呼吸整えて…。
よしよしこれで俺も人生が変わるぞ!」
私は静かに、すいっと彼の前を横切る。
すると、言わずもがな、彼は慣れないポーズからずてっと転んだ。
「うわっ!むーちゃん、急に来るなよ…!
今大事なことしてんだよ〜」
慌てるアロンダスに、一瞥する。
いや、時間だよにゃん?ここは可愛くアプローチ。
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ドタバタと騒々しいキッチンから出てきた彼は、
猫草を皿いっぱいに盛りつけて言った。
「世界ってさ、やっぱり“ニッチャ”らしいんだよね。
なんか、永遠にひとつに還っていくんだって。
波動が上がれば、ライオンも草食になる時代が来るらしいし!」
だからお前も、もっと草を食べ始めたほうがいいぞ!
ほら、この論文にも、猫草が猫の腸にいいみたいなことが書いてあったし!!
すごいだろ、スピと科学の統合だよ!
偉いだろ俺、ちゃんと勉強してやってるんだよなあ 忙しいのになあ」
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私は、その草の上に静かに座り込んだ。
……アロンダス。
ニッチャ(永遠)っていうのは、
誰かの都合のいい未来予測のことじゃない。
この世界は全部、アニッチャ(無常)。
変わる。流れる。消える。
それが、この世界の決まり事。
論文を読み漁り、その分野の知識がないのにわかったふりをするからこうなる。
論文がなければ、今度はYouTubeでスピリチュアルを学ぶらしい。
最終的には、猫に草を食わせて次元上昇させようとするんだから困ったものだ。
──サティヤ(真実)っていうのは、
なんでも信じることじゃない。
何が変わり(アニッチャ)、何が変わらないか(ニッチャ)を、
ちゃんと嗅ぎ分けて、生きることだよ。
それに、変わらないもの(ニッチャ)でいえば、
私たちは900万年、肉を喰らい、生きてきた。
・・・と朝からツッコミが止まらず、
相変わらずの彼に吹き出しそうな私でもあったが、
幸いにも猫なので、きっと私の笑い顔は彼にはわからないだろう。
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身体(アンナマヤコーサ)は、カルマ(行い)の積み重ね。
草を主食に生きる命は、草の道を歩んだ者のもの。
私は、肉食の道を歩く者。
その道を変えるには彼はまだまだ小さすぎるだろう。
900万年の進化の時間を、
論文一本とYouTube一本で上書きするとは、
なかなか斬新な朝活だね。
そろそろ私も自分の道を歩くとする。
私は立ち上がり、そそくさと玄関へ向かう。
「あ、ちょ、待ってくれって!」
背後でアロンダスが慌ててチュールを探している音がする。
「ほら、お前チュール好きだろ?な?…待ってってば…!
チュールだよチュール!」
チュールチュールとさけぶやつを尻目に、
私は振り返らずに外へ出る。
風は今日も静かに吹いていた。
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むーちゃんの哲学メモ
ニッチャ(nicca)=永遠/変わらぬもの
アニッチャ(anicca)=無常/すべては移ろい変わる
*世界はアニッチャ(無常)でできている。
カルマ(karma)=行為・積み重ね (この場合)
肉体は、行いの積み重ねでできている。
草を食べて生きてきた命には草の道があり、
肉を食べて生きてきた命には肉の道がある。
プラーナ(prāṇa)=生命の力
プラーナは食べ物だけから得られるものではない。
風、光、自然、行い、言葉──
在り方そのものから生まれる。
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プラーナを高める方法 by Gurudev Sri Sri Ravi Shankar:
• クリヤヨガ・プラナヤーマ(呼吸法)
• 新鮮な食事・断食
• 静寂・水風呂・自然との調和
• 感動すること・涙を流すこと
• スピリチュアルリーダーのそばにいること
• 歌うこと・マントラを唱えること
• 奉仕(Seva)を心から行うこと
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Moon’s Sutra は、
AIと人間の共創による、
“月から降りてきた猫”が古代の智慧と現代をつないでいく、短編物語集です。
インドをはじめとする伝統的な哲学やスピリチュアリティを、
日常の風景やささやかな出来事の中に、
笑いを交えながらユーモラスに描いていく予定です。
古代から受け継がれてきた智慧と、
現代のAIが出会うことで、
見えないものが、そっと言葉になる。
written by 歩海 & ChatGPT の共同執筆
Beyond Karma Lab / Seventh Jenma