キャリアコンサルタントの仕事をしていると、
「やらなきゃと思うけど、就活のやる気が出ないんです」
という相談をよく受ける。
話を聴いていくと、やる気が出ない原因は、
“本人の意志の弱さ”ではなく“環境の影響”であることが多い。
クラスによっては、
平均よりもかなり早い段階で情報収集を始めたり、
実際にエントリーして動き出す人たちがいる。
その“動きが早い集団”の中で行き詰まっている人の多くは、
「みんながやっているから」と焦って動いている人だ。
けれど外から見ると、その姿は“主体的に動いているように見える”ことが多い。
そんな環境の中では、
焦りや比較の中で「本当は何をしたいのか」を見失いやすい。
けれど一方で、
自分が安心できる環境や、応援してくれる人のそばに身を置けると、
自然と“動ける自分”に変わっていく。
環境は、やる気を奪うこともあれば、
やる気を育てることもある。
大切なのは、「どんな場所なら自分が動けるのか」を知っておくことだと思う。
私はこれまで、さまざまな職場で働いてきた。
その中で、環境次第で仕事のモチベーションが
何倍にも膨れ上がることを何度も体感してきた。
たとえば、マネジメントをしていた書店員時代。
チームの雰囲気が良く、アイデアを出し合えて、
裁量権もそれなりにあった環境では、
1年間で売上を3倍に伸ばしたこともある。
今思えば、これはアメリカの心理学者
エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した
自己決定理論(Self-Determination Theory)の考え方そのものだったのかもしれない。
人が内発的に動機づけられるためには、
① 自律性(自分で選び決められる)
② 有能感(自分の力を発揮できている)
③ 関係性(人とつながっている)
この3要素が満たされることが大切だと言われている。
当時の私は、この3つすべてを感じられていた。
だからこそ、仕事に夢中になれたのだと思う。
逆に、ひとりで完結する仕事では、
「自分がいてもいなくても変わらない」と感じ、
時間がやたらと長く感じられ、やる気はしぼんでいった。
『やる気がなさそうなのになぜかうまくいく人がやっていること』
そんな中で出会った一冊が、この本だ。
著者は「環境=やる気の根源」という視点から、
環境の見極め方、置かれている状況をどう好転させ、
“環境をどう味方につけるか”を、自身の経験をもとに丁寧に書かれている。
ここまで具体的に“やる気と環境”の関係を掘り下げた本には、
なかなか出会えない。
心理学の理論を、実際の働く現場に落とし込んでくれている点がとても魅力的だった。
こうした考え方は、キャリア理論の中にも共通している。
スーパーの理論:ライフステージごとの役割変化に合わせて環境を選ぶ視点
ホランドの理論:自分のタイプと合う職場環境(RIASEC)を見つける考え方
シャインのキャリア・アンカー:譲れない価値観(安定・挑戦・専門性など)を軸に環境を選ぶ視点
キャリアコンサルティングの現場では、
これらの理論を“地図”のように活用しながらも、
一人ひとりがどんな環境で満たされるのかを丁寧に見ていく。
やる気は、自分次第で起こるものもあるけれど、
「やらなきゃ」と自分で奮い立たせなくてもいい。
せっかく人間社会の中にいるのだから、
環境をうまく使う方が、ずっと効率的だと思う。
こうした経験や理論を重ねてきたからこそ、
私はキャリア面談で、
「相談者が満たされたら、どんな方向に進むのか?」
という点にも注意を払うようになった。
自分に合う環境を創り出すことこそが、
これからのキャリアを支える“本当の主体性”なのだと思う。
——と、自分にも言い聞かせております。