密室の恐怖! ビデオ編集室の戦い(笑)えない…

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ビジネス・マーケティング
現在、映像(動画)制作に関わる方で、「ビデオ編集室」なる存在を知っているのはおそらく40代以上の方ではないでしょうか?

今や、PremiereProを始めとするノンリニア編集が主流ですが、20年前までは、いわゆる「ビデオテープ編集」が主流でした。私はおよそ5年間、そのビデオ編集室のオペレーターとして勤務していたのです。

内容は…TVCM・企業/サービスPR映像・音楽PVなど、あらゆるジャンルの映像作品を編集してきました。
作品の数だけディレクター(演出家)がいるので、編集スキルが身についただけでなく、企画構成やシナリオライティング、演出テクニックまで、仕事をしながら学びとることができました。
たびたび徹夜作業が続くなど、体力的にはハードでしたが、ここでの経験が現在に至るまでの映像クリエイターとしての基礎作りになったのです。

さて…

気になっていると思いますので、タイトルの意味をお伝えいたしましょう。
わかりやすいようにTVCMの編集作業だとしましょう。
当時、私は『不二家』という大手菓子メーカーのTVCMの編集を担当することが多かったのです。
不二家のCMといえば、制作費はキャスティング費(いわゆるタレントさん)抜きでも1億円近い、または億以上の膨大な金額です。

よって、お金を出す側も、もらう側も、それぞれの立場で”失敗できない”のでみんな必死なわけです。
具体的にいうと『クライアント(不二家)』vs『広告代理店』vs『制作会社』のせめぎ合いです。

もちろん、当初のCMプランナーが考えたTVCM企画どおりに、シナリオどおりに映像が作られていれば、大きな揉め事にはなりません。では揉める時はどんな場合が多いのか?

一番多いのは『映像(動画)の編集段階になって、突然クライアントのお偉いさんがでしゃばってくる』ことです。
私もビデオ編集室の前はTVCM制作会社にいたので経験があるのですが…

だいたいクライアント内においてTVCMの制作は宣伝部が主導します。そこにマーケティング部や広報部の担当者も加わります。そこで決められたTVCMの内容、コンセプト、出演者、制作予算が上層部(だいたい部長クラス)に伝えられ、稟議が通り、制作が決定するわけです。

先に書いた『お偉いさん』とは部長以上の『常務』や『専務』クラスのことです。この方たちは企画会議にはもちろん参加せず、撮影現場にも来ません。

しかし、稀に…なぜは編集室にフラッと現れることがあるのです。
一同ビビりまくります。「え?なんでこの段階でこの人くるの?」って感じで。

そして、あらかた編集の終わった映像を見て、あれこれ口を挟むのです。
「なんでこの企画にしたの?」「なんでこのタレントを選んだの?」とか…

もう全員が口には出しませんが同じことを考えています。
『は?今更それ…言いますか?』ってね(笑)

クライアントの担当者(部長クラす)は、ここですかさず、「広告代理店からこんなコンセプトで作りましょう。タレントも今人気のこのコを使いましょうって提案があったので…」

すると広告代理店は制作会社のディレクターに向かって「A君が企画書を書いたんです。どうしてこのコンセプトにしたのか、専務にご説明を!」と無茶ぶりします(笑)
Aディレクターは、必死に自分の考えを説明しますが、最後に「でも最終的に企画にGoを出したのは代理店のBさんですよね?」
と、名指しされたB氏は、「いやいや、うちが最終プレゼンして制作を決定したのは(クライアントの)C部長ですよね」と、堂々巡り(苦笑)

全員が自分の責任にしたくないから、そこから責任のなすりつけ合いが始まってしまうのです。
しかも、防音設備の行き届いた密室の狭い部屋。多少声を荒げても誰も止めに入ってきたりしません。

これ、その時は私も中に入るわけにはいかず、ただ見守るしかないのですが、こういう場面を数多く経験することにより、その後の私の仕事に良い教訓となりました。

つまり、クライアントの思い、代理店や制作会社の本音、考えがよくわかり、「どういう理由でクライアントは怒るのか?」「そうなった場合、何を言うと火に油を注ぐのか?」「逆に、どういう言い方をすればクライアントは納得してくれるのか?」を、思わぬ形で学ぶことができたからです。

今の若い動画クリエイターはtwitterやクラウドワークス経由で動画編集の仕事を請け負うことが多いと思います。まあ、昔とは時代が違うといえばそれまでですが。

しかし、映像制作を一生の仕事にしたいと思うなら、ぜひ「直接」仕事の発注者(クライアント)と会い、「どんな動画を求めてるのか?」「どんな結果を期待しているのか?」「なぜこの予算なのか?」を肌で感じる経験をたくさんした方がいいと思います。

単なる「動画編集者」ではなく「動画マーケター」のスキルを身につけ、「提案型」の営業をしていくことができれば…仕事が途切れることはないでしょう。

クライアントは常に「言ったことをやるだけの人」よりも「より良いものを提案してくれる人」を求めているのですからね!

それと重要なのは、「なるべくたくさんの映像作品を見る」ということ。
これは”YouTubeをたくさん見よ”ということではありません。
詳しくは後日のブログでお話しいたします。

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