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ココナラブログ
逢瀬
記事
小説
ツキノシヅク
2021/01/05 16:56
※(21) 過去に掲載したものを、改正して再投稿。
【短編集(シリーズ)より】
本文
数時間前
暑さに噎(む)せ返る都会の喧噪と
煩わしさから逃げるように
君と駅で待ち合わせ、東北新幹線に飛び乗った。
急な連絡にも拘わらず、君は紺絣の着物姿で現れた。
澄み切った空に、既に秋の気配が漂い始めた山間の駅で、新幹線から降りる。
タクシー運転手に勧められて
山門のような門構えの温泉旅館に、足を踏み入れた。
間口の広い玄関では
一見というのに、愛想の良い仲居に迎え入れられる。
南側の大通りに面した、ホテルの別館という建て前になっていた。
「
元々はこちらが本館だったんですよ…。
でも最近の家族連れのお客様は、ご家族のレジャー目的で
お見えになる方が多い様で…、
こちらとしても、ホテルの方が色々と都合がよいモノですから、
今じゃホテルの方が賑わっています。
」
仲居は言い訳めいた説明をしたながら
六畳と八畳二間続きで、落ち着いた佇まいの日本間へ案内する。
簡単に館内の施設を説明しながら、茶を入れると
差し出した心付けを受け取らずに
二人の雰囲気を察したように、仲居は引き下がった。
私は手持ちぶさたに縁側の籐椅子に腰掛けて
改めて君を見つめる…。
君は、私の視線を感じた様に
「
少し汗をかいた様です。汗を流してきますね。
」
言いながら、立ち上がり浴衣とタオルを手に取ると
「
貴男はどうなさるの…。
」
と私に問いかけてくる。
「
んっ、私もひとっ風呂浴びるとするか。ここの湯は何に効くのだろう…
」
と虚を掴まれた私は、自分でもつまらぬ返事をする。
「
じゃあ、これは貴男のですよ。
」
と言って、君はそつなく私に浴衣とタオルを差し出す。
続
※この話はフィクションです
#ストーリー
ツキノシヅク
絵描き/コミュニケーション×心理学/講師 / 40代前半 / 男性
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