いまは天国で幸せに暮らしている〈夫と私のこと〉を今回は書いてみたいと思います。
自分語りになりますし、もしかしたら重い内容になるかもしれません。
以前の記事で少し夫との関係性であったり、過去にあったことは触れていましたが、もう少し詳しく書いてみますね( ᵕᴗᵕ )
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夫とはじめて出会ったのは、まだ私が19歳の頃でした。
当時の私は大学で宇宙物理学を学ぶかたわら、宇宙関連開発会社でアルバイトもしていました。その会社で役員をしていたのが、後の夫です。
私の仕事は、週に2回程度遅い時間帯に数時間だけ事務仕事のお手伝いをするというものです。
そのため、たまたま早い時間などに会社に行く用事があるときに彼のことを見かけたりはしましたが、会話もしたことがなく、関わり合いは持ってはいませんでした。
ただ、そのときから印象深かったのは、とにかく彼の陽気さとチャラさです。
〈パンツェッタ・ジローラモ〉さんを想像してもらえるとぴったりかもしれません笑
本気か冗談か判断ができないような際どい誘惑ギャグを女子社員に振りまきながら社内を歩いていた彼ですが、それが嫌味に聞こえないし、いやらしくも聞こえないんですね。
不思議と彼のシモネタには、品があったり、性的なトーンに聞こえなかったんです。
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ある時見かけた夫と女子社員Aさんの会話ですが、
彼「僕はとってもいま憤ってる」
A「え、どうされたんですか…なにか私ミスでもしましたか…」
彼「そうじゃないんだ。君はさっきからずっと暗い顔をしてる」
A「すみません、気をつけます…」
彼「君に怒ってるんじゃないんだ。素敵な君をそんな顔にさせてしまっている出来事に、僕は怒ってるんだ。なにかあったのかい?」
A「実は……彼と1週間前に喧嘩をしてしまって、ずっと眠れずにいるんです。電話にも出てくれなくて、もうどうしたらいいのか……」
彼「それは困ってしまうよね。よし、それじゃ今夜作戦会議をやろう。国道沿いに「雅」というレンタル会議スペースがあるから、そこでやろう」
A「それって、ラブホテルじゃないですか!?」
彼「え、そうなの!? じゃあ、その隣りにある「ヨーロピアンIII」でもいいね。お風呂がガラス張りなんだよ!」
A「そこもラブホテルです!笑」
彼「会議に必要なゴムは、今回特別にこちらで用意しておくから任せたまえ! すっぽん料理の店で一杯やってから行くかい?」
A「ゴムがなんで会議に必要なんですか笑笑笑」
彼「なるほど、ふむ、よしわかった。じゃあ今回はゴムなしで行こうか……覚悟するよ。君のご両親への挨拶はいつにする?」
こんなふうにして、暗く沈んでいた彼女をキラキラした笑顔に変えていました。
思い出しながら書いていたら、ジローラモさんというか高田純次さんみたいな感じかもしれませんね笑
──歯が浮くようなセリフも、本気か冗談かわからないようなエッチな要素の入ったジョークも、彼が言うと不思議と品があったり、愛情を感じられたりしました。
その当時の私はあまり人と関わり合いを持つのが得意ではない根暗な子だったので、他の社員さんやアルバイトの子と話すことも少なかったのです。
それでも彼への女子たちの嬌声であったり、憧れの気持ちというものは漏れ聞こえて知っていました。
とても女子たちから人気のある彼だったんですね。
私はというと、宇宙(そら)にしか興味がなかったために、特に彼を特別視して見ていたことはありませんでしたし、変わった人だとしか認識していませんでしたが……。
そんな私が、はじめて夫とお喋りをしたのと、恋に落ちたのは同時でした。
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──その日。
私はコンビニで買ったおにぎりを大学構内のベンチで頬張りながら、太陽の暖かさを背中に感じてぼーっとしていました。
12月10日でした。まだ午前中だったはずです。
前日に父と詰まらないことで言い合いをしてしまって、そのことに悩むのに疲れ果て思考が停止していたそんなときに、不意に彼が私の横に座り、
「答えが出たら僕にも教えてくれないか?」
演技がかった難しそうな顔を作りながら、彼は自分の眉間に指を当てながら言いました。
咄嗟になにを言われているのかわからず、しかもはじめて間近で彼と接触したことへの驚きも相まって、私はおにぎりを喉に詰まらせてむせてしまいます。
「あ、すまん!」
慌てた彼がバッグの中から水筒を取り出し、紅茶を私に飲ませてくれました。右手はずっと私の背中を優しくさすり、左手で私が紅茶を飲みやすいように支えながら、
「ごめん、ごめんよ。勘弁してくれ。悪かったよ」
と、私を心配そうに覗き込みながら、激しく動揺した声で何度も謝っていました。
むせ返りが治まった後も、優しく「トン……トン……」と一定のリズムで私の背中を叩いてくれる彼の手のひらの暖かさに、私も動揺していました。二人で一緒に水筒のコップを持つ手のぬくもりにも。
彼は、私を落ち着かせるためにとりとめのない話をしてくれました。みんなにするような、いつものエッチな冗談は私にはありませんでした。
むせ返りのせいで鼻水と涙でボロボロになっていた私を見て、空気を読んでくれたのだと思います。
会社で時々私を見かけていて見知っていたこと。
今日は大学の教授に呼ばれて一緒にランチをする約束になっていること。
私がいつも難しそうな顔をしているのを見ていたこと。
私が人と距離を置いて過ごしているのを感じていたこと。
飼っている猫のこと。
昨日観た映画のこと。
今日の天気のこと。
その間もずっと背中のトントンは続いていて、その鼓動の度に私は彼に対して少しずつ、でも確実に、恋に落ちていっているのを感じていました。
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それまでの私は、恋という恋をしたことはありませんでした。
高校時代に一度お付き合いはしたことはあったのですが、相手に束縛をされることにうんざりして、自分にはいまは恋は要らないんだとすぐにお別れをしています。
自分から誰かを好きになったこともありませんでしたし、恋愛ドラマや映画にも興味がなく、宇宙に関する図鑑や辞典、勉強、全国のプラネタリウムを回ることの方に意識が向いていたのです。
孤独を好んだというよりも、人に行動を縛られることがとにかく苦手だったのだと思います。
交際をすると、自分の思惑だけで物事を決定することができなくなるのを知り、他人軸と自分軸の折り合いをつけていかないといけないことに、うんざりしてしまったんですね。
理屈っぽい私でした。
本能的に恋心が燃え上がるとか、好きで好きでたまらなくて居ても立っても居られない──というような恋愛は私には無理だと思っていました。
そんな私が、その日をきっかけにして彼に対して一直線に気持ちを向けていくようになっていきます。
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恋の仕方がわからない、頭の固い理系女子の恋はぶっきら棒で色気もなにもありません。
ただひたすら彼に対して自分の思いをぶつけていました。告白ハラスメントという言葉がありますが、まさにそれかもしれません( ; -᷄ ω-᷅)
「私はあなたに対して恋をしていると思います。この気持にラベルをつけるなら、恋以外には見つからないのです」
「未経験なのでもしかしたら違うのかもしれませんが、それは今後の経過観測に依ってはっきりするはずです」
「これを告げたからといってなにかあなたからリアクションを求めているのではなく、ただ思いを告げないと胸が苦しいので、一方的にこうしてお伝えしました」
こんな感じです。いま考えると恐ろしすぎますね笑
彼はどういう受け答えをしたのか緊張のせいであまり覚えていませんが、
「お、おう! それは良かった! スッキリしたかい? 観測データはこれから二人で共有していこうか」
というようなことを、苦笑いしながら私に言ったと思います。
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結婚をしてから彼に言われたことですが、人付き合いも苦手で、恋愛経験もなく、孤独を好んで生きて来たであろうことが傍から見てもよく分かる不器用な女子が、必死になって自分に食らいついてくるさま──そんな様子に、彼は胸がキュンとしていたそうです。
恋愛経験が豊富で、女遊びも日常茶飯事の彼は、常に相手女性たちから駆け引きを仕掛けられて来たとも語っていました。
自分を振り向かせるためにわざと塩対応してきたり、そうかと思ったら泣きついてきたり、「好きじゃないなら別れましょ」なんて試すような言葉にうんざりしたり。
そんな中で、私の彼への気持ちの告白はとても新鮮で、そしてわくわくするような気持ちも感じたのだと、白い歯を見せながら笑っていました。
「不器用で、真っすぐで、小細工しない女武者みたいなお前が大好きなんだ。放っといたら周りを見ずに突き進んで崖から落っこちちゃうから、俺が後ろから腰紐を握ってやりたいと思ってる。つまり結婚しよう」
それが、出会いから約十年経った後の彼からのプロポーズの言葉でした。
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順調そうに見える彼との道程ですが、実は試練を何度も迎えています。
一番の試練は、7年にも及ぶ音信不通というものです。いわゆるサイレント期間と呼ばれるものでした。
19歳のときに上述のような彼との接触と邂逅があり、色々ありながらもお付き合いに発展して1年後──彼は私になにも言わずに、姿を消したのです。
会社の役員も降りていました。その理由も経緯も聞いておらず、彼の部屋は完全にもぬけの殻になっていました。
手紙も、連絡もなく、ただ忽然と彼が消えたのです。
会社の人に聞いてもなにがあったのかを教えてくれません。交際をしていたことは内緒だったので、あまりしつこく聞くことも出来ませんでした。
彼が消えた前日、ふたりで私の部屋で穏やかに過ごしていましたし、彼の様子におかしいところもありませんでした。
ちなみに、サラッと書いてしまいますが──彼は私以外にも同時にお付き合いをしている女性が何人もいました。
たまに同時複数的に最大限の愛情を多くの女性に注げられるような器用な人がいますが、彼がまさにそれです。私を含めて、多数の女性を愛し、大事にし、複数の恋を同時に進められる人だったんですね。
「お前以外に付き合ってる女性が何人かいる。それでもいいかい?」
彼が私の数回目の告白に応えてくれたときに、それを言われて一瞬立ちくらみがしました。
私はなんと答えたのか覚えていませんが、そのときに湧いた気持ちは、
「でも、そんな彼を私は愛しているんだ」
「彼の過去や現在を責める資格は私にはない」
「私好みに変える資格もないしそれは束縛だ」
「愛すと決めたらなら、その覚悟を私は持つ」
「……貫こう!」
こういうものでした。
弱さを知らない女武者みたいに思われるかもしれませんが、いざ交際がはじまってみると地獄みたいな日々でした泣
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気分が上がったり、下がったり、勇気を持ったり、失ったり……部屋に閉じこもって、
「いまごろはAさんと一緒にベッドにいるんだろう」
壁の時計をじっとり暗い目で見据えながら、勉強も、家の掃除も、なにも手がつかずにただ彼との逢瀬の約束の日が来るのを陰鬱な気持ちで待っている。
彼を振り向かせたくて、「本当は私は必要じゃないんでしょ」とか「だったら別れた方がいい?」なんて思わずぶつけてしまいたくなるのを寸前で何度も堪えたり。
私と過ごした次の日は、別の女性と会うのを知っているから、デートをしているときもずっと気持ちが沈んでしまっていたり。
「そんなの恋愛って言える?」
「遊ばれてるんだよ。早めに別れた方がいい」
数少ない友人からはそんな正論も言われました。胸にグサグサとナイフが刺さるみたいで、余計に苦しくなって誰にも相談をしなくなりました。
それなのになぜ耐えられたかというと、私が恋愛のセオリーを知らなかったからだと思います。
彼以外との恋愛経験はほとんどなかったからこそ、比較対象もなかったのです。無知は強いものです。知っていると知らないとでは、我慢の限界値が違います。
高校時代に一瞬のお付き合いはあったものの、夫以外に人を好きになったこともなく、これがはじめての恋でした。
好きになったのは一方的に私からでしたし、その思いを無理に押し通して交際まで発展させたのも、私のわがままです。
彼からすると、突然自分の人生に割り込んできた転校生です。
私が彼に〈転校〉したからといって、彼の価値観や、恋愛観や、過去、現在を私好みに変えろと言う資格が、
「私にはないのだ」
と理屈で気持ちを処理していたんですね。
でも、本当に苦しかったんです( ´。•ω•。` )
ずっとずっと胸が張り裂けそうな日々を過ごしていました涙
──そんな中、突然の彼の失踪が重なったのでした。
1ヶ月や1年ではなく、7年という終わりの見えない真っ暗闇の絶望の時間を私は過ごしました。
まるで牢獄の中で過ごすような日々でした。
そしてそのサイレント期間が開けてすぐに、彼と私は結婚をしました。
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次回に続きます。
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よろしければこちらの記事でも少し夫とのことに触れていますので、ご一読頂ければと存じます( ᵕᴗᵕ )
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