不登校のフェーズ別・保護者対応マニュアル

不登校のフェーズ別・保護者対応マニュアル

記事
コラム

―焦らず、放置せず、子どもの回復段階に合わせて関わる―


はじめに
不登校の子どもへの対応で大切なのは、「学校に行くか行かないか」だけで判断しないことです。

不登校には段階があります。

まだ学校に行ったり行かなかったりしている時期。
心身が崩れて混乱している時期。
長く休み、家の中で回復している時期。
少しずつ外に関心が向き始める時期。
試行錯誤しながら、新しい居場所や学びを探す時期。

段階によって、親がすべきことは変わります。

大切なのは、子どもを無理に動かすことではなく、今の状態に合った関わりをすることです。

1 行き渋り期
学校に行ったり、行けなかったりする時期
子どもの様子
朝になると、頭痛や腹痛を訴えることがあります。

微熱、吐き気、倦怠感が出ることもあります。

学校に行く理由も、行けない理由も、本人自身がうまく説明できないことがあります。

「行かなきゃ」と思っているのに体が動かない。

行ける日もあるため、保護者は「本当は行けるのでは」と思いやすい時期です。

保護者の基本対応
まずは、無理に登校させないことです。

この時期の子どもは、かなり強いストレスを抱えている可能性があります。

「今日は休もう」
「しばらく休んでも大丈夫」
「学校に行けなくても、あなたは大丈夫」

このように、まず安心を与えることが大切です。

やってはいけないこと
行ける日があるからといって、毎朝励まし続けること。

無理やり起こすこと。

「行けば何とかなる」と押し出すこと。

これは、子どもをさらに追い詰める可能性があります。

次のステップ
この時期の目標は、登校ではなく休養です。

まずは、子どもが「家にいても責められない」と感じられるようにします。

2 混乱期
心と体が大きく崩れる時期
子どもの様子
学校に行かない日が増え、心身の不調が強く出ることがあります。

不眠、倦怠感、食欲不振、抑うつ傾向。

部屋に閉じこもる。

何も話さない。

風呂に入らない。

ゲームやスマホに逃げ込む。

ときには暴言、大声、物に当たる行動が出ることもあります。

また、急に甘えてきたり、手を握ってきたり、添い寝を求めたりすることもあります。

保護者の基本対応
この時期に必要なのは、安心です。

「ここにいて大丈夫」
「あなたはあなたで大丈夫」
「今は休んでいい」

そう伝え続けることが大切です。

甘えてきたときは、できる範囲で受け止めます。

年齢に合わないように見えても、心が安心を求めているサインです。

やってはいけないこと
「これからどうするの?」
「いつ学校へ行くの?」
「将来どうするの?」

と問い詰めること。

無理に本音を聞き出そうとすること。

心をこじ開けるような関わりは避けます。

本人にもまだ分からないことを聞かれると、子どもはさらに苦しくなります。

次のステップ
親は、学校や親族など周囲の無理解から子どもを守る防波堤になります。

この時期は前進させる時期ではなく、壊れた心と体を休ませる時期です。

3 慢性期
長く休み、家の中でエネルギーをためる時期
子どもの様子
家族との会話が少しずつ増えることがあります。

一方で、ゲーム、スマホ、動画、テレビに長時間没頭することもあります。

勉強や学校の話題になると黙り込むことがあります。

時折、不安定になることもあります。

外から見ると、だらだらしているだけに見えるかもしれません。

しかし、内側では少しずつ回復に向かっていることがあります。

保護者の基本対応
この時期は、家の中の安心と充実度を高めることが大切です。

好きなように時間を使わせる。

子どもが関心を持っていることに、親も少し興味を持つ。

ゲームやスマホをすぐに取り上げない。

本人が好きなことについて、軽く会話する。

まずは、家の中で「安心して過ごせる時間」を増やします。

やってはいけないこと
「暇なら勉強しなさい」と言うこと。

「もう大丈夫そうだから学校へ行けるでしょ」と登校刺激を再開すること。

無理に外へ連れ出すこと。

だらだらしている様子を叱ること。

これらは、回復しかけた心を再び閉じさせることがあります。

次のステップ
この時期は、親自身も生活を取り戻すことが大切です。

「私が何とかしなければ」と抱え込みすぎない。

仕事、趣味、外出、自分の時間を持つ。

親が少し元気でいることが、家庭全体の安心につながります。

4 回復期・模索期
「暇」「何かしたい」が出てくる時期
子どもの様子
表情が少し明るくなります。

生活リズムが少し整ってくることがあります。

食欲や笑顔が増えることもあります。

家族と食事をする。

一人で外出する。

親しい友人と遊ぶ。

家族と過ごす時間が増える。

自分の気持ちを少しずつ話す。

そして、こんな言葉が出てきます。

「暇だな」
「飽きた」
「何かしたい」
「外に出ようかな」

これは回復のサインです。

保護者の基本対応
まずは聞くことです。

「そう思ったんだね」
「どんなことをしてみたい?」
「何が気になっているの?」

親がすぐに決めるのではなく、子どもの言葉を聞きながら、一緒に整理します。

この時期の親は、答えを出す人ではなく、壁打ち役です。

やってはいけないこと
言うことが変わったときに責めること。

「昨日は学校に行きたいって言ったじゃない」
「やりたいって言ったんだから続けなさい」

この時期の子どもは、前を向き始めていますが、まだ気持ちは揺れています。

発言が変わるのは自然なことです。

次のステップ
家以外の居場所を少しずつ探します。

学校でも、フリースクールでも、習い事でも、適応指導教室でもよいです。

大切なのは、本人が安心できる場所を一緒に探すことです。

5 回復期・試行期
外の世界に少しずつ触れていく時期
子どもの様子
フリースクールに行ってみたい。

習い事を始めたい。

適応指導教室を見学したい。

外へ出る機会を増やしたい。

何かを試したくなる時期です。

ただし、最初からうまくはいきません。

新しい習い事が続かないこともあります。

「やりたい」と言っていたのに、数日後には「興味ない」と言うこともあります。

保護者の基本対応
やりたいことは、できるだけ試させてあげます。

ただし、親が主導で決めすぎないことが大切です。

本人の「やってみたい」を尊重しながら、一緒に探します。

失敗しても受け止めます。

「合わなかったんだね」
「行ってみたこと自体が大きな一歩だね」
「また別の方法を考えよう」

このように、挑戦そのものを認めます。

やってはいけないこと
「だからやめておきなさいと言ったのに」と言うこと。

「頑張って続けなさい」と無理をさせること。

失敗を責めること。

この時期の失敗は、回復の失敗ではありません。

外の世界と再びつながるための練習です。

次のステップ
子どもが試したことを一緒に振り返ります。

何がよかったのか。

何がしんどかったのか。

次はどうしたいのか。

会話を通して、やりたいことが少しずつ絞られていきます。

6 回復期・収束期
子どもが自分で動き出す時期
子どもの様子
やりたいことが少しずつ明確になってきます。

始めたことが続くようになります。

本人が自分で動き出します。

学校、フリースクール、習い事、地域の活動など、家以外の居場所が見えてくることがあります。

再登校への意欲や、進路についての言葉が出ることもあります。

保護者の基本対応
この時期の親は、一歩下がって見守ります。

本人のペースで進めるようにする。

困っているときだけ声をかける。

しんどそうなときは休ませる。

頑張りすぎていないかを見る。

回復したように見えても、まだ疲れやすいことがあります。

やってはいけないこと
手出し、口出しをしすぎること。

「もう回復した」と決めつけて無理をさせること。

期待しすぎて、ペースを上げさせること。

この時期に頑張りすぎると、前の段階に戻ってしまうことがあります。

次のステップ
子どもが自分で進んでいる感覚を大切にします。

親は管理者ではなく、伴走者になります。

学校復帰だけをゴールにせず、その子に合った学びや居場所を一緒に考えます。

7 全フェーズ共通の保護者の心得

1 焦らない
不登校は、一直線には回復しません。

よくなったように見えて、また不安定になることもあります。

進んだり戻ったりしながら、少しずつ回復していきます。

2 放置しない
「好きにさせる」と「放置」は違います。

子どもの様子を見守ること。

体調、表情、食欲、睡眠、会話の量を観察すること。

困っていそうなときには、そっと声をかけること。

これが大切です。

3 学校だけをゴールにしない
再登校は一つの選択肢です。

でも、子どもの回復のゴールは、学校に戻ることだけではありません。

安心して過ごせること。

自分の気持ちを話せること。

外の世界と少しずつつながること。

自分に合った学び方を見つけること。

これも大切な回復です。

4 親も一人で抱え込まない
不登校対応は、親だけで抱えるには重すぎることがあります。

学校、専門家、支援機関、フリースクール、教育相談、第三の居場所。

使えるものは使ってください。

親が助けを求めることは、子どもを守ることでもあります。

5 子どもの自然な回復力を信じる
子どもは、何もしていないように見える時期にも、内側で回復していることがあります。

今は動けなくても、やがて「暇」「何かしたい」「外に出たい」という言葉が出てくることがあります。

その小さなサインを見逃さないこと。

そして、焦らず、でも希望を失わずに見守ること。

それが、保護者にできる大切な支援です。

最後に
不登校の子どもは、怠けているのではありません。

心と体が、これ以上無理を続けられないと知らせていることがあります。

保護者の方も、不安でいっぱいになると思います。

けれど、今の状態には意味があります。

子どもは、休みながら、揺れながら、少しずつ自分を立て直していきます。

親がすべてを解決しようとしなくて大丈夫です。

まずは今のフェーズを理解すること。

その段階に合った関わりをすること。

そして、子どもにこう伝え続けることです。

「あなたは、ここにいて大丈夫」

その安心が、回復の土台になります。
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