―子どもの「得意」と「苦手」を見える化する知能検査―
WISC検査とは、子どもの知的な発達のバランスを見るための検査です。
一般的には「知能検査」と呼ばれますが、単にIQの高い・低いを決めるためだけのものではありません。
むしろ大切なのは、その子の中にある「得意」と「苦手」の凸凹を見ることです。
WISCでは、全検査IQという総合的な数値も出ます。
しかし、子どもを理解するうえでは、5つの領域を丁寧に見ることがとても大切です。
1つ目は、言語理解です。
言語理解は、言葉を使って考える力です。
語彙力、説明する力、物事の意味を理解する力、知識を言葉で整理する力などに関わります。
この力が高い子は、大人びた発言をしたり、社会問題に関心を持ったり、難しい内容を言葉で説明できたりします。
一方で、言葉が達者なために「生意気」「理屈っぽい」と誤解されることもあります。
2つ目は、視空間です。
視空間は、目で見た情報を整理し、形や位置関係を理解する力です。
図形、パズル、地図、立体、工作、設計などに関係します。
この力が高い子は、図や形で物事を考えるのが得意です。
一方で、言葉で順序立てて説明することが苦手な場合もあります。
「頭の中では見えているのに、人に説明しにくい」という子もいます。
3つ目は、流動性推理です。
流動性推理は、初めて見る問題に対して、規則性や関係性を見つけて考える力です。
いわば、ひらめきや論理的思考の力です。
この力が高い子は、まだ習っていない問題でも、自分なりに考えて答えに近づくことがあります。
ただし、学校の決められた解き方と違う方法を使うため、「途中式がない」「勝手なやり方をしている」と見られることもあります。
4つ目は、ワーキングメモリです。
ワーキングメモリは、情報を一時的に覚えながら、頭の中で操作する力です。
先生の指示を覚えて作業する。
暗算をする。
聞いた内容を覚えながらノートを書く。
複数の手順を整理する。
こうした場面で使われます。
この力が低めの子は、理解力があっても、指示を忘れたり、途中で何をするのか分からなくなったりします。
「聞いていない」のではなく、頭の中で保持することが苦手な場合があります。
5つ目は、処理速度です。
処理速度は、単純な作業を素早く正確に行う力です。
板書を写す。
プリントを時間内に終える。
記号や文字を見分ける。
手を動かして作業する。
こうした力に関わります。
この力が低めの子は、考える力は高くても、作業に時間がかかります。
「分かっているのに遅い」「理解しているのにテストが終わらない」ということが起こります。
ここで大切なのは、WISCの結果を子どもにラベルを貼るために使わないことです。
「この子はIQが高いから大丈夫」
「この子は処理速度が低いからできない」
そう決めつけるための検査ではありません。
WISCは、その子がどこで力を発揮し、どこで困っているのかを知るための地図です。
たとえば、言語理解や推理の力が高いのに、処理速度が低い子がいます。
この子は、頭の中では深く考えられるのに、学校では作業が遅く見えるかもしれません。
すると、「やる気がない」「だらしない」と誤解されます。
でも実際には、思考力と作業スピードに差があるだけかもしれません。
私は、WISCを「子どもを評価するもの」ではなく、「子どもを理解するための道具」として見ることが大切だと考えています。
得意な力は伸ばす。
苦手なところは、叱るのではなく支える。
書くのが苦手なら、タイピングを使う。
指示を忘れやすいなら、紙に書いて見えるようにする。
作業が遅いなら、量や時間を調整する。
難しいことを考えられる子には、発展的な学びを用意する。
WISCの結果は、子どもの未来を決めるものではありません。
その子に合った学び方を見つけるための手がかりです。
数字だけを見るのではなく、その子の中にある力の形を見る。
そこから、子どもへの理解と支援は始まります。