情報の海の正しい泳ぎ方を

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正しい医療情報はどうやって手に入れたらいいのか?(入門編)


 情報が溢れている現代。情報の量だけではなく、それを検索する方法も進化している現代。便利になった様ですが落とし穴もあるのではないかとも言われています。そこを少し掘り下げて、医師が情報を当たるときにどういう判断をしているかを紹介しつつ皆様にできる医療情報検索を提案します。今回は医学情報の多様化について考えてみましょう。


昔の医学情報検索

 昔の家には家庭の医学などの書籍が一家に一冊置いてあり、家族が調子が悪くなったりしたときに症状や病名から情報を探せる「字引き」のようなものがありました。今のように手軽に情報が得られるわけではない時代にはこういう字引的書籍はとても大事でした。それでも分からないことがあれば、病院にかかることになりますが、積極的な受診の理由がない時には手元にない馴染みのない情報を検索するには図書館や書店で分厚い本を開いて読まなければ何も得られなかったと思います。今は医療情報検索はスマホで探して分からなければすぐ病院というのが一般的だと思いますがこの時代(例えば昭和の後半ごろ)は情報は細い隙間から少しずつしか覗き見ることができないようなものだったのではないかと想像できます。

現代の医学情報検索

 この時代に比べて現代はスマホを使えば殆ど特別な努力をしなくても医学情報なるものに行き着きます。情報を探す時の手段であるGoogleなどの検索エンジン自体もAI検索によって各個人の探したい情報にできるだけ簡単に行き着くようにどんどん進化しています。それによって正確な医学用語を知らなくても病名が出てきたり、何となく耳にした病名をうろ覚えで入力するといった不正確な方法でもたくさんの医学情報が瞬時に検索結果に並ぶ現代は本当に便利になりました。
「これだけネット検索が発達すれば、素人でもちょっとしたことなら医者いらずになっただろう。外来のお医者さんなんかはは昔に比べて楽になったのではないですか?」

こういう風に考える人も出てくるかもしれませんが、事実は逆です。

 今はブログやツイッター、FB、インスタグラムと情報発信をできる人も増えています。また健康についての社会の関心も、がん治療、骨髄移植、生活習慣病、今回のコロナウィルスと時代とともに話題は変われど尽きることがなく既存メディアとそれ以外の個人などの書き手によって様々な情報が日々アップされています。かつての情報源である家庭の医学のような成書は「〇〇大学名誉教授」や「〇〇病院外科部長」といったテレビでしかみることができないような肩書の先生方が書いておられて、権威主義とも言えるのですが他方でそこでの情報は膨大な量の論文や教科書の内容を踏まえて実際の診療に照らして書かれているものでその時代の最大限の「正しい医学情報」であったのです。少ないけれどしっかりした教科書が一冊あったのが昔なら、今は教科書的な情報と、様々な書き手による「参考書」やあまり正規の情報に当たっていない「個人のメモ書き」みたいなものもたくさん出てきてどれが正しい情報であるのか分からないようになってしまっています。時間をかけてネット検索をすればするほどたくさんのそうした情報に触れるため情報の優劣や、使い方を間違えてインプットされてしまう結果間違いに行きついてしまう恐れがあります。
 内科外来などをしていて感じることは、こういうネットや週刊誌など由来の誤解は間違った健康法や治療につながることがあり、何も調べないで真っ白な状態の患者さんに説明をするよりも理解してもらうことが難しいことがあるということです。また、鵜呑みにした医学情報で満足してしまって病気が悪くなってしまうこともあります。健康を維持するには医学情報を正しく得て正しく使う方法を知っていることはとても大事なのです。

現代版の正しい医学情報はどうすれば分かるのか?

 病院に受診して患者さんになられる場合には自分の健康状態を正しく把握するプロがそばにいることになるので、是非その存在を最大限利用することを考えるべきです。そのためには質問をしやすい雰囲気や、説明を信頼できる人間関係など医師との相性の要素もとても大事だと思います。より良い情報を手に入れて治療に臨むためには「セカンドオピニオン」という手段もありますので積極的に活用しましょう。

 病院に受診しない場合や、今の主治医との波長や根本的な考え方が残念ながら合わない場合には、やはりネット情報から正しいものを抜き出す方法が大事になったり、それらの方法を熟知している医師へのアクセスがあると大変に力になります。先ほどお話しした情報の海で溺れないためには医師がネットで情報を得る時にはどういうサインから情報の優劣を判断しているのかをご紹介すると、医学情報への苦手意識を克服するのに一助になると思います。このシリーズの続きに乞うご期待ください。

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