福祉職の役目とは

記事
コラム
いつもありがとうございます。

認知症心理カウンセラー養成講座を開催し、
支援の和を弘げています。

認知症の方や、認知症の方を支えるご家族、
あるいは事業所の職員さんを支援する
人材の育成です。

講座の中では、「認知症というのは、脳の疾患
である」という説明をしています。

脳の変性や細胞の消失によって起こる疾患で
あり、誰にでも起こりうるものです。

恥ずかしがったり、隠したりする必要はない
とお伝えしています。

一般的にも、そのような認識が広まっている
のではないかなと思います。

「おかしくなってしまった」ということで、
隠してしまうという時代もありました。

みんなで認識を改めていくことが大切です。

ただ、認知症は病気や疾患ではないという
見方もあります。

年齢を重ねれば、身体機能が衰えていきます。

同じように脳の機能が衰えることも、
自然なことです。

人間と機械を同一視してしまってはいけません
が、コンピュータも長年使っていれば、
「ガタ」がきます。

「G」を押しているのに、「K」が出たり、
「enter」を押しているのに反応しなかったり、
突然電源が落ちてしまったり。

これは長年使っていて「ガタ」が出ただけです。

人間の脳も、長年使っていれば「ガタ」が来る
のは、自然のことです。

脳にガタが来ると、正しく出力ができません。

それが認知症状として表れているだけ。

このような見方もあるのです。

「長生きして、脳の機能が衰えてくるのだか
ら、自然なことだよね」。

このような認識を持っておくことも大切だな
と思うのです。

寛容で、優しい世界になるように、正しい認
識、知識を伝えていきたいと思います。

さて、認知症は脳の変性ということで、
脳について簡単に知っておくことも
大切です。

世界的な標準となりつつある、「脳の三位一体
論」という考え方があります。

脳は3層構造に分かれています。

1:は虫類脳
2:ほにゅう類脳
3:人間脳
です。

1:は虫類脳は、どのような性質が
あるでしょう。

は虫類と人の共通項を見ていくと良いですね。

排泄したり、食事をしたり、水分を摂ったり、
つまりは本能的な部分です。

2:ほにゅう類脳は、ほにゅう類と人の共通項
です。

情動や感情があります。

寂しがったり、怒ったり、喜んだり。

3:人間脳は、人特有のものです。

思考(知性、理性)ですね。

1年後の計画を立てたり、高度な計算を行った
り、言語を操ったり。

人間のみが獲得している、高度な思考、
つまり、知性や理性です。

認知症の方は、どこに障害を受けているか
というと、3:人間脳に障害を受けています。

ほにゅう類脳に障害を受けるわけではありま
せんので、感情は残るわけです。

知性、理性が低下しても、感情は残ります。

嫌なことをされたら、悲しかったり、悔しかっ
たり、辛かったり、怒ったり、わたしたちと
同じように感じるわけです。

楽しい感情も、嬉しい感情も、全て残って
います。

出来事の記憶ができなかったとしても、
一瞬一瞬感じる感情はあるのです。

「認知症は、すぐ忘れるから大丈夫」。

何かしてしまったときに、こんな言葉を聞く
ことがあります。

出来事は忘れても、感情は残ります。

そのことを意識して、接していくことが
大切です。

認知症や高齢者の前に、一人の人間です。

人間対人間という原点を忘れないように
したいものですね。

さて、人間特有の知性、理性はどのように
獲得され、どのように喪失していくの
でしょう。

年齢に比例して直線的に獲得していくのかと
言えば、そうではありません。

20歳くらいまででグッと上昇して、その後は
50歳くらいまで緩やかに上昇という形で
獲得していきます。

その後は、人それぞれです。

亡くなる直前まで、知性・理性を維持する方も
いれば、緩やかに下降される方、グッと下降
される方、様々です。

認知症というには、この、知性・理性が
急降下する疾患と言えます。

ガクッと、急激に落ちていきます。

どこまで落ちていくかは、人それぞれですが、
多くの場合は、幼児と同じくらいのところまで
落ちていきます。

全く同じではありませんが、幼児と同じ、
知性・理性レベルになるということです。

人間は様々な言動をするわけですが、その言動
を生み出しているのは、思考(知性・理性)
です。

さらにその根本には、心理的ニーズ、つまり
欲求というものがあります。

心理的ニーズは6個あると言われています。

その6個のニーズを満たすために、知性・理性
というフィルターを通して、その人にとって
最適な言動を選択しているのです。

人間は知性・理性をというフィルターを通し
て、ニーズを満たすための言動を取るという
ことと、

知性・理性が認知症の方と幼児で同じレベルに
なるということは、どういうことでしょうか。

つまり、心理的ニーズを満たすために、
認知症の方は、幼児と同じような
言動を取るということです。

認知症の方と幼児では、共通点が様々ありま
す。

例えば異食、徘徊、かんしゃく、抵抗。

あるいは計画的に物事が遂行できなかったり、
うまく服を着ることができなかったり、
時空間の認識ができなかったり。

もちろん体格が違いますし、経験なども違う
ので、全く同じようには見えないことも
あるかもしれません。

ただ、多くの点で共通しているところがあるの
です。

認知症の方に関わったことがなくても、
育児の経験をある方は多いのでは
ないでしょう。

幼い子どもがしていたことを、認知症の高齢者
さんもしているんだということが分かると、
ある程度、心が軽くなるところがあるのでは
ないかと思います。

もちろん、自分の家族が認知症となったとき
には、感情がついていかないかもしれません。

知識として、頭で分かっていることと、
感情で納得することは別ですから、
感情がついてこないということは
自然なことです。

ただ、「そういうものなのだ」と知っている
だけで、心は軽くなるものです。

こうしたことを知っていて欲しい、また、
伝えてほしいと思うのです。

正しい知識がないが故に起きる、悲劇性を
含んだ出来事というのが、実際に
起きています。

虐待や心中、介護ノイローゼなどです。

これらを防ぐのが福祉職の役目だと
思うのです。

ともに学んでいきましょう。

最後までお付き合いいただき、
ありがとうございました。

今日の一転語

~「愛と理解」の心~

「愛の気持ちとは、他の人々に与えようとする
心です。

『何か自分にできることがあれば、してあげ
よう』という心です。

また、他の人を理解する心とは、『人々の心
の動きや心のひだを理解しよう』という心で
す。

『相手の立場に立って、その心を分かろう』
という心です。

こうした『愛と理解』の心があってこそ、
包容力は大きく成長していくのです。」

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