『個別の授業で面と向かっては言いにくい話をコラムにしています。言いにくいワケは、生徒さんは1人1人状況が異なり、一般論のアドバイスがつねに当てはまるとは限らないからです。
ですのでタイトルも「ひとり言」。本コラムの内容に有効性があるかと問われれば、私自身の中学受験や長年の指導で実践を心がけ、結果を出してきた事実を挙げるのみです。』
お子さんは辞書をよく引いておられるでしょうか?
私の生徒さんに聞くと、意外と電子辞書ではなく、紙の辞書を使っておられるケースが多いですね。
私が小学生時代に一番使っていたのは、これも意外に思うでしょうが漢和辞典でした。
塾の宿題で読めない漢字があった場合、そもそも読みがわからないので国語辞典では引けません。
部首か総画数かで読めない字についてまず調べ、その字を含む熟語の意味までたどり着くというのを、土曜や日曜の休日によくやっていた記憶があります。
読めない字があれば身近な誰かに聞けばよいと思うのですが、私は人にものを尋ねるのが嫌いな子どもで、自分でコツコツ調べていたんですね。
インターネットが普及したとき、「おー、これで心おきなく"世間"に質問ができる」と感激したものです。
ちなみに疑り深い性格でもあるため、得られた答えをすぐ真に受けることももちろんありませんが(笑)。
さて話を辞書に戻しますが、やっぱり辞書は引いた方が良いと思います。
そしてできれば小学5年生までのあいだにたくさん引いておきたいですね。
語い力の増強は、本当はそうした地道な積み重ねによってしか成功しない気がしています。
もっと言えば、学校や教室での"お勉強"で身につけるものでなく、日常生活という"現実"の中で少しずつ増えていくものなのではないでしょうか。
テレビのCMでわからない言葉を聞いたら、音を頼りに国語辞典で調べる。
マンガを読んで難しそうな字に出会ったら、部首か画数を頼りに漢和辞典で探してみる。
「なんて読むのかな?」「どんな意味かな?」と疑問を持ち、自ら手と目と頭を動かして辞書をひもとくその作業こそ、ボキャブラリーUPへの近道です。
かずやの言葉にいつもは冷静な委員長も思わず色をなした。
文脈からの類推ができるとは言え、「色をなす」の意味がわからなければ、物語の理解に多かれ少なかれ支障が出ます。
また国語の記述問題には、"言いかえ"というテクニックが求められがちです。
Q. 日本の首都はどこですか? A. はい、日本の首都です。
同語反復(tautology)は、質問への答えとしては禁じ手とされています。
算数的に言えば、
日本の首都=日本の首都
ですから同語反復は正しいとも言えますが、そうであるからこそ厳にNGにされているんですね。
ある言葉を意味を変えずに別の言葉に置きかえるには、当然ながらそれ相応の語い力が必要になってきます。
「あ、今のおばあちゃんの言葉、わたし知らない。辞書引いてくるね!」
そんな子がいたら、将来確実に大成するはずです。