みどり壮の人々⑩

記事
小説
大宮は深堀から一杯喰わされたと悟った。
感情がパニックになった。
腹の底から怒りと焦燥がマグマのように湧き上ってきたが不動産を買ったと言う連中に対して怒りをぶちまけるのはスジが違う。
大宮は冷静さを取り戻し、ここの不動産の登記簿は有りますか
ああ有りますよと左側の男が法務局発行の不動産登記書を見せた。
所有権者は 電源開発事業所㈱となっていた。
連中の作業服の胸ポケットの上に 電源開発事業所㈱の文字が刺繍して有るのが見える。
ヘルメットを被り現場作業員の恰好をしているが強い日焼けの顔ではなく作業服の下はワイシャツにネクタイをしている。
営業の方の係りだろう。

アパートの住人全員が深堀から完全に騙された。
まんまと905万円盗られたと、その時に分かった。
大宮は急いで自分の部屋に戻りスマホで深堀に電話した
"こちらはKDDIです、お架けになった電話番号は現在使われておりません番号をお確かめの上、お架け直し下さい 例のアナウンスが流れた"
なんてこった!
大宮は、アパートの庭に居る三人の所に戻った。
実は、ここの土地200坪とアパートを前の地主の深堀からアパート全員で購入したのです。
不動産登記は深堀が安く登記するから任せろって言っていたので連絡を待っていたのです。
だからヤツを信用し購入代金を全額ヤツの口座へ振り込んだのです。
我々は深堀からこの不動産を買ったとばかり思って居ました。
左側に立っている男が登記書を見ながら確かに売主は深堀になっていますねと言った。
どうやら貴方たちは、この深堀と言うヤツに詐欺られたようですね、お気の毒に思いますが、だからと言って我々は所有権をあなた達に渡す事はできませんよ。
法的根拠はこちら側にありますから。
今日は重機でアパートを取り壊し整地する為に重機を20トンのトレーラーで持って来ていますが困りましたねぇ。
夜逃げじゃないが今夜にもで全員退去し終えるようにして下さい明日の朝一番に重機を動かしたいのでと真ん中の男が言った。

俺達に夜逃げをしろと言うのか!
と大宮は怒りを爆発させた。
このなんの権限もない連中に怒りを爆発させても意味がない事は分かっているが、さっきから腹の底から怒りが間欠泉のように吹き上がって来るのを必死でこらえていたが遂に爆発したのだった。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す