トレンドは未来を予測するか?

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明日の株価は予測できません。これは明白でしょう。なぜなら、株価は短期的には材料によって動く場合が多いものの、その材料そのものが予測できないからです。

企業業績や経済指標などは、ある程度の予測は可能かもしれません。しかし、自然災害やテロ行為などの予測は、事実上不可能なのです。

一方、過去1年間の株価を正確に言い当てる指標を作成することは容易です。1年間の立会日を246日として、246の係数を持つ245次方程式を作ればよいことになります。

過去246日間の株価データyとそれに対応する日付xを、

 y=a[245]x^245+・・・+a[n]x^n+・・・+a[0]

に代入し、係数a[n]に関する246次連立方程式を解けば、目的の指標が作れます。最近のパソコンの能力なら、これくらいは容易に求まるでしょう。

しかし、それに明日の日付を代入して明日の株価を求めたとしても、その株価通りになることはあり得ないでしょうし、なったとしてもそれは偶然です。

ここまで極端な例は稀だと思いますが、株価予測というのは多かれ少なかれ、上例のような問題を孕んでいると考えます。システム的に言えば、「過剰最適化」という奴です。

では、中長期的な株価は予測できるのでしょうか。これも、実際問題としては難しいことです。バブルのピーク時に、その後の日経平均株価が5分の1にまで下落することを予測できた人はいないでしょう。

ここで重要なのは、あくまで「バブルのピーク時に」ということです。ピークをある程度過ぎた後であれば、予測は可能だったかもしれません。

この違いは大きいものです。ピークでは予測できない未来が、ピークをある程度過ぎることで、現実的な可能性として認識できるようになるわけです。
そこにあるもの、それがトレンドということになります。

バブルのピークにおける直近トレンドは上昇トレンドです。しかも、そのトレンドを遮るような下降トレンドは存在しません。したがって、株価が下落する未来は予測できなかったのです。

しかし、ピークを過ぎれば、そこには下降トレンドが出現します。そのトレンドを未来に延長すれば、株価が大きく下落した姿が見えてくるわけです。

もちろん、ファンダメンタル的には、当時の日経平均がバブルであったことを見抜いていた人はいるかもしれません。その後、5分の1にまで落ち込むことを予測したかどうかは別としてですが。

ただ、今回は、あくまでテクニカルという視点で考えてみたいと思います。ファンダメンタルについての考察は、いずれ機会があったらとさせていただきます。

トレンドは偶然の産物であり、ランダムウォークモデルでも再現できると主張する人も少なくありません。
しかし、現実の相場におけるトレンドと、シミュレーションによって生じるトレンドには、決定的な違いがあります。

現実の相場におけるトレンドには、投資資金の流出入が関与しています。例えば、長期的な下降トレンドにおいては、株式市場から資金が流出し続けます。
資金の流出は物理的な実体であり、慣性の法則同様、流出する資金を瞬時にストップすることはできません。

投資家が株式市場から引き上げた資金は、通常、他の投資対象に回すわけであり、効率的な投資家であるほど、その対応は素早いと考えられます。

すなわち、一旦株式市場から流出した資金は、しばらく他市場を循環した後でないと、株式市場には戻って来ないと考えられるわけです。

こうして、株式市場から一度資金が流出し始めると、それは他の投資家にも伝播し、株価は下降を続けることになります。これが、実体のある下降トレンドです。

一方、シミュレーションによって生じる下降トレンドは、実体を伴いません。

短期的にはこのようなトレンドも確かに存在します。例えば、2006年末のヤフーの下落がそれに相当すると思われます。

株価は2006年12月18日の51,400円を直近のピークに、その後は下降トレンド入りしているかに見えました。翌年2月半ばになってやや反発してきていますが、2月5日の底値までで17%も下落しました。しかし、その間ヤフーに流入した資金量は、2倍以上に増えていたのです。

株価は大きく下落しているにも拘らず、資金は逆に大きく流入していることになります。これはいったい何を表しているのでしょうか。

実体のある下降トレンドなら、それに合わせて資金も流出するはずです。しかし、そうはなっていません。これは結局、ランダムな値動きの結果ということになるのではないでしょうか。

以上のように、トレンドというものを意識すると、株価はそのトレンドに沿って推移するのではないかという予測を働かせることができるのです。

しかし、株価がその通りに動くという保証はありません。少なくとも、実体のないトレンドの場合は移ろい易く、株価はランダムな動きの範疇を出ないかもしれないのです。

一方、実体を伴ったトレンド、すなわち、トレンドの方向に資金の流出入を伴っている場合は、長続きするのではないかと考えます。

そうであれば、株価そのものを厳密に予測することは無理だとしても、株価がトレンドに沿って中長期的に推移していくであろうことくらいは、言えるのではないかと思うのです。

直近のトレンドが実体を伴ったものであるか否かは、累積PI(パワーインデックス)の推移を見れば分かります。上昇トレンドと同じように累積PIが上昇している場合は、例え株価が一時的に下落していたとしても、上昇トレンドは継続していると考えればよいのです。

投資資金が流入し続ける限り、その資金を回収するためには、株価はより高い水準に達しなければなりません。下がると思われる株式に、わざわざ大量の資金を投じる投資家はいないでしょう。
資金量的に大半の投資家が、株価が上がると考えているからこそ、そこには資金が流れ込むのです。

明日の株価を読む行為は、量子力学的な視点です。そこは不確定性原理が支配する世界です。
また、遥か将来を読む行為は、宇宙論的な視点です。そこには時間の壁が存在し、空間には暗黒物質がうごめいているのです。

私たち人間には、自ずと適切なスケールが存在します。それは良く見えるが故に、思い込みや勘違いが生じ易いものでもあります。しかし、ミクロやマクロの世界を解明するよりは、遥かに現実的なのではないでしょうか。

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