言った方が勝つんだと、僕はそこで知った。
裁判所で、妻は浮気していたことを僕のせいだと言った。
驚くほどハッキリとした発生と活舌で。
それは不思議と説得力を生むものです。
ごにょごにょと何を言っているのか分からないのでは、聞き返すのにも労力がかかるし印象に残るのはハッキリとした声であるのは間違いない。
その時の経験が ↓ こんなサービスを生むきっかけになったのかは定かではないです。
でも、確かに妻は僕が悪いとハッキリと言い放ちました。
僕が仕事に明け暮れて家にはたまにしか帰ってこない。だから仕方なかった、と。
僕自身、どこか申し訳ないという気持ちがあったので反論できなかったのも良くない。
良くないのかどうかは別の話。
なので慰謝料などの話は無し。
ただ、生活費と養育費を「いくら出すんだ?」というのが焦点。
その「いくら」ですこしばかり意見の食い違いがありまして、裁判所通いは長期戦になりました。
こんな時、人生と言うのはバランスが取れていると言いますかね仕事はとても忙しくなりました。
俳優として自己最高です。
2か月の間に舞台5本、映画2本、テレビドラマ3本、イベント6本全て地方でという「家でじっとするのは辛いだろう?」という気遣いなのかどうかは分かりませんが、そのスケジュールで、裁判所から現場へと通う日々。
どの現場にも自分で運転して言っていたので、時には意識朦朧となりつつも、仕事に集中できる環境はとてもありがたかったです。
「役作りもあるし、少しダイエットしようかな?」と思っていた時でした。
おかけでげっそり痩せることができました。
当時はいろいろな人かダイエットのコツを質問されましたが、答えは一つしかありません。
「気苦労」
爆発的なスケジュールをこなし、全ての貯金を渡すことと月々の生活費の取り決めが終わり、正式に離婚が成立したことで緊張の糸が切れたのか、その次の日は意識がありませんでした。多くのスケジュールをこなし、久しぶりの休みでもありました。
ハッと気づいたら夕方だった、なんてマンガで読んだことありましたが、まさか自分が経験するなんて思っていませんでした。
夕方になって、でも何もする気が無く、食欲も無かった僕は何だか自分が可笑しくなりました。かつて付き合っていた女性に死なれたときは過食に走りましたが、離婚した時は食欲がないなどと言うなんて。それを思うとおかしくて可笑しくて。
ふらりと、普段は行かないような土地に行き、そこの喫茶店に入りました。
ブレンドを頼み、ドリップされている様子を何となく見ていました。
ペーパードリップというのは、メリタ・ベンツ夫人が愛する夫に美味しくてより透明度の高い珈琲を飲んでもらいたいと考えたと言います。
そんなペーパードリップで淹れた珈琲を、こんな離婚したばかりの、立場的には「仕事にかまけて妻子を捨てた男」が飲んでもいいものかと、なんだか自分が滑稽に感じました。
僕は、もう
誰も愛さない、と思った。
もちろん、それは若さ故のただの思い込みだったのですが。
つづく。