近年、SNS運用、動画編集、ライブ配信、モデル活動、インフルエンサー、プログラミング、デザインなど、未成年者が業務委託という形で仕事を受けるケースが急増しています。
しかし、契約の相手方が未成年者である場合、大人同士の契約とは異なる法律上の注意点があります。
契約書を作成する際には、通常の業務委託契約に加えて「未成年者であること」を前提とした設計が必要になります。
今回は実務上重要なポイントをご紹介します。
1 未成年者は単独で契約を締結できるとは限らない
民法では、未成年者が法律行為を行うには、原則として法定代理人(通常は親権者)の同意が必要とされています。
もし同意なく契約を締結した場合、一定の場合には契約を取り消される可能性があります。
つまり、
せっかく契約書を交わしても、後から「未成年だったので取り消します」と言われれば、契約自体がなかったことになるリスクが存在します。
業務がかなり進んでから取消しとなれば、事業者にとって非常に大きな損失となります。
2 親権者の同意を書面で取得する
実務では、
・親権者同意書
・契約書への親権者署名
・親権者の連帯確認書
などを取得することが望ましいでしょう。
単に
「親の許可は取っています。」
という口頭説明だけでは後日紛争になった際に立証が困難になります。
契約書とは別紙でも構いませんので、書面として残しておくことをおすすめします。
3 業務委託か雇用契約かを慎重に判断する
これは未成年者に限った話ではありませんが、特に若年者との契約では問題になりやすい部分です。
例えば、
・勤務時間を細かく指定する
・毎日出勤を義務付ける
・指揮命令を行う
・遅刻や欠勤に懲戒的な扱いをする
このような実態があるにもかかわらず、「業務委託契約」という名称だけを付けている場合には、実質的には雇用契約と判断される可能性があります。
契約のタイトルではなく、実際の働き方が重要になります。
未成年者との契約では、保護の必要性という観点からも、実態がより慎重に見られる可能性があります。
4 報酬・経費を明確にする
トラブルで最も多いのは、お金に関する問題です。
契約書では少なくとも、
報酬額
支払日
振込手数料の負担
必要経費
キャンセル時の取扱い
成果物完成前に契約終了した場合の精算方法
などを明確にしておきましょう。
曖昧な表現は紛争の原因になります。
5 SNS・肖像権・著作権の取扱い
インフルエンサーやモデル活動では、
写真
動画
SNS投稿
ライブ配信
などを利用するケースが多くあります。
未成年者の場合は、本人だけでなく保護者も利用範囲を十分理解できるよう、契約書には次のような事項を具体的に定めることが重要です。
投稿内容の利用範囲
広告利用の可否
二次利用
利用期間
契約終了後の取扱い
削除請求への対応
「自由に利用できる」とだけ記載するのではなく、できる限り具体的に定めておくことで、後日のトラブル防止につながります。
6 秘密保持・競業避止条項は過度にならないよう注意
秘密保持契約(NDA)は通常どおり必要ですが、
競業避止義務については、
期間
地域
対象業務
を過度に広げすぎないことが重要です。
例えば、
「契約終了後5年間、日本全国で同種業務禁止」
のような条項は、合理性を欠くとして有効性が問題になる可能性があります。
未成年者との契約では、将来の職業選択を過度に制限する内容になっていないかという点にも十分配慮する必要があります。
7 契約解除条項は双方に公平な内容に
未成年者との契約では、
一方的に事業者だけが有利になる解除条項は避けるべきです。
例えば、
即時解除事由
報酬精算方法
引継ぎ
成果物の返還
貸与物の返却
などをバランスよく定めておくことが望ましいでしょう。
一方当事者にのみ著しく不利益を課す内容は、契約の有効性そのものが争われる原因になることがあります。
まとめ
未成年者との業務委託契約は、「業務委託契約だから通常どおり」で済ませられるものではありません。
特に重要なのは、
親権者の同意を書面で取得すること
雇用契約との実態上の違いを整理すること
報酬や知的財産権の取扱いを明確にすること
未成年者の保護という観点を踏まえ、公平で合理的な契約内容とすること
です。
契約書は、万一の紛争時に初めてその価値が問われます。特に未成年者が当事者となる契約では、法的有効性だけでなく、社会的な説明責任も強く求められます。
事業の内容に応じた実態に即した契約書を整備しておくことが、双方にとって安心して業務を進めるための第一歩といえるでしょう。
南本町行政書士事務所 特定行政書士 西本