「業務委託契約書は、一応あります」
そう聞くと、契約上の準備はできているように思えます。
ところが、実際に仕事が始まってから、
「そこまでお願いしたつもりはない」
「そこまでやるとは聞いていない」
「これは追加料金ではないのか」
といった認識のズレが生じることがあります。
業務委託契約で揉めるポイントはいくつもありますが、特に注意したいのが、
「どこまでが契約した業務なのか」
という業務範囲の問題です。
「○○業務一式」で本当に分かる?
例えば、契約書に
「SNS運用業務一式」
「経理業務全般」
「コンサルティング業務」
と書いてあったとします。
契約したときには、お互いに分かっているつもりだった。
ところが仕事が始まると、
「投稿文の作成も含まれますよね?」
「請求書の発行までお願いできますよね?」
「打ち合わせは何回でもできますよね?」
と、少しずつ認識の違いが出てくることがあります。
発注側からすれば、
「当然含まれていると思っていた」。
受注側からすれば、
「それは別の仕事だと思っていた」。
どちらかが悪いというより、最初に境界線を決めていなかったことが原因なのかもしれません。
小さな「ついで」が積み重なる
特に注意したいのが、追加作業です。
最初は、
「これもついでにお願いできますか?」
という小さな依頼だったものが、
一つ、二つと増えていく。
受注側も、関係を悪くしたくないので、
「これくらいなら」
と対応する。
ところが、それが続くと、
「どこまでが当初の報酬に含まれているのか」
が分からなくなってしまいます。
そしてある時、
「これ以上は追加料金をいただきたいです」
と伝えると、
「今まではやってくれていたのに」
となる。
こうして、最初は小さかった認識のズレがトラブルに発展することがあります。
「業務内容」だけでなく「やらないこと」も大切
そこで業務委託契約を考えるときには、
「何をやるか」
だけでなく、
「何は含まれないのか」
も整理しておくことが大切です。
例えば、
定例打ち合わせは月○回まで
修正対応は○回まで
○○に関する作業は契約対象外
当初の業務範囲を超える場合は別途協議
といった形です。
すべてを細かく書けばよいという話ではありません。
大切なのは、
後から認識が分かれそうなところを、契約前に見つけておくこと
です。
報酬額だけ決めても十分ではない
業務委託契約というと、
「月額○万円」
「1件○円」
など、報酬については比較的しっかり決めていることが多いと思います。
ですが、
その金額で「何を、どこまでやるのか」が曖昧なら、報酬だけ決めても十分ではありません。
10万円が高いのか安いのかも、
業務範囲が分からなければ判断できないからです。
報酬と業務範囲はセットで考える。
これは発注側にとっても、受注側にとっても大切なことだと思います。
ひな形には書いてある。それでも安心とは限らない
業務委託契約書のひな形を見ると、
「委託業務の内容」
「委託料」
「契約期間」
などの条項は、当然用意されています。
問題は、
条項があるかどうかではなく、自分たちの実際の仕事がそこに落とし込まれているか
です。
「甲は乙に○○業務を委託する」
と書いてあるから大丈夫、とは限りません。
実際の仕事を思い浮かべたとき、
「これは契約範囲に入る?」
と迷うものがいくつも出てくるのであれば、もう少し整理する余地があるかもしれません。
契約書は「揉めたときの武器」だけではない
契約書というと、
トラブルが起きたときに相手へ示すもの、
というイメージを持たれることがあります。
もちろん、そうした役割もあります。
ですが私は、それより前に、
「仕事を始める前に、お互いの認識を合わせるためのもの」
という役割が大きいと思っています。
何をお願いするのか。
どこまで対応するのか。
追加の仕事が発生したらどうするのか。
それを最初に話し合っておけば、そもそも揉めずに済むこともあります。
「この契約書で大丈夫かな」と思ったら
すでに業務委託契約書を使っている方も、
一度「業務内容」の条項を読み返してみてください。
そして、
「これを初めて読む第三者でも、どこまで仕事をするのか分かるだろうか?」
と考えてみる。
そこで、
「ちょっと曖昧かもしれない」
「実際の運用とは違っている」
「追加業務について何も決めていない」
と気づいたのであれば、見直すタイミングかもしれません。
ただし、実際にどこまで契約書へ書くべきかは、仕事の内容や取引の仕方によって変わります。
ひな形を見ただけでは判断しにくいのも、まさにこの部分です。
契約書を一から作り直さなくても、今ある契約書が実際の取引に合っているか確認するだけで、防げるトラブルがあります。
契約書は、揉めてから読むものではなく、揉めないために使うもの。
まずは、自分たちの「仕事の境界線」がきちんと見える契約書になっているか。
そこから確認してみてはいかがでしょうか。
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