〇はじめに
「動画制作を頼んだのに、完成データがもらえない」
「納品後に追加料金を請求された」
そんな相談が、今どき珍しくない。
動画制作の現場では、発注者と制作者の間で“どこまでが契約か”が曖昧になりがち。
しかし、ほんの数行の契約条項で、後のトラブルを防げるケースも多い。
この記事では、行政書士の視点から「動画制作委託契約書の注意点」をやさしく解説する。
第1章 業務委託契約とは何か?
・「業務委託契約」は、法律上は請負契約または準委任契約に分類される。
- 映像を“完成”させて納品する場合 → 請負契約
- 編集や撮影補助など“作業支援”のみの場合 → 準委任契約
・契約類型が異なると、責任範囲も違う。
⚖️ポイント
請負契約は「完成責任」がある。
準委任契約は「誠実に努力する義務」にとどまる。
→ どちらで契約するか、文言ではっきりさせること。
第2章 著作権と著作権の譲渡・利用許諾
・動画には、脚本・音楽・映像・ロゴ・ナレーションなど、複数の著作物が含まれる。
・契約書で明記すべきは:
1️⃣ 誰が著作権を持つか(制作者 or 発注者)
2️⃣ 使用範囲(YouTube限定/広告利用OK/二次利用禁止など)
3️⃣ 第三者素材(BGM・画像)のライセンス確認
💡よくある誤解
「お金を払った=著作権も買った」ではない。
→ 権利譲渡契約または包括的利用許諾条項がなければ、
制作者に権利が残る。
第3章 納品・検収・修正の定義
・「納品物」の定義が曖昧だとトラブルになる。
- 納品形式(mp4/movなど)
- 納品方法(クラウド・USBなど)
- 修正回数(例:2回まで無料、それ以降は追加費用)
・「検収期間」を明記する:
→ 例:「納品後7日以内に検収し、不備がなければ承認とみなす」
⚙️これがないと、「まだ直してもらってない!」と契約がズルズル続く。
第4章 報酬・支払い・追加費用
・支払い条件(前払/分割/納品後○日以内)を明確に。
・“修正費用”や“撮影日変更”など、追加コスト発生の条件も明記。
・成果物が納品されない場合の報酬支払い停止条項も重要。
💰例文:
制作者が正当な理由なく納品を遅延した場合、発注者は納品完了まで報酬支払いを留保できる。
第5章 守秘義務・再委託・トラブル対応
・動画に企業秘密・未公開商品・人物情報が含まれる場合、
守秘義務条項は必須。
・再委託(外部のカメラマンや編集者への再発注)を認めるか否かも明記。
・契約解除・損害賠償・裁判管轄条項も忘れずに。
🧩特に注意:
AIツールや外部素材を使用する場合、
「第三者権利の侵害リスクを負うのはどちらか?」を決めておく。
第6章 トラブル実例
納品データがもらえない
→ 著作権帰属が不明確で、制作者が提供を拒否。
追加修正を無限に要求される
→ 修正回数条項なし。
AI素材の著作権侵害
→ 第三者素材を無断使用、依頼企業が責任追及される。
納期遅延と報酬未払い
→ 契約で「納期」と「支払い条件」の連動を明確にしていない。
🏁結び
動画制作の現場では、感覚的なやりとりが多い。
だが、クリエイティブこそ**“権利と責任の設計図”が必要**だ。
契約書は、信頼を疑うためではなく、
お互いの創作を守るための“レンズキャップ”のようなもの。
外すときも、つけるときも、慎重に扱いたい。
南本町行政書士事務所 代表 特定行政書士 西本