今年の夏が終わっていくのに、何も変われていないと感じるあなたへ ―― 虫の歌う夜に読む手紙
まだ昼間は蝉が鳴いているのに、日が落ちるのがずいぶん早くなったわね。夜になると、どこかで虫の声が聞こえはじめて、風もふっと涼しくなって。ああ、今年の夏ももう終わっていくのね、と気づいたとき、胸のあたりが少し焦る。……わかるわよ。今日はそんなあなたに、少しだけ肩の力が抜けるお話をさせてちょうだいね。◆ 焦るのは、あなたが自分の人生を放っていないから夏の終わりに時間の流れが気になるのはね、あなたが怠けているからじゃないのよ。自分の人生を、ちゃんと生きようとしているからなの。どうでもいいと思っている人は、季節が変わっても焦らないものだわね。焦れるということは、あなたの中にまだ「こうありたい」という灯りがちゃんとある、ということなんだもの。それは、大事にしていい火よ。「今年、何も変われていない気がする」その気持ちを、私は訂正しないわ。無理に「そんなことないわよ」って言われても、余計に苦しくなるだけだもの。まわりが進んで見えることもあるでしょう。それも、そのままで置いておいていいのよ。◆ 「変われていない」の物差しを、少しゆるめてごらん苦しさの多くはね、目に見える成果だけで1年を採点してしまうところから来るものなの。かたちに残ったものだけが、その人の1年ではないのよ。今年やり過ごしてこられた日々、ぽつぽつと続けてこられたこと、そっとやめられたこと。数えられないものが、あなたの成績表からごっそり抜け落ちているだけ、ということもあるものだわね。今年、去年よりほんの少しだけ、うまくなったことをひとつだけ思い出してごらんなさいな。「人に頼れるようになった」でもいいの。「前より少し眠れるようになっ
0