ヘミングウェイの「老人と海」は ハードボイルドの王道を行く小説です。
読み終えた後で見返すと
ヘミングウェイの文章は1行たりとも無駄がないような気がします。
たとえば冒頭。
「このところ84日間、一匹も釣れていなかった」
この短い文章があるのとないのとでは
クライマックスで老人が
巨大なカジキを執拗に追い求める行動への感情移入が
まるで違ってきます。
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もう一つ重要な文章が8ページにあります。
「どこをどう見ても老人だが
その眼だけは海の色と変わらない。
元気な負け知らずの目になっていた」
この文章があることで
延々と50ページに及ぶカジキとの格闘が
違和感なく読み進められるようになっています。
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もう、王道のハードボイルドが
セリフの随所に感じられます。
「老人はたっぷり時間をかけてコーヒーを飲んだ。
今日一日、これしか口にしないはずだから
いま大事に飲んでおく」
漁に出掛ける前の、この描写からして
老人が、ただものではないことが伺えます。
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ひとりで漁に出た老人は
上空を旋回している鳥に話しかける。
「ねらいをつけたか?」
「見てるだけじゃあるまい・・・」
孤独なんてものは無いんだとばかりに
人間以外のものに話しかけるのも
ハードボイルドの王道ですねぇ(;^_^A
ストイックです・・・。
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カジキが網にかかってから
すでに一昼夜。老人は疲れ果てている。
一羽の小鳥が飛んできてロープにとまる。
おぼつかない足取り。
老人は話しかける。
「なぁ、小せえの、休んでいけよ。
そこまで疲れてちゃしょうがねぇな」
きっと、自らに言っているんでしょうかねぇ。
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