泉鏡花「外科室」は文語体ゆえに凛とした情念が感じられるのです。
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実に、泉鏡花らしい静かなる情念のお話です。
医学士高峰の執刀によって
外科施術を受ける貴船伯爵夫人。
「手術台なる伯爵夫人、純潔なる白衣を纏いて横はれる」
だが、伯爵夫人は、麻酔はいらないと言う。
「私はね、心に秘密がある。麻酔剤は譫言を言ふと申すから、
それが怖くてなりません」
麻酔なしでの手術が始まる。
「見れば雪の寒紅梅、血汐は胸よりつと流れて、白衣を染むる」
医学士高峰が訪ねる。
「痛みますか」
「否、貴下(あなた)だから、貴下(あなた)だから」
二人の関係がただならぬものだということが
うかがい知れます。
二人にどんな過去があったのかは
読んでからのお楽しみです。