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『やさしさ迷惑7/100』

第7話「今の、それ反則です」前話:優作は、ズレた提案を自分の言葉で説明し、ぎりぎりのところで信頼をつなぎ直した。美月には「今日は、最初から曖昧じゃなかったですね」と言われた。翌週の月曜、朝。案件の山を一つ越えたはずなのに、オフィスの空気は相変わらず落ち着かない。電話は鳴るし、チャットは光るし、誰かの「ちょっといいですか」があちこちで飛んでいる。中村優作は、席に座るなり佐伯からのメッセージを開いた。中村さん、すみません。「一回整理してから返す」と言われたんですけど、あれ、どのくらい待っていい整理なんでしょうか優作は画面を見たまま、少しだけ笑う。「……また始まったな」「何がですか」斜め前から、美月の声が飛んでくる。「いや、曖昧ワード案件です」「どれですか」優作はチャットをそのまま転送した。数秒後、美月の返信が来る。“一回整理”の長さが人によって違いますねたしかにそうだ。“ちょっとだけ”も、“迷ったら聞いて”も、“たぶん大丈夫”も、だいたい人によって違う。優作は佐伯に返した。「整理してから」が今日中なのか、明日でもいいのか確認していいよ。それと、何を整理するつもりかも聞いて大丈夫送信したあとで、自分でも少しだけ不思議になる。前なら、ここまで細かく返していなかった。「中村さん」美月が呼ぶ。「はい」「今の、悪くなかったです」優作は手を止めた。「……あ、どうも」たぶん、こういう一言にまだ弱い。というか、かなり弱い。その様子を見ていた桐谷が、通りすがりにぼそっと言う。「今日も機嫌いいな」「うるさい」「分かりやす」「分かりやすくない」「いや、かなり」朝からうるさい。でも否定しきれないのが少し悔
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コミュニケーション研修『あるある通信⑥』~やさしさ迷惑第3話より~

『迷ったら聞いてが、一番困る』上司:「迷ったら聞いてね」部下:(今、聞いていいのか?)(こんなこと聞いたら、自分で考えろって思われないか?)(忙しそうだし、もう少しやってからの方がいいか?)──数十分後上司:「なんでそこで聞かなかったの?」気づきこれはやさしさの顔をした“判断の丸投げ”。人は✔ 聞いていいと言われても、タイミングがわからない✔ 初歩的だと思われたくない✔ 相手の機嫌や忙しさまで読んでしまうこの3つが揃うと、「相談する」より「とりあえず自分で進める」を選ぶ。でもそれは、主体性というより確認のハードルが高い状態。「迷ったら聞いて」だけでは足りない。渡すべきなのは✔ どの段階で✔ 何を✔ どのくらいで聞いていいかそこまで見えた時、人はやっと安心して相談できる。
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『やさしさ迷惑3/100』

第3話「迷ったら聞いて」は、だいたい聞けない午後四時を少し過ぎたころだった。オフィスの空気は、朝より少しだけ重い。集中している人と、疲れている人が半々くらいの時間帯。中村優作の画面に、佐伯からのチャットが残っていた。『中村さん、すみません。さっきの資料、“迷ったら聞いて”って言われたんですけど……どのタイミングで聞いていいか、迷ってます』優作はその文章を、二回読んだ。(……たしかに)言った。自分で言った。“迷ったら聞いて”その時は、ちゃんとフォローしたつもりだった。でも今こうして見ると、それは答えになっていない気がした。“迷ったら”って、いつだ。“聞いて”って、どこまでだ。優作は椅子の背にもたれたまま、少し考える。その様子を、向かいの席から桐谷ケイが見ていた。「また止まってんな」「……いや」優作は苦笑いした。「佐伯に“迷ったら聞いて”って言ったんだけどさ」「うん」「その“迷ったら”が曖昧だったっぽい」桐谷は一瞬だけ黙って、それから笑った。「そりゃそうだろ」「そんな即答ある?」「あるよ。だって“相談していいよ”って、言われた側はだいたい困るもん」優作は眉を寄せる。「なんで?」「聞いて怒られないか、邪魔じゃないか、今じゃないか、そこまで自分で考えろって意味じゃないか」桐谷は指を折りながら言った。「聞く側って、そのへん全部考えてるぞ」優作は何も言えなかった。その時、美月が会議室から戻ってきた。資料の束を机に置いて、優作の顔を見る。「どうしました」「いや、佐伯に“迷ったら聞いて”って言ったんですけど」「はい」「どのタイミングで聞いていいかわからないって言われて」美月は一拍置いた。「それ
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