この度、大阪府の「吹田市立高齢者生きがい活動センター」様より、パンフレットデザインを受注いたしました。センター様にはこの場をお借りして、改めて御礼申し上げます。
主にご高齢者の方がご覧になるパンフレットとのことで、
「クセのあるフォントを使わない」
「わかりやすくまとめる」
を念頭に、クライアント様と一緒に進めてまいりました。
1. ユニバーサルデザインとは?
今では当たり前のように使用されている言葉「ユニバーサルデザイン」。
高齢者や障害者の皆さんにも使いやすいものを作るのは「バリアフリー」と同じ考えですが、バリアフリーはあくまで「弱者の方の障害となる壁を取る」のに対し、「ユニバーサルデザイン」は「弱者の方も含めて、できる限り全ての方が使いやすいようにする」という違いがあります。
バリアフリーは、対象が弱者の方になっているため、場合によっては特別扱いに感じられたりします。
ユニバーサルデザインは、対象が全ての方。お使いになる方全てに平等になるように考えています。
2. 印刷・ウェブなどでは「視覚」の情報が大切
日本人のうち、男性でおよそ320万人、女性で約12万人が「色覚に問題がある」という統計があります。
※参考:日本眼科学会ホームページ・慶應義塾大学病院ホームページ
「色覚障がい」は、視細胞の中にある赤・緑・青を感じる「錐体(すいたい)細胞」のうちいずれかの色が感知しないという先天性の障がい。
そして、70歳以上の高齢者の約8割が「白内障」であるという統計もあります。白内障は、目のピントを合わせる「水晶体」というレンズが濁るというもの。それに加え、50歳代からは目の衰えもあらわれてきますので、「見る」「読む」行為が難しくなってきます。
そのような先天性の目の障害や目の衰えのある方がいることを踏まえ、普通に見る・読むことができる方にも違和感のないデザインをするというのが「メディア・ユニバーサルデザイン」なのです。
3. 文字を読みやすくするには…
今回は、ご高齢者様向けの印刷物デザインでした。目の衰えのある方にも正確に情報をお伝えするにはどうすればいいか、というテーマがありました。
先述のとおり、クセのあるデザインフォントは正確に読まれない可能性があります。
上図の見本は目の衰えを便宜的にあらわしたものですが、下段の明朝体の横棒がほとんど見えない状態なのがお分かりかと思います。
目の衰え・弱視の方に対応した「ユニバーサルデザイン書体」は、ある程度文字が滲んで見えても字形で判断できるようにしたものです。
4. 「できる限り多くの方に見やすいもの」を作る
それを踏まえ、ご高齢者がご覧になる印刷媒体のデザインを考えました。
まず「的確に見える書体」=「ゴシック体が一番」と考え、明朝体やポップ体の使用をせずに構成しました。もちろん、ユニバーサルデザイン書体を採用いたしております。
文字の級数(大きさ)も、8ポイントを下回らないようにしております。
とはいえ、ただ単に文字を大きくするのではなく、適度な文字級数で適切に行間を取り、空間をあけることも必要になってきます。
数字書体は、欧文の「Futura(フツラ)」が文字の滲みでも字形で判断できる書体ですので、活用しました。
また図面などを活用し、施設の全体図がわかりやすいように努めております。
ちなみにご高齢者様対応の印刷物ですが、そのご家族の方もご覧になるかもしれない。その方が「色覚障がい」の可能性もありますし、ご高齢者様ご本人も色覚障がいかもしれません。
上は色覚障がい者の見え方の一例ですが、とくに緑とオレンジは見分けがつかない可能性が高い色。緑色を濃くして、色濃度で判別可能なように工夫しました。
5. 情報を提供するのは、できる限り平等に…
昨今では、自治体・交通機関をはじめ、このようなユニバーサルデザインの考えを取り入れた印刷・ウェブ媒体・看板などが積極的に採用されています。
また、工業製品などでも「できる限り多くの人が使いやすい」ものが導入されています。
今回の「吹田市立高齢者生きがい活動センター」様のデザインを通して、
「情報はできる限り多くの方に、平等にお伝えする。ご覧になった方がそれを取捨選択できるようにする。作り手側があらかじめ制限をしてはいけない」
というユニバーサルデザインの原点に立ち返ることができました。
吹田市立高齢者生きがい活動センター様には改めて、ブログ掲載許可も含めてお礼申し上げますとともに、もし吹田市にお住まいの方でご高齢者様がいらっしゃいましたら、ぜひご登録いただき、楽しくご活動していただければ嬉しく思います。