不動産を購入するとき、重要事項説明書や売買契約書と一緒に「登記事項証明書」を目にすることがあります。
いわゆる「登記簿謄本」と呼ばれることもある資料です。
初めて見る方にとっては、地番、家屋番号、甲区、乙区、抵当権など聞き慣れない言葉が多く、
「結局、どこを見ればいいの?」
「この書類から何が分かるの?」
と感じるかもしれません。
登記事項証明書は、不動産の所在や面積だけでなく、誰が所有者として登記されているのか、抵当権などの権利が登記されているのかを確認するための基本的な資料です。
今回は、不動産売買の実務で登記事項証明書を見るときに、住宅購入者が押さえておきたいポイントを整理します。
■登記事項証明書は何を確認する資料?
不動産の登記記録は、大きく分けると、
・表題部
・権利部(甲区)
・権利部(乙区)
に分かれています。
簡単に整理すると、
表題部=どのような不動産なのか
甲区=誰が所有しているのか
乙区=所有権以外にどのような権利が設定されているのか
を見る部分です。
売買契約では、販売図面や重要事項説明書だけを見るのではなく、登記事項証明書と内容を照らし合わせることで、物件の情報や権利関係を確認していきます。
■表題部では「不動産そのもの」を確認する
表題部には、土地や建物の基本情報が記録されています。
土地であれば、主に、
・所在
・地番
・地目
・地積
などが記載されています。
建物であれば、
・所在
・家屋番号
・種類
・構造
・床面積
などです。
ここで最初に知っておきたいのが、「住所」と「地番」は同じとは限らないということです。
普段使っている住所は住居表示で、登記上の土地を特定するときには地番を使用する地域があります。
また、一つの住宅に見えても、土地が複数の筆に分かれている場合もあります。
例えば、住宅の敷地が、
・100番1
・100番2
という2筆で構成されている場合です。
戸建てでは、さらに私道部分の持分が別の土地として存在するケースもあります。
販売図面に記載されている敷地面積だけで判断せず、「売買対象になっている土地はどれなのか」という視点で確認すると分かりやすくなります。
■登記面積と実際の面積が同じとは限らない
登記事項証明書に面積が記載されていると、
「この数字が現在の正確な実測面積」
と思われる方もいるかもしれません。
しかし、土地の場合は、登記されている地積と実際に測量した面積に差があるケースがあります。
そのため土地の売買では、
・登記簿面積による売買なのか
・実測面積による売買なのか
・測量を行う予定があるのか
・面積に差が出た場合の取り扱いはどうするのか
なども契約条件とあわせて確認します。
建物についても同様です。
増築されている部分が登記に反映されていないなど、現況と登記記録に違いがある場合があります。
登記事項証明書だけで物件の現況すべてが分かるわけではない、という点は押さえておきたいところです。
■甲区では「所有者」を確認する
権利部の甲区には、所有権に関する事項が記録されています。
住宅購入でまず確認したいのは、
「現在の登記上の所有者は誰なのか」
という点です。
通常の売買であれば、売主と登記上の所有者が一致しているかを確認します。
共有物件の場合は、所有者が1人とは限りません。
例えば、
・夫が2分の1
・妻が2分の1
というように共有持分が登記されていることもあります。
また、相続した不動産を売却するケースなどでは、売却までの過程で相続登記などの手続きが関係する場合があります。
大切なのは、
「売主の名前が書いてあるから大丈夫」
と一部分だけを見るのではなく、現在の所有権の状況と今回の売買がどのようにつながっているのかを確認することです。
■乙区では抵当権などを確認する
権利部の乙区には、所有権以外の権利に関する事項が記録されます。
住宅売買でよく目にするのが「抵当権」です。
例えば、売主が住宅ローンを利用して購入した住宅では、金融機関の抵当権が設定されている場合があります。
ここで、
「抵当権が付いている物件は購入できないのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
抵当権が登記されていることだけで、直ちに売買できないと判断するものではありません。
中古住宅の取引では、売主が残代金を受け取り、その資金などで住宅ローンを完済し、決済時に抵当権の抹消手続きを進めるケースがあります。
そのため買主として確認したいのは、
「抵当権があるか、ないか」
だけではなく、
「現在ある抵当権をどのように抹消して、買主へ所有権を移転する予定なのか」
という点です。
決済当日に司法書士が関係書類を確認し、所有権移転と抵当権抹消の登記手続きを進めることもあります。
■登記事項証明書は1枚だけとは限らない
住宅を購入するとき、確認する登記事項証明書が1通だけとは限りません。
例えば戸建てであれば、
・土地
・建物
・私道部分
・共有している道路部分
などが別々に登記されている場合があります。
マンションでは、区分所有建物として専有部分や敷地権などが記録されています。
そのため、
「この登記事項証明書に問題がないか」
だけではなく、
「今回の売買対象になっている不動産について、必要な登記事項証明書がそろっているか」
という視点も重要です。
■具体例で見る登記事項証明書の確認方法
例えば、中古戸建てを購入するとします。
販売図面には、
「土地100㎡・建物90㎡」
と記載されていたとします。
この場合、登記事項証明書を見るときは、
・土地の所在と地番
・土地の地積
・建物の家屋番号
・建物の種類や構造
・建物の床面積
・登記上の所有者
・共有者の有無
・抵当権などの有無
を順番に確認します。
さらに重要事項説明書や売買契約書と照らし合わせ、
・売買対象となる土地と建物が一致しているか
・私道持分などが別にないか
・登記面積と契約上の面積の扱いはどうなっているか
・抵当権がある場合はどのように抹消するのか
などを確認していきます。
一つの書類だけで判断するのではなく、複数の資料をつなげて読むことが、不動産取引では大切です。
■よくある勘違い「登記されている内容が物件のすべて?」
登記事項証明書は非常に重要な資料ですが、この書類だけですべての物件情報が分かるわけではありません。
例えば、
・建物の現在の劣化状態
・設備の故障
・雨漏りの履歴
・境界標の現況
・周辺環境
・マンションの管理状況
などは、登記事項証明書だけでは判断できません。
そのため実際の取引では、
・重要事項説明書
・売買契約書
・販売図面
・物件状況報告書
・付帯設備表
・測量図
・マンションの管理関係資料
などもあわせて確認します。
登記事項証明書は「物件の権利関係を確認する重要な資料の一つ」と考えると分かりやすいでしょう。
■不動産会社へ確認するときの質問例
登記事項証明書を見ても分からない場合は、専門用語を理解しようとするより、不動産会社へ具体的に質問する方が整理しやすくなります。
例えば、次のような質問です。
・登記上の所有者と今回の売主は同じですか?
・今回売買する土地と建物は、登記事項証明書のどの部分ですか?
・土地が複数の地番に分かれていませんか?
・私道や共有道路の持分はありますか?
・登記面積と販売図面の面積に違いはありませんか?
・建物に未登記の増築部分などはありませんか?
・抵当権が設定されていますが、決済時にはどのように抹消しますか?
・所有権移転と抵当権抹消の手続きは誰が担当しますか?
こうした質問をしていくと、「登記事項証明書に何が書かれているか」だけでなく、「今回の取引ではどう処理する予定なのか」が見えてきます。
■登記事項証明書は契約書類と一緒に確認する
住宅購入では、登記事項証明書だけを単独で読んでも、取引全体は見えてきません。
登記事項証明書で権利関係を確認し、
重要事項説明書で物件や法令上の条件などを確認し、
売買契約書で売主と買主がどのような条件で取引するのかを確認する。
このように資料同士を照らし合わせることで、確認すべきポイントが整理しやすくなります。
特に契約前は、
「書類を受け取ったから確認した」
ではなく、
「それぞれの資料に書かれている内容が今回の取引でどうつながっているのか」
という視点を持つことが大切です。
■まとめ
登記事項証明書を見るときは、まず難しい登記用語をすべて覚える必要はありません。
最初は、
・表題部で物件の基本情報を確認する
・甲区で所有者を確認する
・乙区で抵当権などを確認する
・売買対象となる土地や建物がすべて含まれているか確認する
・重要事項説明書や売買契約書と照らし合わせる
という順番で見ていくと整理しやすくなります。
そして、分からない記載があれば、
「これは何という登記ですか?」
だけでなく、
「今回の売買では、この登記をどのように処理する予定ですか?」
と質問するのが実務上のポイントです。
■契約前の資料を第三者目線で確認したい方へ
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書類に記載されている内容の意味、注意して確認したい箇所、追加で確認した方がよい事項、不動産会社へ質問しておきたい事項などを整理してお伝えします。
法律判断や法的有効性を判定するサービスではなく、購入の可否を最終判断するものでもありません。
契約前に資料の内容を整理し、自分が確認すべきことを把握するための一つの方法としてご利用いただければと思います。