住宅の売買契約を締結するとき、買主から売主へ「手付金」を支払うことがあります。
初めて住宅を購入する方からすると、
「手付金は売買代金の一部ではないの?」
「契約後に事情が変わったら解約できる?」
「手付金を放棄すれば、いつでも契約をやめられる?」
「住宅ローン特約による解除とは何が違う?」
と分かりにくいところです。
不動産売買では、契約を締結したあとでも、契約内容や時期によって「手付解除」という方法が関係することがあります。
ただし、手付金を払っているからといって、いつでも自由に解除できるわけではありません。
今回は、住宅購入で知っておきたい「手付解除」について、不動産取引実務の目線から整理します。
■そもそも手付金とは?
不動産売買では、売買契約を締結するときに、買主から売主へ手付金を支払うことがあります。
例えば、
・売買価格 4,500万円
・契約時の手付金 100万円
・決済時に支払う残代金 4,400万円
という形です。
最終的には手付金を売買代金の一部に充当する契約が一般的ですが、手付金にはそれだけではなく、契約解除に関係する役割を持たせている場合があります。
そこで確認したいのが、売買契約書に記載されている「手付解除」の条項です。
■手付解除とは?
一般的な不動産売買契約では、一定の条件のもとで、
買主は、支払った手付金を放棄する。
売主は、受け取った手付金の倍額を支払う。
という方法で契約を解除できる内容になっていることがあります。
例えば、買主が100万円の手付金を支払っている場合。
買主側から手付解除をする場合は、その100万円を返してもらわずに契約を解除する形です。
一方、売主側から手付解除をする場合は、受領した100万円を返すだけではなく、さらに同額を加えた200万円を買主へ支払う、という考え方になります。
ただし、実際に手付解除ができるかどうかは、契約書の内容や解除する時期、取引の進行状況などによって確認が必要です。
■「手付金を放棄すれば、いつでも解除できる」ではない
ここは実務上、特に誤解されやすいところです。
「手付金を諦めれば契約をやめられる」
という部分だけを覚えてしまうと、判断を誤ることがあります。
売買契約書では、
・手付解除ができる期限
・解除する場合の方法
・売主、買主それぞれの扱い
などが定められていることがあります。
また、民法上の手付解除では、相手方が契約の履行に着手した後は手付解除ができないという考え方があります。
一方、不動産の売買契約では「手付解除期日」が具体的に定められている場合もあります。
さらに、売主が宅地建物取引業者で、買主が一般の方という取引では、宅地建物取引業法によるルールが関係する場合もあります。
そのため、
「手付金を払っているから解除できる」
「契約書に日付が書いてあるから、その日だけ見ればよい」
と単純に判断せず、今回の契約条件を確認することが大切です。
■「履行に着手した」とは何を指す?
手付解除を確認するときによく出てくる言葉が「履行の着手」です。
一般の方にとっては、かなり分かりにくい表現だと思います。
例えば、
・売主が引渡しに向けて何らかの手続きを進めた
・買主が残代金の支払いに向けた手続きを進めた
といった状況が関係する可能性があります。
ただし、
「この手続きをしたから履行の着手に該当する」
と一律に決められるものではありません。
単なる準備段階なのか、実際に契約の履行に着手しているのかは、具体的な状況によって異なります。
手付解除を検討する場面では、自分だけで判断せず、契約を担当している不動産会社へ現在の取引状況を具体的に確認した方がよいでしょう。
必要に応じて法律の専門家への確認が必要になる場合もあります。
■手付解除と「違約解除」は別に考える
もう一つ混同しやすいのが、手付解除と違約による解除です。
例えば、
「契約後に気が変わったので購入をやめたい」
という場合と、
「相手方が契約で約束した内容を履行しない」
という場合では、解除の考え方が異なります。
売買契約書には、
・手付解除
・契約違反による解除
・違約金
・損害賠償
・契約不適合に関する取り決め
などが、それぞれ別の条項として記載されていることがあります。
契約を解除するという結果だけを見るのではなく、
「どの条項に基づく解除なのか」
を確認することが重要です。
■住宅ローン特約による解除とも違う
住宅ローンを利用して住宅を購入する場合には、「住宅ローン特約」が設けられていることがあります。
住宅ローン特約は、手付解除とは別の仕組みです。
例えば、契約で定められた金融機関へ期限内に住宅ローンを申し込み、所定の条件を満たしているにもかかわらず融資承認を得られなかった場合に、契約を解除できる内容になっていることがあります。
ただし、
・どの金融機関へ申し込むのか
・借入予定額はいくらか
・承認取得期限はいつか
・解除期限はいつか
・どのような場合に特約が使えるのか
などは契約によって異なります。
「住宅ローンが通らなければ手付金を放棄すればよい」
という話ではありません。
住宅ローン特約と手付解除は、分けて確認する必要があります。
■具体例で考えてみる
例えば、中古住宅を4,500万円で購入する契約を締結し、契約時に100万円の手付金を支払ったとします。
契約後、買主側の事情が変わり、購入を取りやめたいと考えました。
この場合、最初に確認するのは、
「100万円を放棄すればよいか」
ではありません。
確認したいのは、
・契約書の手付解除条項
・手付解除期日
・現在の日付
・売主側がどこまで手続きを進めているか
・買主側がどこまで手続きを進めているか
・住宅ローン特約など別の解除条項が関係しないか
・違約解除に移行する条件は何か
といった点です。
同じ「契約をやめたい」という場面でも、時期や理由によって確認する条項が変わることがあります。
だからこそ、解除を検討するときは、契約書全体を見ながら整理する必要があります。
■契約前に確認しておきたいポイント
手付解除については、契約をやめるときになって初めて確認するのではなく、契約前に確認しておくと分かりやすくなります。
具体的には、
・手付金はいくらか
・その手付金は契約書でどのように扱われているか
・手付解除に関する条項はどこか
・手付解除期日は設定されているか
・買主から解除する場合の扱い
・売主から解除する場合の扱い
・期限を過ぎた場合の契約上の扱い
・住宅ローン特約との関係
・違約解除の条項
・特約事項に解除に関する追加条件がないか
などを確認します。
特に重要なのは、手付解除の条項だけを単独で読まないことです。
売買契約書の別の条項や特約事項によって、関連する条件が定められていることがあります。
■不動産会社へ確認するときの質問例
契約前に分からないことがあれば、次のように具体的に聞くと整理しやすくなります。
・今回の手付金は、契約書上どのような扱いになっていますか?
・手付解除について書かれているのはどの条項ですか?
・手付解除ができる期間はいつまでですか?
・解除する場合は、どのような方法で連絡する必要がありますか?
・現在、売主側で引渡しに向けて進めている手続きはありますか?
・手付解除の期限を過ぎた場合は、どの条項が関係しますか?
・住宅ローン特約による解除とは、どのように区別されますか?
・違約による解除の場合は、どのような取り扱いになりますか?
・特約事項に解除について追加の条件はありますか?
・売主は個人ですか、それとも宅地建物取引業者ですか?
「契約をキャンセルできますか?」
だけではなく、
「今回の契約では、どの解除条項が、どの時点まで適用されるのか」
と具体的に確認することで、契約内容を整理しやすくなります。
■まとめ
手付解除を確認するときに大切なのは、
「手付金を放棄すれば契約をやめられる」
という一部分だけで判断しないことです。
確認したいのは、
・手付金の扱い
・手付解除の条項
・解除できる時期
・現在の取引の進行状況
・住宅ローン特約との違い
・違約解除との違い
・特約事項との関係
です。
不動産売買契約には、解除について複数の条項が設けられていることがあります。
「自分の契約ではどうなっているのか分からない」
「不動産会社へ何を確認すればよいか整理したい」
「契約前に第三者の視点でも確認したい」
という場合には、売買契約書・重要事項説明書などの資料を確認し、不動産取引実務の観点から確認ポイントを整理するサービスをココナラで提供しています。
法律判断や契約の法的有効性を判断するサービスではなく、購入の可否を最終判断するものでもありません。
契約書に何が書かれているのか、どこを追加確認した方がよいのか、不動産会社へどのように質問すればよいのかを整理するためのサポートとしてご利用いただけます。