チームに一人、飛び抜けて数字のいいメンバーがいました。
やり方を聞かれれば教えるし、性格も明るい。周りとの関係も良好でした。私は「いい状態だ」と思っていました。
その人が3日ほど休んだ週、チームの数字がはっきり落ちました。
本人の分が抜けたぶんだけではありません。周りのメンバーの数字まで下がっていたんです。あとで気づきましたが、みんな困ったときにその人に聞いていたので、聞ける相手がいない週は全体が止まっていました。
通信業界のコールセンターで25年、チームを見てきました。今日はこの失敗の話を書きます。
「見て覚えろ」は通じなかった
まずやったのは、同席でした。エースの隣に座らせて、やり方を見てもらう。
これで伝わるだろうと思っていました。実際は、ほとんど伝わりませんでした。
見ている側は「すごいですね」と言って戻ってきます。では何がすごかったのか聞くと、答えられない。話し方が上手だった、という感想止まりです。
見学は、見る側に「どこを見ればいいか」が分かっていないと成立しません。私はそこを何も指定せずに、ただ横に座らせていました。
本人に聞いても、出てこなかった
次に、本人に直接聞きました。「どうやってるの?」と。
返ってきたのは「普通にやってるだけなんですけどね」でした。
はぐらかしているわけではありません。本当に自覚がなかったんです。上手い人ほど、判断の大半を無意識でやっています。言葉にできるのは、やっていることのごく一部でした。
しかも、この質問は本人を困らせます。答えられないことを何度も聞かれると、「自分は説明が下手だ」と感じさせてしまう。ここは反省しています。
数字から逆に辿ったら、見つかった
行き詰まって、やり方を変えました。本人に聞くのをやめて、数字を並べました。
エースと他のメンバーの数値を、工程ごとに全部分解して比べたんです。
すると、意外なことが分かりました。成約率そのものは、それほど飛び抜けていなかったんです。差がついていたのは、もっと手前でした。最初の案内で、案内すべき項目に全部触れている割合。ここだけが、他のメンバーと20ポイント以上違っていました。
つまり、話し方が上手いのではなく、やることを毎回やり切っていただけでした。
それなら真似できます。「最初にこの4項目を必ず出す」とだけ決めて、全員でやってみました。3週間ほどで、他のメンバーの数字も上がりました。
見つけたあとに、もう一つやったこと
型が見つかったあと、エース本人にも変化がありました。
「自分がやっていたのはこれだったんですね」と言ったんです。本人が一番驚いていました。
そこからは、その人が新人に教える側になりました。以前は「見て覚えて」しか言えなかったのが、「最初にこの4項目」と具体的に言えるようになった。教えるのが得意になったわけではなく、教えられる形になっただけです。
一人に依存していた状態から抜け出せたのは、このときでした。
同じことで困っている方へ
できる人のやり方が共有できない、休まれると回らない。そんな状態でしたら、本人に聞いても答えは出てこないかもしれません。
私は業務ツールを作るとき、誰がどの工程で差をつけているかが見える形を目指します。個人技は、聞き出すのではなく数字から特定するほうが早いと考えているからです。
数字は出しているのに現場が動かない、特定の人に頼りきりになっている。そんな状態でしたら、お力になれることがあるかもしれません。
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