学会発表のスライドを作るとき、どこから手を付けていますか?
研究論文や抄録を開いて、そこに書かれている文章をPowerPointに貼り付ける。
そんな作り方をしたことがある方もいるのではないでしょうか。
研究内容はすでにまとまっているのだから、その文章を使えば効率的にスライドを作成できそうです。
ただ、実際に作ってみると、文字が多くなってしまったり、発表時間に収まらなかったりすることがあります。
また、文章を短くしようとしても、どこを削ってよいのか分からないこともあると思います。
論文と学会発表のスライドは、同じ研究内容を扱っていても、情報の伝え方が異なります。
論文は、読み手が必要に応じて文章を読み返しながら理解できます。
一方、学会発表では、限られた時間の中で、発表者の説明とスライドを通して研究内容を理解してもらう必要があります。
今回は、論文や抄録をもとに学会発表のスライドを作成するとき、考えておきたいことについて書いてみます。
論文の文章をそのまま載せると、なぜ伝わりにくい?
論文では、研究の背景や方法、結果、考察について、必要な情報を文章で説明します。
研究方法であれば、対象者の選定方法やデータの収集方法、分析方法などを詳しく記載する必要があります。
しかし、その文章をそのままスライドに載せると、文字量が多くなりがちです。
例えば、研究方法について200文字程度の文章があったとします。
論文であれば、それほど長い文章ではないかもしれません。
ところが、発表スライドに同じ文章を載せると、聞き手はその文章を読みながら、発表者の説明も聞かなければなりません。
スライドを読むことに集中すると、説明を聞き逃してしまうこともあります。
反対に、発表者の話を聞いていると、スライドの文章を最後まで読めない場合もあります。
そのため、学会発表では、論文の文章をそのまま載せるのではなく、発表に必要な情報を整理し、見せ方を考える必要があります。
ただし、単純に文字数を減らせばよいわけではありません。
研究内容を正確に伝えるために、何をスライドで示し、何を口頭で説明するのかを考えることが大切です。
背景と目的は、研究の必要性が伝わるようにする
学会発表の最初の部分では、研究の背景や目的を説明することが多いと思います。
ここで注意したいのが、背景の説明が長くなりすぎることです。
研究を進める過程では、多くの先行研究を読み、さまざまな情報を集めていると思います。
そのため、発表でも関連する情報をできるだけ詳しく紹介したくなることがあります。
しかし、発表時間が限られている場合には、すべての背景情報を説明することは難しいでしょう。
例えば、看護師のある技術に関する研究であれば、その技術がなぜ重要なのか、これまでに何が明らかになっているのか、そして何がまだ十分に分かっていないのかを整理します。
そのうえで、今回の研究が何を明らかにしようとしたのかを示します。
この流れが分かれば、聞き手は研究の必要性を理解しやすくなります。
一方、関連する先行研究を次々に紹介しても、それらが研究目的とどのようにつながっているのか分からなければ、背景が長いだけになってしまうことがあります。
背景を短くすること自体が目的ではありません。
研究目的にたどり着くまでの流れを分かりやすくすることが重要です。
研究方法は、重要な条件を省略しない
学会発表では、研究方法をできるだけ簡潔に示す必要があります。
ただし、方法の説明を短くしすぎると、研究の内容が正しく伝わらなくなる場合があります。
例えば、対象者について「看護師20名」とだけ記載したとします。
しかし、研究によっては、どのような施設に勤務する看護師なのか、どの程度の経験を持つ人なのか、どのような基準で対象者を選んだのかが重要になることがあります。
また、測定方法や分析方法についても、研究結果を理解するために必要な情報は残す必要があります。
そのため、研究方法のスライドを作成するときには、論文の文章を短くすることだけでなく、研究を理解するために必要な条件を整理することが大切です。
例えば、研究デザイン、対象、データ収集方法、分析方法などを項目ごとに示す方法があります。
研究の流れが複雑な場合には、文章で説明するよりも、手順を図で示した方が分かりやすいこともあります。
一方で、図にしたことで重要な条件が分からなくなってしまっては意味がありません。
簡潔に示すことと、必要な情報を省略することは違います。
研究の妥当性を判断するために必要な情報は、発表形式に合わせて適切に残したいところです。
結果は、数値を並べるだけで終わらせない
研究結果のスライドは、学会発表の中でも特に重要な部分です。
しかし、論文に掲載した表をそのままスライドに貼り付けると、文字や数値が小さくなり、読み取りにくくなることがあります。
例えば、論文では10項目の比較結果を一つの表にまとめていたとします。
その表をそのままPowerPointに貼り付けると、発表会場の後方からは数値が読めないかもしれません。
また、発表者が説明している項目を、聞き手が表の中から探さなければならなくなることもあります。
このような場合には、結果を複数のスライドに分けたり、比較したい内容に応じてグラフを使用したりする方法が考えられます。
ただし、グラフにすれば必ず分かりやすくなるわけではありません。
例えば、正確な数値を比較する必要がある場合には、表の方が適していることもあります。
また、グラフを作成するときには、軸の設定や目盛り、単位などによって結果の印象が変わることがあります。
特に、差を大きく見せるために不適切な軸設定を使用したり、都合のよい結果だけを抜き出したりすることは避けなければなりません。
学会発表では、研究結果を見やすく示すことが大切ですが、それ以上に正確さが重要です。
結果を分かりやすく見せることと、結果を都合よく見せることは違う。
この点は意識しておきたいと思います。
考察は、論文の文章を短くするだけでは伝わらない
考察のスライドを作るとき、論文の考察部分から文章を抜き出して、そのまま載せることがあります。
しかし、論文の考察は複数の先行研究を引用しながら、結果の意味を詳しく説明していることが多いと思います。
その文章を短くしただけでは、発表で何を伝えたいのかが分かりにくくなることがあります。
例えば、ある結果について複数の先行研究と比較して考察している場合です。
論文では、それぞれの研究との共通点や相違点を詳しく記載する必要があるでしょう。
一方、発表では、その比較からどのようなことが考えられるのかを中心に説明する方法があります。
ただし、先行研究との関係をすべて省略してしまうと、考察の根拠が分からなくなることがあります。
そのため、主要な結果と、それをどのように解釈したのかが伝わるように整理することが大切です。
また、考察では研究結果から言える範囲を超えて断定しないことも重要です。
例えば、関連が認められたという結果から、因果関係が明らかになったかのように説明してはいけません。
限られた発表時間の中でも、研究結果と解釈を区別し、必要な根拠を示すことが求められます。
発表時間から逆算して構成を考える
学会発表のスライドを作成するとき、発表時間も重要な条件になります。
例えば、発表時間が7分の場合と15分の場合では、説明できる内容が異なります。
ただし、発表時間が半分だからといって、単純にスライド枚数を半分にすればよいわけではありません。
スライドによって、説明に必要な時間は異なります。
研究目的を示すスライドであれば短時間で説明できるかもしれませんが、複雑な研究方法や結果のグラフを説明する場合には、時間が必要になります。
そのため、最初からスライド枚数だけを決めるのではなく、発表全体の流れを考え、各部分にどの程度の時間が必要なのかを検討することが大切です。
また、実際に発表原稿を作成し、声に出して練習してみると、時間配分の問題に気づくことがあります。
スライドを見ながら説明してみることで、文字が多すぎる部分や、説明の順番が分かりにくい部分が見つかることもあります。
学会発表では、PowerPointを完成させることが最終目的ではありません。
発表者の説明とスライドが組み合わさって、研究内容が伝わることが重要です。
最後に
学会発表のスライドを作成するとき、論文や抄録の文章をそのまま使用したくなることがあります。
すでに研究内容が整理されているため、効率的に感じるかもしれません。
しかし、論文と学会発表では、情報の伝え方が異なります。
論文では詳しく説明する必要がある内容でも、発表ではスライドと口頭説明を組み合わせて伝えることができます。
一方で、発表時間が限られているからといって、研究の重要な情報を省略してよいわけではありません。
研究の背景や目的、方法、結果、考察について、何を残し、どのように示すのかを考えることが大切です。
学会発表のスライドは、論文を短くしたものではありません。
研究内容を正確に、限られた時間の中で分かりやすく伝えるための資料です。
論文の文章をそのまま載せるのではなく、聞き手に伝わる形へ整理することを意識していきたいところです。
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