私たちは、人との話し方については、いろいろなところで学びます。
相手に伝わる話し方。
感じよく聞こえる話し方。
人を傷つけない言葉の選び方。
仕事で信頼されるコミュニケーション。
本屋に行けば、そういった本もたくさん並んでいます。
でも、ふと思うんです。
「自分との話し方」って、教わったことがありますか?
私は、ほとんどの人が教わったことがないんじゃないかと思っています。
私たちは小さいころから、
人に迷惑をかけてはいけない。
ちゃんとしなさい。
我慢しなさい。
周りを見なさい。
相手の気持ちを考えなさい。
そんなことをたくさん教わってきました。
もちろん、どれも社会の中で生きていくうえでは大切なことです。
でも一方で、
「自分はいま何を感じているのか」
「本当はどうしたいのか」
「どうしてこんなに苦しいのか」
「このモヤモヤは何を伝えようとしているのか」
そんなふうに、自分の気持ちと会話する方法は、ほとんど教わりません。
だから、モヤモヤしたときに困るんです。
何か嫌なことがあったとき、
「こんなことで悩んじゃいけない」
「もっと大変な人もいる」
「自分が我慢すればいい」
「社会人なんだから仕方ない」
そんなふうに、自分の気持ちに答えてしまうことがあります。
でも、よく考えてみると、
それは本当に「自分との会話」なのでしょうか。
もしかするとそれは、
親から言われてきたこと。
会社で求められていること。
世間で正しいとされていること。
誰かからどう見られるか。
そういった他人の基準を使って、自分の気持ちを判断しているだけなのかもしれません。
だから、気持ちが置いてきぼりになる。
頭では「仕方ない」と納得しているのに、なぜかモヤモヤだけが残る。
そんなことが起きるんだと思います。
では、自分との会話とは何でしょうか。
私は、
自分の感情を否定せずに、一度そこに置いてみること
だと思っています。
「こんなことを思ってはいけない」ではなく、
「自分は、そう思っているんだな」
と受け止めてみる。
怒っているなら、
「何に怒っているんだろう」
悲しいなら、
「何が悲しいんだろう」
不安なら、
「何が怖いんだろう」
モヤモヤしているなら、
「本当はどうしたかったんだろう」
そうやって、自分の中にあるものを少しずつ言葉にしていく。
すぐに答えを出さなくてもいいんです。
大切なのは、まず自分の声を聞くことだと思います。
ただ、これを一人でやるのは、意外と難しいものです。
なぜなら、自分のことを考えているつもりでも、いつの間にか同じ考えをぐるぐる回ってしまうからです。
「こうするべきだった」
「自分が悪かった」
「でも相手も悪い」
「やっぱり自分が我慢するしかない」
気づけば、いつもの思考に戻ってしまいます。
だからこそ、第三者と話すことには意味があります。
家族でもない。
職場の人でもない。
友人でもない。
自分の日常の人間関係から少し離れた人に話してみる。
これだけで、話せることは大きく変わります。
家族には言えないことがあります。
職場の人には言えないこともあります。
友人に話せば、心配されたり、アドバイスをされたり、相手の価値観で判断されたりすることもあります。
悪気がなくても、近しい関係だからこそ、自由に話せないことはあります。
だから、
安心して、何を話してもいい場所
というものが必要なんだと思います。
カウンセリングやコーチングの価値の一つも、そこにあります。
誰かに答えをもらうためだけの時間ではありません。
自分の話をして、
自分の言葉を聞いて、
自分の感情に気づいていく。
第三者から、
「今、こんな言葉が何度も出ていますね」
「そこを話すとき、少し表情が変わりましたね」
「もしかすると、こういうことを大切にしているようにも見えます」
そんなふうに返してもらうことで、
自分一人では気づかなかった自分が見えてくることがあります。
つまり、
誰かと話しているようで、実は自分自身と話している。
私は、コーチングやカウンセリングには、そんな側面があると思っています。
そして私は、この時間を
「100%自分のための時間」
だと思っています。
私たちは毎日、たくさんの時間を使っています。
仕事のため。
家族のため。
家事のため。
誰かとの約束のため。
休んでいるつもりでも、スマートフォンを見ていたり、明日の仕事を考えていたりします。
では、
自分のことだけを考える時間は、どれくらいあるでしょうか。
自分が何を感じているのか。
本当は何を望んでいるのか。
何を大切にして生きたいのか。
そんなことを、誰にも遠慮せずに話す時間。
もしかすると、私たちは思っている以上に、そういう時間を持っていないのかもしれません。
モヤモヤをなくすために、無理やり前向きになる必要はないと思います。
すぐに答えを出さなくてもいい。
まずは、
「自分は何を感じているんだろう」
と、自分に聞いてあげる。
そして、一人ではなかなか聞けないときは、誰かの力を借りてもいい。
第三者と話すことは、弱いからすることではありません。
自分のことを、丁寧に扱うための一つの方法です。
人との話し方を学ぶように、
これからは、
自分との話し方も学んでいく。
それだけでも、人生の見え方は少しずつ変わっていくのではないでしょうか。
あなたには今、
100%自分のためだけに話せる時間がありますか?