霊媒体質「声を失った私に、あの人が話しかけてきた日」①
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占い
声が出なくなってから、
私は以前よりも静かな世界にいる。
話せない分、
聞こえてくるものが増えた。
人の気配。
感情の揺れ。
そして――この世にいない存在の声。
母から受け継いだ霊媒体質は、
声を失った今、むしろ研ぎ澄まされているように感じる。
そんなある日から、
不思議な“話しかけられ方”をするようになった。
「無理しなくていい」
「ちゃんと休め」
「大丈夫だからな」
はっきりした言葉ではない。
直接耳で聞くというより、
胸の奥に染み込んでくる感じ。
それも一度きりじゃない。
朝、カーテンを開けた時。
夜、文字鑑定を終えた後。
ふと気を抜いた瞬間に、必ずその気配があった。
男の人。
年配で、穏やかで、少し照れ屋。
でも、誰なのかわからない。
霊が視える私でも、
最初から正体がわかるわけじゃない。
むしろ、身近な存在ほど、
思い込みが邪魔をして見えにくい。
「守ってくれている存在がいる」
そう感じながらも、
私は深く視ないようにしていた。
理由がある時、
向こうから必ず“名乗ってくる”と知っているから。
ある夜、
鑑定用の文章を書いている最中、
急に手が止まった。
胸が、じんわり温かくなる。
そして、はっきりとした想念が届いた。
「お前が、こうして文字で人を救うようになるとはな」
その言葉に、
なぜか涙が出そうになった。
知らないはずなのに、
懐かしい。
私は心の中で問いかけた。
――あなたは、誰ですか。
返ってきたのは、
少し困ったような、やさしい気配。
次の瞬間、
私の記憶の奥が、静かに開いた。
小さな手。
夕方の道。
低いけれど、安心する声。
「あそぶか?」
そこまで思い出したところで、
その気配は、ふっと引いた。
まるで
「続きは、次にしよう」と言うように