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コラム
部下に敬語を使うと、なめられると思っていた。
記事
コラム
Kei_note
2026/08/30 19:34
「おはようございます」
次の朝、部下へそう声をかけるだけで、少し恥ずかしかった。
前日までは「おはよう」。
仕事を頼むときも、
「これ、お願い」
「こっちもやっておいて」
そんな言葉を使っていた。
仲がよければ、言葉を崩すのは普通だと思っていたし、部下もわたしに敬語を使わないことがある。
それが距離の近さだと受け取っていた。
けれど、ある本で、
「人によって接し方を変えない人は信頼される」
という言葉を読んだとき、手が止まる。
上司には敬語を使う。
同じ立場の人には、少し言葉を選ぶ。
それなのに、部下へ話すときだけ、急に短くなる。
特に仕事が立て込んでいる日は、
「何で、まだできていないの?」
「それ、前にも言いましたよね」
焦りや苛立ちまで、そのまま声に乗せていた。
それでも、部下に敬語を使うことには抵抗があった。
急に距離ができるかもしれない。
弱く見られたらどうしよう。
今さら変えれば、気にしていることまで伝わりそうで恥ずかしい。
そんなことばかり浮かんでくる。
最後は、
「社内でこれ以上、下がることなんてない。プライドが邪魔なら捨ててしまおう」
と、自分に言い聞かせた。
翌日から「おはよう」を「おはようございます」に変えた。
「これ、お願い」は、
「こちらをお願いできますか」
にする。
最初は、自分の言葉ではないような違和感があった。
ただ、続けていると、思ってもいなかった変化が起きる。
部下の言葉に引っかかったときも、「です」「ます」を使おうとすると、すぐには言い返せない。
わずかな間ができる。
その数秒で、
「ここで戦う必要はあるだろうか」
と考えられるようになった。
あるとき、わたしが資料の確認を見落とした。
部下から、
「keiさん、ここ見落としていますよ」
「ちゃんと見ないとダメじゃないですか」
と、少しからかうように言われる。
以前なら、恥ずかしさをごまかすために強い言葉を返し、その会話を家まで持ち帰っていただろう。
その日は、
「見落としたところは、すみません。ただ、その言い方はやめてください」
と伝え、すぐに仕事の話へ戻れた。
帰宅してから、頭の中で言い合いを続けることもなかった。
もちろん、すべての会話を敬語にしたわけではない。
休憩中の雑談まで丁寧にすると、かえって距離を感じる。だから、仕事の話では敬語、何気ない会話では今までどおりにした。
わたしには、その形が合っていた。
しばらくして、以前はよくぶつかっていた部下と飲む機会があった。
昔の話になり、部下が笑いながら言う。
「前は、めちゃくちゃバチバチでしたよね」
わたしも笑いながら、
「最近は、そうでもなくなりましたね」
と返すと、
「keiさんが変わったからですよ。本当に変わりましたよね」
その言葉を聞き、胸の奥が少し温かくなった。
敬語を使えば、部下との距離が広がると思っていた。
実際に生まれたのは、人との距離ではない。
感情と、口から出る言葉の間にできた、わずかな余白だった。
いきなり、すべての言葉を変えなくてもいい。
明日の朝、「おはよう」を「おはようございます」に変えてみる。
そのひと言は、相手より先に、自分の次の言葉を変えてくれるかもしれない。
#部下
#部下育成
#マネジメント
#教育
#ストレス
怒りのまま書いたメールを、送らずに閉じた夜。
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