神戸の社労士、井上です。
毎年6月になると、障害者の雇用状況について報告を求める書類が届くかと思います。
いわゆる「ロクイチ報告書」です。
障害者雇用促進法では、企業に対して法定雇用率以上の障害者を雇用することが義務付けられています。
また、障害者雇用納付金制度では、法定雇用率を超えて障害者を雇用している企業には「調整金」が支給され、法定雇用率を達成できていない企業には、不足人数に応じて「納付金」が課される仕組みになっています。
納付金は不足する障害者1人につき月額5万円、調整金は原則として超過1人につき月額2万9,000円です。
ただし、現在、この納付金制度の対象となっているのは、常用労働者100人を超える企業です。
ところが、この対象企業を拡大しようという議論が出ています。
100人以下の企業にも対象を拡大?
これまでの経緯を見ると、平成22年7月には常用労働者300人超の企業が対象でしたが、その後、200人超に拡大され、平成27年4月からは100人超の企業が対象となっています。
そして、令和8年10月21日に開催された労働政策審議会障害者雇用分科会では、100人以下の企業にも納付金制度を拡大すべきかどうかが議論されました。
厚生労働省からは、80~100人規模の企業を新たに対象とする案も示されています。
現状、私自身も障害者雇用の実態を十分に把握しているわけではありませんが、こうした対象拡大の議論が出てくる背景には、障害者雇用をさらに進めたいという国の意向があるのでしょう。
中小企業団体は反対
労働新聞によると、ある中小企業事業主団体は、次のような意見を述べています。
「一つひとつの業務の量が少なく、一人の労働者が多様な業務を担うといった特徴があることから、業務の切出しが困難」
さらに、
「100人以下企業に対する支援体制が整うまでは、納付金義務を課すことに強く反対したい」
と表明しています。
確かに、中小企業では一人の従業員が複数の仕事を担当していることも珍しくありません。
大企業のように業務を細分化し、障害者に担当してもらう仕事を用意することが難しいという事情も理解できます。
納付金の対象を拡大すれば解決するのか?
ここで、もう一つ考えておきたいことがあります。
それは、障害者本人にとって、受け入れ体制が十分に整っていない企業で働くことが、本当に望ましいのかという問題です。
障害者雇用は、単に企業に雇用義務を課したり、未達成企業から納付金を徴収したりすれば解決するものではありません。
本人が能力を発揮できる仕事があり、安心して働き続けられる職場環境が必要です。
そのためには、企業側の受け入れ体制の整備や、採用後の支援も欠かせません。
100人以下の中小企業にまで納付金制度を拡大するのであれば、納付義務だけでなく、中小企業が障害者を受け入れるための支援策も併せて充実させる必要があるのではないでしょうか。
制度の対象を広げることと、障害者が働きやすい職場を増やすこと。
この二つは、必ずしも同じではないと思います。
労務プランニング オフィスINOUE
社会保険労務士:井上 正宣