神戸の社労士:井上です。
以前、記事にしましたが、再度、厚生労働省が勧告をしております。
社会保険料の削減をうたい、個人事業主やフリーランスを形式的に雇用して、
健康保険・厚生年金保険の被保険者資格を取得させる仕組みが問題となっています。
労働新聞によると、厚生労働省はこの問題を受け、日本年金機構や全国健康保険協会、健康保険組合などに対し、被保険者資格の取扱いに関する通知を発出しました。
「国保逃れ」是正狙う 個人事業主の短時間雇用 厚労省通知|労働新聞 ニュース|労働新聞社
今回は、この問題について社会保険労務士の立場から考えてみます。
■ 社会保険料が安くなるという仕組みの問題点
本来、個人事業主やフリーランスは、原則として国民健康保険と国民年金に加入します。
ところが、社会保険料の削減をうたい、
勤務時間が極端に短い労働者として事業所に雇用された形を取り、
健康保険・厚生年金保険の被保険者資格を取得する仕組みが存在します。
こうした仕組みでは、個人事業主などが事業所から受け取る報酬を上回る「会費」を支払うケースもあるとされています。
しかし、社会保険の被保険者資格は、単に届出を行えば取得できるものではありません。
実際にどのような業務を行い、どのような報酬を受け取っているのかなど、
雇用や労務提供の実態が重要になります。
■ 厚生労働省が示した判断の考え方
今回の通知では、報酬が業務の対価として経常的に支払われているとは認められず、
業務についても経常的な労務の提供とは認められない場合、
原則として被保険者資格を有しないものとして取り扱う考え方が示されました。
具体例として、次のようなケースが挙げられています。
1週間または1カ月の勤務時間が極端に短い
業務の実態がアンケートへの回答にとどまる
勉強会への参加など、単なる自己研鑽にすぎない
もちろん、勤務時間が短いという理由だけで、直ちに被保険者資格が否定されるわけではありません。
短時間労働者であっても、適用要件を満たせば社会保険の加入対象となります。
重要なのは、実際の労務提供があり、その対価として報酬が支払われているかという点です。
■ 私自身も、以前から問題意識を持っていました
私自身、この問題については以前から疑問を持っており、
厚生労働省や日本年金機構に要望を出したことがあります。
社会保険労務士として、社会保険制度が適正に運用されることは重要だと考えています。
社会保険料の負担は、事業主にとっても個人にとっても決して軽いものではありません。負担を少しでも抑えたいと考えること自体は、理解できます。
しかし、社会保険料の削減だけを目的として、実態のない雇用関係を作り出すことは、
制度本来の趣旨に沿うものではありません。
また、形式的に被保険者資格を取得していたとしても、
後から資格が認められないと判断されれば、
関係者にさまざまな影響が生じる可能性があります。
今回の通知は、被保険者資格の判断において、
形式だけでなく実態を確認することの重要性を改めて示したものと考えます。
■ 事業主も、社会保険の適用を正しく理解することが大切です
社会保険の加入要件は、雇用形態や労働時間、賃金、勤務実態などによって判断されます。
「短時間勤務だから加入しなくてよい」「届出を出せば加入できる」といった単純なものではありません。
事業主の皆様には、社会保険料の負担だけに目を向けるのではなく、
適用要件を正しく理解し、実態に即した雇用管理を行っていただきたいと思います。
社会保険制度は、働く人の生活を支える重要な仕組みです。その信頼を守るためにも、適正な運用が求められます。
労務プランニング オフィス INOUEでは、
社会保険の適用や労務管理に関するご相談を承っております。
加入要件や手続きについてご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
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社会保険労務士:井上 正宣