ある日のリハビリ中、患者さんとのいつもの会話の中で、ふと気づきました。
「あれ、今日は話の内容が違うな」と。
日々の仕事の中で、患者さんの状態を観察していると、最近特に意識が向く「変化」があります。それは、痛みの数値や関節の動きといった、目に見える身体的なデータだけではありません。患者さんがリハビリの時間に口にする「言葉」そのものの変化です。
リハビリを始めたばかりの頃や、症状が強くて不安が大きい時期は、どうしても会話の大部分が「マイナスの訴え」になります。
「ここがまだ痛い」
「これができない、あれも不便だ」
自分の身体が思い通りに動かないのだから、できない部分や不調なところに意識が向いてしまうのは当然のことです。まずはその訴えに落ち着いて耳を傾け、どこに問題があるのかを一緒に整理していくところから、私たちの関わりは始まります。
会話の「主役」が変わる時
治療やリハビリが進み、身体の状態が少しずつ上向いてくると、ある日ふと、患者さんの話の内容が変わる瞬間に立ち会うことがあります。
それまでは「できないこと」の羅列だったはずの会話の中に、ぽつぽつと前向きな事実が混ざり始めるのです。
「まだ少し痛む瞬間はあるけれど、この前教えてもらった動きができるようになった」
「そういえば、歩くときの突っ張る感じが減ってきた気がする」
「痛い・できない」というマイナスのノイズに急かされていた状態から、自分の中に生まれた「できたこと・変わったこと」へ、患者さん自身の意識の向き先がシフトしていく。この、会話の主役がガラリと入れ替わる瞬間を目の当たりにするとき、私はとても面白いなと感じます。
受け取り方や考え方の変化
この変化は、単に「身体の痛みが完全に消えたから」起きるわけではありません。
痛みがゼロになっていなくても、患者さん自身が「自分の身体に対する受け取り方や、考え方」を変え始めている証拠なのだと思います。できないことばかりに目を向けて自分を責めたり焦ったりするのをやめて、「これならできる」「ここまで動けるようになった」という事実を、落ち着いて受け入れられる心のゆとりが生まれてきている。
身体が回復していくプロセスと並行して、患者さんの内側にある物事の捉え方が、少しずつ前向きに整っていく。その結果が、「言葉の変化」として表に出てきているのです。
私たちがアプローチしているのは、単に痛みを取り除くことだけではありません。患者さんが自分の身体とどう付き合い、どう捉え直していくかという、その「受け取り方の変化」をサポートすることでもあるのだと、改めて気づかされます。
まとめ:変化のサインを見逃さない
患者さんの変化は、劇的なドラマのように一瞬で起きるわけではありません。日々の小さな「できたこと」の積み重ねの中で、少しずつ、だけど確実に言葉が変わっていきます。
「最近、前向きな話をすることが増えたな」
そうやって、患者さん自身の考え方や受け取り方が変わっていくサインを捉えられたとき、この仕事の本当の面白さを感じます。これからも、目の前の患者さんの身体の声に耳を傾けるだけでなく、その内側で起きている静かな変化のサインを、現場でフラットに、丁寧に観察していきたいと思います。
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