深夜。部屋に響くのは、パソコンの排熱ファンの低い唸り声と、俺のタイピングの音だけ。
ふと足元を見ると、定位置のクッションで丸くなっている「けらくん」が、気持ちよさそうに寝息を立てている。
時々ピクッと耳を動かしたり、無防備にお腹を見せたりするその姿を見ていると、張り詰めていた肩の力がフッと抜けるのがわかる。
俺はこの静かな時間が、たまらなく好きだ。
毎日毎日、ブルーライトを浴びながら画面と睨めっこしている。
吐き出したエラーを修正し、どうすればもっと効率化できるか、どうすれば最短で結果を出せる仕組みが作れるか、どうすればクオリティの高いものを創れるか
を考え続ける日々。
ビジネスの現場では、情熱だけじゃ誰も守れない。
だからこそ、現状を分析して課題をあぶり出し、客観的な根拠のある解決策を提示する。
リスクを潰し、確実にマネタイズの導線を引く。
ロジカルに、隙のない要件定義を組む。
それは、プロとして絶対に妥協しちゃいけない部分だ。
でも、そうやって数字やロジックという冷たい武器を研ぎ澄ませば澄ますほど、俺は足元で眠るけらくんの、この理屈抜きの「温かさ」に救われている自分に気づくんだ。
けらくんは、俺が月収をいくら稼ごうが(大したことはないが無職時代に比べたらがんばっちぇる)どれだけ凄いシステムを組もうが(まだまだ、でも便利なの作れるようになったよ)、
やばいクリエイティブを作ろうが(これからの話な テトに没頭する時間を来月から作る)
そんなことは1ミリも気にしていない。
ただ、
そこに飯があって、撫でてくれる手が温かくて
安心できる居場所があれば、それで満足して喉を鳴らす。
その無防備な寝顔を見ていると、ふと思うんだ。
俺たちが血眼になって作っているものって、最終的にはこの温かさを誰かに届けるためのものなんじゃないか、って。
音楽でも、映像でも、サービスでも。
一見すると、それはただのデータの塊だ。0と1で構成された、無機質な情報でしかない。
だけど、その冷たい画面の向こう側には、必ず「人」がいる。
満員電車でため息をついている誰か。
夜眠れなくてスマホをスクロールしている誰か。自分の居場所が見つからなくて、孤独を感じている誰か。
俺たちが本気で魂を削って生み出したクリエイティブは、電波に乗ってその人の元へ届き、ほんの一瞬でも、その冷え切った心を温めることができる。
「あ、なんかいいな」ってクスッと笑わせたり、「うぉぉあたりかよ!!はずれかよ!!」って脳汁とがっかりの天国と地獄を味わせたり「自分ももう少しだけ頑張ってみようかな」って前を向かせたり。理屈じゃなく、心が震える瞬間を作り出すことができる。
結局のところ、大衆の心を鷲掴みにするような本物の作品っていうのは、そういう見えない体温が宿っているものなんだと思う。
どれだけAIが進化して、誰もがそれなりのものを一瞬で作れる時代になっても、そこに誰かの心を動かしたいっていう泥臭くて生々しい体温と手触りと失敗とそこに至るまでのプロセスが乗っていなければ、人の奥底には絶対に刺さらない。たぶん。。。
だから俺は、激アツな低スぺPCのキーボードを叩きながら、常に温度を探している。
画面の向こうにいるお前が、この記事を読んで、少しでもホッと息を吐けるように。
明日からまた始まる現実の世界を、ほんの少しだけ面白く感じられるように。
ビジネスだから、数字は追う。
結果も出す。
いつか競合なんか寄せ付けないくらい、圧倒的なクオリティのものを作る。
だけど、その根底にあるのは、いつだって人への想いでありたい。
俺の提案で、クライアントが心底ホッとした顔をしてくれること。
俺の作ったもので、誰かの日常が少しだけ鮮やかになること。
そのために、俺は今日もロジックという冷たい鎧を着て、最高に温かいものを生み出していく。
足元では、けらくんが寝返りを打って、また小さく寝息を立て始めた。
この小さな命の温もりを手のひらに感じながら、俺はもう一度、画面に向き直る。
さあ、次はどんな世界を作ろうか。
お前の心に一番深く刺さる、とびきり温かいやつを、今から仕込むとしよう。
お前も、お前だけの「体温」を乗せた武器で、一緒に見たこともない景色を獲りに行こうぜ。