「今度こそ、ちゃんとした人を雇おう!」
「うちも売上が上がってきた。そろそろ社長の私が全部やるのは限界だ。今度こそ、しっかりした管理職を雇って任せよう!」
こう考えて求人を出す社長さん、本当に多いです。私もこれまで35年間で、数え切れないほどこの場面に立ち会ってきました。
でも、蓋を開けてみると…
「期待していた人と違った」
「3ヶ月で辞められた」
「既存の社員と合わなかった」
なぜ、こんなことが起こるのでしょうか?
実は、多くの会社が見落としている「たった一つのこと」があるんです。
実際にあった話:食品加工会社の失敗
社長の想い
年商20億円の食品加工会社。社長は製造も営業も経理も全部やっていて、もう限界でした。
「工場をまとめてくれる人がいれば、私は営業に専念できる。売上をもっと伸ばせるはずだ」
求人を出した!
【工場長募集】
・製造業経験者歓迎
・給料50万円
・アットホームな職場です
採用できた!
大手メーカーで管理職をしていた48歳の男性。履歴書も立派で、面接での受け答えもしっかりしていました。
「この人なら安心して任せられる!」
社長は大満足でした。
しかし現実は…
1週間後:「私、何をすればいいんでしょうか?現場のベテランさんの方が詳しいし…」
1ヶ月後:「設備の調子が悪いんですが、修理代はいくらまで使えますか?5万円?10万円?」
3ヶ月後:「思っていた仕事と全然違います」→退職
社長は頭を抱えました。「あんなに良さそうな人だったのに、なんで…?」
見落としていた「たった一つのこと」
それは、「人を雇う前に、組織を整える」ことです。
多くの中小企業では
- 誰が何をやっているのか分からない
- 役割が曖昧
- 責任の範囲が不明確
- 報告ラインがバラバラ
こんな状態で新しい管理職を迎えても、うまくいくはずがありません。
良い家具を買う前に、まず部屋を片付けないと置く場所がないのと同じです。
新しい人が「自分はどこに位置するのか」「誰と一緒に働くのか」「誰に報告するのか」が分からなければ、どんなに優秀な人でも力を発揮できません。
なぜ失敗したのか?組織が整っていなかった
理由1:組織の中での「位置」が不明確だった
この会社には組織図がありませんでした。
- 現場のベテラン職人は社長に直接報告していた
- 営業も製造も経理も、全部社長が見ていた
- 新しい工場長がどこに入るのか、誰も分かっていなかった
新しく入った工場長は「私は誰と一緒に働くんだろう?」「ベテラン職人さんは私の部下なの?それとも別?」と混乱してしまいました。
理由2:「何をしてもらいたいか」が曖昧だった
社長の頭の中では「工場のことは全部お任せ」でした。
でも「全部」って、具体的には何でしょう?
実際に社長が期待していたのは
- 品質管理
- 生産スケジュール
- 部下の指導
- 原価削減
- 納期管理
これらが明確になっていないと、新しく入った人は「全部って言われても、何から手をつければ…?」となってしまいます。
理由3:「どこまで任せるか」が決まっていなかった
よくある会話
新しい工場長:「この設備、修理が必要です」
社長: 「いくらかかるの?」
工場長:「20万円です」
社長:「うーん、ちょっと高いなあ…今度相談してから決めよう」
これが続くと、新しい人は「結局、何も決められないじゃないか」と感じてしまいます。
理由4:既存社員の心の準備ができていなかった
ある日突然、「今度から〇〇さんが工場長です」と言われた既存社員。
「今まで社長に直接相談してたのに…」
「この人、うちのやり方分かってるの?」
既存社員が受け入れ態勢になっていないと、新しい人は孤立してしまいます。
成功する会社がやっている「4つの準備」
準備1:組織図を描いてみる
成功している会社は、必ず「誰がどこに位置するか」を明確にしています。その上でそれぞれの部門の業務と目標をはっきりさせましょう。
これを紙に描くだけで、新しい人が「自分はここに入るんだ」と分かります。
そして既存社員も「ああ、これからはBさんとCさんは新しい工場長に報告するんだな」と理解できます。
準備2:やってほしいことを紙に書き出す
成功している会社は、必ず具体的にリストアップしています。
例:工場長の場合
- 毎月の生産計画を立てる
- 品質不良を今の半分にする
- 新人の教育をする
- 月1回、社長に報告する
- 安全管理を徹底する
これを求人に書くだけで、応募する人も「こういう仕事なんだな」と分かります。
準備3:「いくらまで自分で決めていいか」を最初に決める
うまくいく会社は、必ず決裁のルールを決めています。
- 10万円未満の設備修理→ 工場長が決めてOK
- 10万円以上→ 社長に相談
- 残業の指示→ 工場長の判断でOK
- 新しい人を雇う→ 社長と相談
最初にルールを決めておくと、お互いにストレスがありません。
準備4:既存社員に事前に説明する
「来月から工場長が入ります。今まで私が見ていた製造の部分を、その人にお任せします。みなさんも協力してください」
たった1回の説明ですが、これがあるかないかで、新しい人の働きやすさが全然違います。
今日からできる4ステップ
ステップ1:簡単な組織図を描いてみる
紙とペンを用意して、今の会社の組織図を描いてみてください。
「誰が誰に報告しているか」が分かれば十分です。
そして、新しく雇いたい人がどこに入るかを考えてみましょう。
ステップ2:「お任せしたいこと」を5つ書いてみる
まずは書き出してみましょう。
頭の中で考えているだけでは、曖昧なままです。
ステップ3:「いくらまで自分で決めていいか」を決める
「全部相談してほしい」では、雇う意味がありません。
ある程度は任せましょう。
ステップ4:社員に「新しい人が来る理由」を話す
「会社が成長したから」
「社長の負担を減らして、もっと会社を良くするため」
前向きな理由を伝えましょう。
千葉の会社で起きた変化
この3つの準備をしっかりした会社では、こんな変化がありました。
製造部長を採用してから
- 品質不良が3ヶ月で半分に
- 社長が営業に集中できるように
- 生産性が6ヶ月で15%アップ
- 何より、部長が2年以上も続けて働いてくれている
製造部長の感想
「最初に『何をやればいいか』がはっきりしていたので、迷わず仕事ができました。社長も現場のみんなも協力的で、本当にやりやすいです」
まず「組織を整える」が全てを変える
良い人を雇うことは大切です。
でも、その前に組織を整えること。これがもっと大切なんです。
- 誰がどこに位置するのか
- 誰が何の責任者なのか
- 誰が誰に報告するのか
これを明確にするだけで、既存社員も働きやすくなるし、新しく入る人も活躍しやすくなります。
組織図を描くなんて、大げさに聞こえるかもしれません。
でも、紙に簡単な図を描くだけでいいんです。
それだけで、採用の成功率は格段に上がります。
次回の採用では、まず組織図を描くところから始めてみてください。