第3話「笑い方を覚えてしまう」
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文化祭準備は、少しずつ形になってきていた。
教室の中には、昨日よりも明るい空気が流れている。
最初はただの作業だった。
段ボールを開けて、
飾りを作って、
役割をこなすだけ。
それなのに。
気づけば、
その人と話す時間が少しずつ増えていた。
「それ、ちょっと違うかも」
「え、ほんとだ」
「こうした方がいいんじゃない?」
そんな何気ないやり取り。
なのに。
なぜか、少し楽しい。
(なんでだろう)
ただの作業なのに。
ただの会話なのに。
気づけば、
笑っていた。
相手の一言で、
自然と笑ってしまう自分がいる。
今まで、
こんなふうに誰かと笑っていたっけ。
そんなことを考えていると、
少しだけ胸がくすぐったくなる。
「今、笑った?」
不意に言われる。
「笑ってないし」
反射で否定する。
でも。
「いや、笑ってたよ」
そう言って、少し相手が笑う。
その笑い方が、
なぜか頭から離れない。
(やばいな、これ)
ただの会話。
ただの文化祭準備。
なのに。
その人の前だと、
自分の反応が少しだけ変わっていく。
無意識に目が合う時間が増える。
無意識に話しかける回数が増える。
そして何より。
“笑ってしまう”回数が増える。
それは、
とても小さな変化だった。
でもその小さな変化は、
確実に何かを変え始めていた。
放課後。
作業が終わり、片付けをしながら思う。
(この時間、終わるのかな)
まだ始まってもいないのに。
終わることを考えてしまう。
その理由が、
まだ分からないまま。
ただひとつだけ分かっているのは。
この人といるときの自分が、
少しだけ“好き”だということだった。
続く。
次回
👉 第4話「文化祭前夜の静かな不安」