タラを量っていた冬のこと

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コラム
高校生のころ、冬が始まる頃になると、駅前の魚屋でアルバイトをしていました。
制服の上に白衣を羽織り、タラのぶつ切りを量り売りしていた日々です。

時給は650円。
学校が終わると、湯気の立つ店先に立ち、
元気なお姉さま方に「200!」「100!」「300!」と次々声をかけられ、
その声の勢いに押されるように、ひたすらタラを袋に詰めていました。

魚屋では、なにより“声”が大事でした。
「ぃらっしゃいませ」「ぁりがとうございました」
お腹からしっかり声を出すように、と大将(店長さんのあだ名)に言われて、
ときどき白い長靴の軽いツッコミが飛んできたのも、今では懐かしい思い出です。

年末の30日・31日は、まさにお祭りのような忙しさでした。
お姉さま方の目にはいつも以上に気合いが宿り、
刺身は次々と売れていき、つまを作る手も追いつかないほど。
ぐるぐると機械を回しながら、
「こんなに働けるものなんだなぁ」と思ったことを、そして、意識が遠くなっていたことを、ふと覚えています。

そして今日。
駅ビルの魚屋さんに立ち寄ってみると、
昔とは違い、静かに並ぶパックの切り身がきれいに光っていました。
あの頃のような「らっしゃい!」の声は聞こえません。
でも、タラの切り身を手にしたとき、
高校生の私が立っていた冬の店先が、ふわりと心に戻ってきました。

仕事って、形は変わっても、
どこかにその時々の“あたたかさ”が残るものですね。



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