就業規則は“置くだけ”ではNG?周知義務のポイントを解説

記事
法律・税務・士業全般
 就業規則を作成し、労働基準監督署へ届け出ているからといって、それだけで会社の義務を果たしたことにはなりません。労働基準法106条では、就業規則や労使協定などについて、従業員へ適切に「周知」することが義務付けられています。
 実務では、「社内サーバーに保存しているから大丈夫」「本社には置いてある」と考えている企業も少なくありません。しかし、従業員が実際に自由に閲覧できない状態であれば、周知義務を果たしているとは認められない可能性があります。
 特に近年は、テレワークやクラウド管理の普及により、紙での備え付けだけでなく、電子データによる周知方法も重要になっています。一方で、「どこに保存されているか分からない」「アクセス権限がない」といった運用上の問題から、労使トラブルにつながるケースも見られます。
 本記事では、労働基準法106条における周知義務の内容や対象、具体的な周知方法、実務上の注意点について分かりやすく解説します。

1 周知義務とは何か

 労働基準法106条では、会社に対して、就業規則や労使協定、などを労働者へ周知する義務を課しています。これは、会社内のルールや労働条件を労働者がいつでも確認できる状態にしておくことで、労使間のトラブルを防止する目的があります。
 特に重要なのが、就業規則は「作成して終わり」ではないという点です。たとえ労働基準監督署へ届出をしていても、従業員が自由に閲覧できない状態であれば、法律上の周知義務を果たしているとはいえません。
 また、周知義務の対象は就業規則だけではありません。36協定や変形労働時間制に関する労使協定、賃金控除協定など、労働条件に関係する重要な書類についても周知が必要となります。
 実務では、「本社には置いてある」「管理職だけが閲覧できる」といった運用になっているケースもありますが、労働者が実際に確認できなければ、周知として不十分と判断される可能性があります。そのため、企業には“従業員がいつでも確認できる状態”を整備することが求められます。

2 周知義務の対象となるもの

 周知義務の対象となるのは、就業規則だけではありません。労働条件や職場内のルールに関係する重要な書類については、従業員がいつでも確認できる状態にしておく必要があります。代表的なものとして、以下のようなものが挙げられます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(1)賃金控除協定
 給与から親睦会費や食事代などを控除する場合に必要となる労使協定です。
 法令で認められているもの以外を控除する際には、労働者代表との協定締結が必要になります。
(2)1か月単位の変形労働時間制の労使協定
 1か月以内の一定期間を平均して、法定労働時間内に収める制度です。
 繁閑に応じて労働時間を柔軟に設定できる一方、適切な協定や周知が必要となります。
(3)フレックスタイム制の労使協定
 始業・終業時刻を労働者が柔軟に決定できる制度に関する協定です。
 清算期間や総労働時間など、重要事項を労使協定で定める必要があります。
(4)1年単位の変形労働時間制の労使協定
 1年以内の一定期間を平均して労働時間を調整する制度です。
 繁忙期と閑散期がある業種で活用されますが、対象期間や労働日数等を詳細に定める必要があります。
(5)一斉休憩の適用除外の労使協定
 通常、休憩は事業場ごとに一斉付与が原則ですが、その例外を認めるための協定です。
(6)時間外労働・休日労働に関する労使協定
 いわゆる「36協定」と呼ばれるもので、法定労働時間を超えて労働させる際に必要です。
 締結・届出を行わずに残業や休日労働をさせることは原則できません。
(7)時間単位年休の労使協定
 年次有給休暇を1時間単位で取得できるようにするための協定です。
 育児や通院など、短時間の休暇ニーズに対応しやすくなる制度です。
(8)年休の計画的付与の労使協定
 会社が計画的に年次有給休暇の取得日を指定するための協定です。
 有給休暇の取得促進を目的として、多くの企業で導入されています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――

3 周知方法

 周知方法としては、「常時各作業場の見やすい場所へ掲示または備え付ける方法」「書面を交付する方法」「電子データで確認できる状態にする方法」が認められています。
 例えば、休憩室や事務所への掲示、就業規則ファイルの備え付け、入社時の冊子配布などは代表的な方法です。また、近年では社内イントラネットやクラウドストレージ、チャットツール等を活用し、PDFデータで閲覧可能にするケースも増えています。
 もっとも、単にデータを保存しているだけでは不十分です。従業員が保存場所を知らない、アクセス権限がない、といった状態では、「周知されている」とは認められない可能性があります。
 そのため、企業としては、「従業員が必要なときに、いつでも容易に確認できるか」という視点で周知方法を整備することが重要です。

4 まとめ

 労働基準法106条の周知義務は、単に就業規則や労使協定を作成するだけではなく、従業員がいつでも確認できる状態にしておくことを求めるものです。特に、就業規則や36協定などは、労働条件や働き方に大きく関わるため、適切な周知が重要となります。
 近年では、テレワークやクラウド管理の普及により、電子データによる周知も一般的になっていますが、「保存しているだけ」では足りません。従業員が実際に閲覧できるか、アクセス方法が明確になっているかという点が重要になります。
 実務では、「会社は周知しているつもり」でも、従業員が確認できない状態となっているケースも少なくありません。労使トラブルや是正指導を防ぐためにも、形式だけではなく“実際に見られる状態”になっているかを定期的に確認することが大切です。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す ココナラコンテンツマーケット ノウハウ記事・テンプレート・デザイン素材はこちら