皆さん、こんにちは!通訳のリーです。
私はこれまで、広州・深圳・東莞・佛山・中山など華南エリアで、日本企業のお客様の商談、展示会、工場視察、サプライヤー訪問などに同行してきました。
その中でよく感じるのは、日本から中国へ出張に来る場合、言葉の違いだけでなく、生活習慣、ビジネス習慣、スマートフォンの使い方などにも大きな違いがあるということです。
事前に少し準備しておくだけで、現地での不安や不便をかなり減らすことができます。
今回は、日本人の方が広州・華南エリアへ出張する前に準備しておくとよいことを、実際の通訳同行の経験をもとにまとめてみます。
1. 服装:基本は「Tシャツ+薄手のジャケット」で十分
広州を含む華南地域は、日本の多くの地域と比べても暑く、湿度が高い日が多いです。
イメージとしては、「広州=沖縄」に近い感覚で考えると分かりやすいかもしれません。特に春から秋にかけては、外を少し歩くだけでも汗をかくことがあります。
工場視察や展示会、サプライヤー訪問では、屋外、車内、会議室、倉庫、工場内を何度も移動することも多いため、動きやすく、通気性のよい服装をおすすめします。
日本のビジネス出張では、スーツ上下にネクタイという服装が一般的な場面も多いと思います。
しかし、中国では少し事情が違います。
金融、保険、一部の外資系企業、または非常にフォーマルな業界を除けば、中国では普段からスーツを着て働いている人はそれほど多くありません。工場、メーカー、商社、展示会などの現場では、Tシャツやポロシャツ、シャツなど、比較的ラフな服装の人も多いです。
4月の月末の写真、ほとんどの人はTシャツ
そのため、広州・華南エリアへの出張であれば、基本的にはTシャツや襟付きシャツの上に、できるだけ薄手のジャケットを一枚羽織る程度で十分なことが多いです。スーツを上下でしっかり着る必要はあまりなく、ネクタイも必須ではありません。
中国人は、服装に関してはかなり実用的です。
「暑いなら無理せず涼しい格好をする」
「現場で動きやすい服装をする」
という考え方が強いです。
この点は、日本のビジネス感覚とはかなり違うかもしれません。
もちろん、正式な商談や政府関係、大企業の役員面談などでは、ある程度きちんとした服装を準備しておくと安心です。ただ、工場視察、展示会、サプライヤー訪問では、見た目のフォーマルさよりも、動きやすさと体調管理のほうが大切になる場面が多いです。
また、広州交易会のような大型展示会では、一日中会場を歩き回ることになります。革靴だけでなく、歩きやすい靴を準備しておくと安心です。
2. ネット環境:Global Wi-Fi または Global SIM を準備しておく
中国出張で非常に重要なのが、ネット環境です。
現地では、地図を見る、運転手と連絡を取る、工場の住所を確認する、資料を受け取る、支払いをする、WeChatで連絡するなど、ほとんどのことをスマートフォンで行います。
そのため、日本を出発する前に、Global Wi-Fi または Global SIM を準備しておくことをおすすめします。どちらでも問題ありませんが、出張中に安定してスマートフォンが使える状態にしておくことが大切です。
ただし、Global Wi-Fi や Global SIM は、場所や時間帯によって通信速度が遅く感じることもあります。その場合は、ホテル、訪問先の会社、展示会場、カフェなどで、周囲の人にWi-Fiが使えるかどうか聞いてみるとよいです。中国では、会社やお店のWi-Fiを教えてもらえることもよくあります。
ただし、中国現地のWi-Fiを使う場合、中国のネット環境の制限により、LINE、YouTube、Google、Gmail、Google Driveなどが使えない場合があります。
また、会社やカフェのWi-Fiは、中国の携帯番号でSMS認証が必要な場合もあります。そのため、現地Wi-Fiだけに頼るのではなく、自分で使える通信手段を準備しておくと安心です。
仕事でGoogle、Gmail、Google Drive、LINEなどを使う必要がある方は、VPNの準備も事前に確認しておくとよいです。中国に到着してから慌てて設定しようとしても、うまくいかないことがあります。
3. 中国では WeChat がないとかなり不便
中国で最も重要なアプリの一つが WeChat です。
日本ではLINEが日常的に使われていますが、中国では WeChat がそれに近い存在です。ただし、中国の WeChat は単なるチャットアプリではありません。
仕事の連絡、支払い、資料送付、位置情報の共有、タクシー手配、会食の予約、写真や動画の共有など、ビジネス出張中の多くの場面で使われます。
例えば、現地では次のようなことがよくあります。
工場の担当者が WeChat で所在地を送ってくる。
運転手が WeChat で到着場所を連絡してくる。
商談後に製品資料や見積書を WeChat で送ってくる。
展示会で知り合った担当者と、その場で WeChat を交換する。
会食の写真や会議資料を WeChat で共有する。
WeChatとAlipayでできる事
つまり、中国では WeChat がないと、現地でのコミュニケーションがかなり不便になります。
出張前には、WeChatアカウントを登録し、正常にログインできるか確認しておくことをおすすめします。可能であれば、支払い機能も使えるようにしておくと、さらに便利です。
4. 支払い:中国では現金より WeChat と Alipay(アリペイ)
日本から来られるお客様の中には、出張前に現金を多めに準備される方もいます。
しかし、現在の中国では、日常生活の多くがスマホ決済中心です。コンビニ、レストラン、カフェ、タクシー、自動販売機、小さな売店でも、WeChat や Alipay(アリペイ)で支払うことが一般的です。
現金がまったく使えないわけではありませんが、お店によってはお釣りの準備がなかったり、支払いに時間がかかったりすることがあります。
そのため、中国出張前には、WeChat または Alipay(アリペイ)が使えるかどうかを確認しておくことをおすすめします。
最近は外国人でもクレジットカードを連携して使えるケースが増えていますが、設定には時間がかかる場合もあります。現地に到着してからではなく、日本にいる間に登録や本人確認を済ませておくと安心です。
5. 中国では名刺交換より WeChat 交換が一般的
日本のビジネスでは、名刺交換が非常に重要です。初対面で名刺を交換し、相手の会社名、部署、役職を確認するのは、ごく自然な流れだと思います。
しかし、中国では日本ほど名刺交換を重視しない場面も多く、実際の現場では WeChat 交換のほうがよく使われます。
もちろん、名刺を持っている人もいますし、正式な商談や大企業との面談では名刺を交換することもあります。ただ、展示会、工場訪問、サプライヤー訪問などの現場では、名刺を出さずにそのまま話が始まることも多いです。
中国では、名刺よりも WeChat を交換するほうが実用的だと考えられています。WeChat を交換すれば、その後すぐに会社紹介、製品カタログ、価格表、写真、動画、工場の住所などを送ることができるからです。
日本人の方からすると、最初は少しカジュアルに感じるかもしれません。しかし、中国ではこれが普通です。
出張時には名刺も持っていくと安心ですが、それ以上に、WeChat のQRコードをすぐに出せるようにしておくことが大切です。
6. 会食がある場合は、お酒対策もしておく
中国のビジネスでは、商談後に会食が設定されることがあります。
特に初めての取引先、サプライヤー、工場の責任者と会う場合、食事の場も関係づくりの一部として重視されることがあります。
毎回必ずお酒を飲むわけではありませんし、最近は無理に飲ませる雰囲気も以前より少なくなっています。ただし、地域や相手先によっては、白酒やビールで乾杯する場面があるかもしれません。
中国でもっとも有名な白酒茅台(マオタイ酒)
お酒が苦手な方、体質的に飲めない方は、事前に胃薬や二日酔い対策の薬を準備しておくと安心です。
また、飲めない場合は、無理をする必要はありません。現場で直接断りにくい場合は、通訳を通して、
「体調の関係で控えています」
「明日も重要な予定があるため、今日は少しだけにします」
「医師からお酒を控えるように言われています」
など、雰囲気を壊さない言い方で伝えることもできます。
このような表現を事前に用意しておくと、会食の場でも無理をせず、相手との関係を保ちながら自然に断ることができます。
7. 出張目的と行程は、事前に整理しておく
ここからは、仕事面での準備についてです。
中国出張では、まず今回の目的をはっきりさせておくことが重要です。
新しいサプライヤーを探したいのか。
既存サプライヤーの工場を確認したいのか。
価格や納期を交渉したいのか。
製品仕様を確認したいのか。
設備テストを行いたいのか。
展示会で市場調査をしたいのか。
目的によって、現場で確認すべき内容は大きく変わります。
また、華南地域は都市間の移動が多くなりがちです。広州、深圳、東莞、佛山、中山は地図上では近く見えますが、実際には移動に時間がかかることも多いです。
一日に何社も詰め込みすぎると、移動だけで疲れてしまい、肝心の商談や確認作業に十分な時間を使えなくなります。
工場訪問やサプライヤー視察の場合、個人的には一日1〜2社程度が現実的だと思います。大切なのは、何社訪問したかではなく、必要な情報をきちんと確認できたかどうかです。
8. 専門用語や資料は事前に通訳へ共有しておく
機械、電子部品、自動車部品、建材、医薬設備、LED、ドローン、検査機器などの分野では、商談中に多くの専門用語が出てきます。
例えば、仕様、寸法、精度、歩留まり、不良率、金型、量産、サンプル、納期、MOQ、認証、輸出実績、アフターサービスなどです。
業界によっては、一般的な辞書や翻訳アプリでは正確に処理しにくい専門用語も多く出てきます。例えば、JIS認証、歩留まり、金型開発費、APQP、医薬品GMP監査、木材燻製証明書などは、業界背景を理解していないと、正確に訳すだけでなく、その重要性を把握することも難しい場合があります。
そのため、可能であれば、出張前に製品カタログ、図面、仕様書、会社案内、確認したい質問リスト、過去のメールや見積書などを通訳へ共有しておくことをおすすめします。
事前準備があると、通訳は単にその場で言葉を訳すだけでなく、商談の流れや確認ポイントも理解したうえでサポートできます。
まとめ
日本人が広州や華南地域へ出張する場合、事前に準備しておくべきことは、言語だけではありません。
服装、ネット環境、VPN、WeChat、Alipay(アリペイ)、名刺交換に対する考え方、会食でのお酒、都市間移動、専門用語の準備など、日本とは違う習慣がたくさんあります。
これらを事前に理解しておくことで、現地での不安を減らし、商談や視察に集中しやすくなります。
中国出張は、単に海外で会議をするだけではありません。現地の習慣を理解し、必要な準備をしておくことで、出張全体の効率は大きく変わります。
広州・深圳・東莞・佛山・中山など華南エリアでの商談、展示会、工場視察をご予定の方は、事前準備の段階からお気軽にご相談ください。