依存と未病の関係⑨ ― なぜ快感は何度も欲しくなるのか ―

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ここまで、甘いもの、カフェイン、ジャンクフード、ご褒美、SNS、旅行について書いてきました。

一見すると、それぞれ別の問題に見えます。

しかし、共通しているものがあります。

それは、

快感があるものは、何度も欲しくなりやすい

ということです。

今回は、その背景にある脳の仕組みについて考えていきます。

難しい話ではありません。

「なぜ分かっているのに、また欲しくなるのか」

ここを整理していきます。

■ 人は「快」を覚える

人の脳は、気持ちよかったことを覚えます。

甘いものを食べて楽になった。
コーヒーを飲んで動けるようになった。
買い物をして気分が上がった。
SNSで反応がもらえて嬉しかった。
旅行に行って解放感があった。

こうした体験があると、脳はそれを記憶します。

そして次に疲れたとき、不安になったとき、物足りないときに、

「あれをすれば楽になる」

と反応しやすくなります。

これが依存の入り口です。

■ ドーパミンは「快感」だけではない

依存の話では、よくドーパミンという言葉が出てきます。

ドーパミンは単純に「快感物質」と説明されることがあります。

ただ、実際にはもう少し広く、

期待・報酬・行動の動機づけ

に関わるものと考えた方が分かりやすいと思います。

つまり、

「気持ちいい」

だけではなく、

「欲しい」
「またやりたい」
「手に入れたい」

という方向に人を動かす働きがあります。

■ 欲しいものは、手に入れる前から強くなる

依存で重要なのは、快感そのものよりも、

欲しくなる力

です。

たとえば甘いものを食べる前から、すでに頭の中では甘いもののことを考えています。

コンビニに寄ろうか。
チョコを買おうか。
カフェに行こうか。
今日は頑張ったからいいかな。

この段階で、すでに欲求は動き始めています。

実際に食べた瞬間だけではなく、
「食べる前の期待」も人を動かしているのです。

■ SNSはこの仕組みを刺激しやすい

SNSも同じです。

投稿する。
反応がつく。
いいねが増える。
コメントが来る。

すると脳は、

「また投稿したい」
「また反応が欲しい」

と覚えます。

しかもSNSの場合、反応がいつ来るか分かりません。

すぐ来ることもあれば、少し遅れて来ることもあります。

この「いつ来るか分からない反応」は、人を何度も確認させやすくします。

だからSNSは、ただの情報収集ではなく、欲求を刺激し続ける仕組みになりやすいのです。

■ 甘いものやカフェインも同じ構造

甘いものやカフェインも、ただ味が好きだから欲しくなるわけではありません。

疲れているときに甘いものを食べる。
少し楽になる。
コーヒーを飲む。
少し動けるようになる。

この経験が繰り返されると、体と脳は覚えていきます。

疲れた
甘いものが欲しい

眠い
コーヒーが欲しい

ストレスがある
何か食べたい

このような回路ができていきます。

こうなると、意志だけで止めるのは難しくなります。

なぜなら、ただの好みではなく、状態を戻すための手段として脳が覚えているからです。

■ 快感はだんだん強い刺激を求めやすい

依存で怖いのは、同じ刺激では満足しにくくなることがある点です。

最初は少しの甘いもので満足できた。
でも、だんだん量が増える。
最初はたまにの買い物でよかった。
でも、疲れるたびに買いたくなる。
最初は旅行が特別だった。
でも、次の予定がないと落ち着かなくなる。

これは、その人が弱いからではありません。

刺激で状態を保とうとすると、だんだん刺激が基準になってしまうからです。

■ 依存は「快楽を求める問題」だけではない

ここで大切なのは、依存を単なる快楽の問題として見ないことです。

人はただ楽しみたいから依存するのではありません。

多くの場合、

疲れている。
不安がある。
満たされない。
退屈がつらい。
自分を保てない。

そうした状態が先にあります。

その状態を一時的に変えてくれるものに、依存性が生まれます。

つまり依存は、

快楽の問題であると同時に、状態の問題

なのです。

■ 命縁弁証学で見ると

命縁弁証学では、今の状態や環境を「縁」として見ます。

依存は、縁の乱れを一時的な快で補っている状態です。

流れとしてはこうです。

疲れ・不安・不足感
快を求める
一時的に楽になる
脳が覚える
また同じ快を求める
根本の状態は変わらない

これが未病のループです。

病気とまでは言えない。
でも、判断力や生活の安定は少しずつ揺らされていきます。

■ だから「意志の力」だけでは難しい

依存のある状態で、

「もう食べない」
「もう見ない」
「もう買わない」

と決めることはできます。

でも、疲れや不安や不足感が残っていると、脳はまた同じ快を求めます。

そこで我慢だけをすると、さらにストレスが増えます。

ストレスが増えると、また快が欲しくなります。

だから、意志だけで戦うほど苦しくなることがあります。

必要なのは、欲求を押さえ込むことだけではありません。

欲求が強くならなくても済む状態に整えることです。

■ 欲求は敵ではなく、サインでもある

甘いものが欲しい。
コーヒーが欲しい。
スマホを見たい。
買い物したい。
旅行に行きたい。

こうした欲求をすべて悪いものとして扱う必要はありません。

欲求は、自分の状態を教えてくれるサインでもあります。

疲れていないか。
不安が強くなっていないか。
食事が乱れていないか。
睡眠が足りているか。
日常が苦しくなっていないか。

欲求が強くなったときは、
「自分が弱い」と責めるよりも、
「今の状態はどうなっているのか」と見る方が大切です。

■ まとめ

依存は、単に快楽を求める問題ではありません。

快を覚え、期待し、また欲しくなる脳の仕組みがあります。

甘いもの、カフェイン、SNS、買い物、旅行。

これらは一時的に気分を変えてくれます。

しかし、根本の疲れや不安や不足感が残ったままだと、また同じ刺激を求めやすくなります。

大切なのは、欲求を根性で押さえ込むことではありません。

欲求が暴れなくても済む状態に整えることです。

依存を責めるのではなく、
依存が起きている状態を見ていく。

そこから、未病を整える道が始まるのだと思います。

■ 次回予告

次回は、ここまでの話を踏まえて、

依存はどうすれば抜けられるのか

について考えていきます。

占い、健康法、ダイエット、SNS。

人は不安なとき、外に答えを求めやすくなります。

でも本当に必要なのは、答えを増やすことではなく、
自分で判断できる状態を取り戻すことです。

次回は、依存から抜けるための方向性について書いていきます。
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