死別して10年…心に灯がともった日

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※今回も、実際にご相談いただいた方のお話をもとに、許可を得て内容を再構成しております。
「同じように悩んでいる方の助けになれば」と願うご本人の気持ちを込めて、綴らせていただきます。

夫を亡くしてから、もう10年が経ちました。
あのとき私は48歳。
まだ若いねと周りには言われたけれど、私にとっては突然、時間が止まったような日々の始まりでした。

毎日をこなすことで精一杯で、泣くことすら後回しにしていた気がします。
そのうち、感情を見せることにどこかでブレーキをかけて、
「大丈夫そうに振る舞う自分」が、だんだん“当たり前”になっていきました。

子どもたちも巣立ち、仕事も落ち着いて、ようやく自分の時間が戻ってきたと思ったある春の日。
私はふと思い立って、ひとりで桜を見に行きました。
夫と最後に一緒に歩いた川沿いの道。
ずっと避けていたその場所に、なぜか今年は、行ってみようと思ったんです。

満開の桜の下を歩いていたら、すれ違った中年の男性が、
立ち止まってこう言ったんです。

「いい日ですね。風に散る花びらが、今年は特にきれいだ」

見知らぬ人のひと言なのに、不思議と涙が出そうになりました。
この10年間、桜を見ても、風を感じても、心が動くことがなかったのに。

「本当ですね」とだけ返して、その場を離れましたが、
そのあとずっと、その人の言葉が耳に残っていたんです。

何日かして、たまたま入った図書館の閲覧スペースで、再びその男性を見かけました。
本の貸出カウンターの前で、彼もこちらに気づいたようで、軽く会釈してくれました。

そのあと偶然隣同士になり、静かに読書をしていたのですが、
帰り際に彼がこう言いました。

「桜の人、ですよね。覚えてます。あの日、話せて嬉しかったんです」

不思議と、怖さも気まずさもなく、
ただ“会話をしてもいい”という気持ちが自然に湧いてきて、
私もゆっくりと、「私もです」と答えました。

それがきっかけで、たまに図書館で顔を合わせるようになり、
会話をするわけでもないのに、会えるとほっとするようになっていきました。

あるとき、彼が本を閉じて私にこう言ったんです。

「人って、変わらないようで、ふとした拍子に変わるものですね。僕も、10年前に妻を亡くしてから、本ばかり読んでました。今日みたいな日が来るなんて、思ってませんでした」

その瞬間、私の胸の奥に、あたたかい灯が灯ったような感覚がありました。

恋とか、再婚とか、そういう言葉ではまだ表せないけれど、
誰かと静かに時間を分け合うことの尊さを、初めて“嬉しい”と思えたんです。

あの日から、私はまた、春が楽しみになりました。

もし今、あなたが大切な人を失って、心に鍵をかけているなら、
無理に開こうとしなくてもいい。
でも、ふと風が吹いたとき、鍵がゆるむ瞬間があるかもしれません。

そのとき、あなたの中にもきっと、そっと火が灯ります。
それは、誰かのためではなく、あなた自身のために灯るものです。
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