とある相談対応をしていて、かなり嫌な思いをしたので、教訓がてら残しておきます。
他の専門家も絡むような内容だったのですが、依頼者目線がすっぽ抜けているなあ、と思った話。
「問題ありません」だけでは、依頼者は判断できない
依頼者がやりたいことがある。あるいはやりたくないことや、手間がかかってしまうことがある。
そんなときに、
「法律上そうなっています」とか
「問題ありません」とか
「そのまま進めます」とか
そんな、それっぽい結論じみた言葉だけで話を進めようとする人。
なぜ、とか、根拠を教えて、とか
私が(依頼者を介して)聞いても、一向に具体的な理由を説明するような返答をしてくれない。
こっちの気分は「犬のおまわりさん」です。
理由を聞いても出てこない、根拠を聞いても出てこない
しまいには、「資格に関わるので」と。
そんなことを言っているのではなくて、どうしてそうなったのかの説明責任を果たしてほしいだけなんですけど、、
もちろん、制度上の結論を出すことは大事です。
法律、制度、手続きのルールを外してはいけない。
そこは大前提です。
ただ、依頼者が知りたいのは、結論だけではありません。
本当に知りたいのは、
・なぜその結論になるのか
・他に選択肢はないのか
・それぞれ何が違うのか
・何を優先して判断すればいいのか
・後から困らない整理なのか
という部分です。
ここを飛ばして、結論だけで終わらせるのは、説明としてかなり足りないと思っています。
専門家なら、なおのこと。
依頼者の状況に当てはめるとどうなるのか。
なぜその整理が自然なのか。
別の選択肢を取ると、どこに影響が出るのか。
税務、社会保険、扶養、会社運営を並べて見たときに、どの整理が後から説明しやすいのか。
そこまで整理して、初めて依頼者は判断できます。
逆に言えば、根拠も理由も示されないまま「問題ありません」と言われても、依頼者は判断できません。
専門家が大丈夫と言っているから大丈夫なのだろう。
そう思って進めるしかなくなります。
でもそれは、何も安心しているわけではなくて。
依頼者は納得しているのではなく、ただ単に判断材料を渡されていないだけなんです。
「自分の領域だけ見れば問題ない」が積み重なる怖さ
今回は、社会保険・扶養・役員報酬が絡む話だったのですが、
こういう話は、ひとつの制度だけを見れば済む話ではありません。
社会保険の資格喪失。
扶養認定。
役員報酬。
源泉所得税。
会社側の給与処理。
本人側の負担。
今後の会社運営。
いくつもの制度や判断が絡みます。
だからこそ怖いのは、
「自分の領域だけ見れば問題ない」
が積み重なることです。
各制度だけ見れば、問題ないように見えることもあります。
でも、依頼者からすると、
「結局、全体として何を優先すればいいのか」
「どの選択が一番自然なのか」
「あとから説明しやすい形になっているのか」
が分からないままです。
制度上アウトではないことと、依頼者が納得して選べることは違います。
止めていた手続きを進めるのは、説明不足では済まない
そして今回、特に問題だと感じたのは、単なる説明不足では済まない点です。
こちらからは、いったん手続きを止めてほしいという意向を伝えていました。
また、条件が合えば手続を延期できる、という別の選択肢も示されていました。
(個別の案件なので、すごくあいまいな言い方をします、すみません)
つまり、その時点では、
・手続を進める
・条件を達成して手続を延期する
・別の確認事項があったので、そちらの状況を見ておく
・第三の選択肢も含めて整理する
などなど、やりとりを見ていると、まだ検討中の段階だなーと感じていました。
少なくとも私の方では、
起こりうる可能性と、各選択肢のメリットデメリットをお伝えして、
依頼者に判断してもらわないとまだ進めないなと思っていました。
それにもかかわらず、他の専門家側が、
依頼者側の最終判断を待たずに、手続きを一方的に進めて完了させてしまった。
これは、かなりまずい進め方だと思います。
というより、専門家やプロの仕事として、これはひどすぎる、と思っています。
手続きが制度上できるかどうか以前に、依頼者がまだ判断していないことを、専門家側で勝手に既成事実化してしまった。
依頼者が止めてほしいと言っている。
別の選択肢も検討対象になっている(なんならその専門家から提示されている)。
その選択によって、税務・社会保険・扶養・会社運営への影響も変わる。
その状況で、依頼者の判断を待たずに手続きを完了させるのであれば、それはもはや単なる説明不足ではありません。
専門家としての仕事の放棄ですらある。
依頼者の意思確認を軽く見ていると言われても仕方ないと思います。
依頼者の判断権を、専門家側が勝手に握るな
判断材料を整理し、選択肢を示し、リスクを説明する。
何を優先するかを一緒に確認する。
そのうえで、依頼者が納得して選べる状態を作る。
そこまで含めて、専門家の仕事だと思っています。
にもかかわらず、依頼者が迷っている段階で、しかも一度ストップをかけている手続きを、専門家側の判断で先に進めてしまう。
これは、プロの進め方ではないと思います。
「手続きできるかどうか」だけで進めるなら、依頼者の判断はいらなくなってしまう。
でも、そうじゃないはず。
士業が扱っているのは、単なる書類ではありません。
依頼者の会社、生活、負担、今後の判断です。
だからこそ、制度上の処理を進める前に、
・依頼者は何を優先したいのか
・他の選択肢は本当にないのか
・それぞれの影響は説明されているのか
・他の観点の影響も含めて納得しているのか
・後から説明できる整理になっているのか
を確認する必要があります。
それを飛ばして「進めました」と言われても、依頼者は安心できません。
むしろ、不信感しか残りません。
専門家がやるべきことは、判断材料を渡すこと
「法律上そうなっています」しか言えない専門家は、
会社でいうところの「前任者がそうしていたので」と言っている人と、あまり変わらないと思っています。
普通に、会社でもよくない仕事の進め方だと理解されています。
そこを言語化して、依頼者が判断できる状態にする。
少なくとも、私はそういう進め方をしたいし、
それが私のやるべき仕事だと思っています。
専門家同士で話が通じていることと、依頼者が納得していることは別です。
むしろ大事なのは後者です。
「問題ありません」で終わるより、
「なぜ問題ないのか」
「他の選択肢と比べて、なぜそれを選ぶのか」
まで分かった方が、依頼者は安心できます。
依頼者の判断権は、依頼者のものです。
専門家が勝手に握っていいものではないのですよ。