その仕事、本当に専門家がやる必要がありますか?

その仕事、本当に専門家がやる必要がありますか?

記事
法律・税務・士業全般
経理、労務、採用、申請業務、営業事務。
会社には、それぞれの仕事に詳しい人がいます。
経験があるから判断できる。
ミスに気づける。
例外にも対応できる。
だから、その人に仕事を任せる。
これはとても自然なことです。
でも最近、いろいろな業務を見ながら、少し気になることがあります。
その人がやっている仕事の「全部」が、本当にその人でなければできない仕事なのでしょうか。
専門家にしかできない判断と、
誰かがやらなければならないから、その人がやっている作業。
この2つが、ひとまとまりになっていないでしょうか。

例えば、給与計算を考えてみる
給与計算には当然、知識や経験が必要です。
勤怠の扱い、残業、手当、控除。
簡単に機械へ任せて終わり、という仕事ではありません。
でも給与計算担当者の仕事を朝から見てみると、実際には「給与を計算する」以外の作業もかなりあります。
各拠点から勤怠データを集める。
紙のタイムカードを確認する。
Excelの形式を整える。
入力漏れを探す。
数字がおかしければ担当者へ連絡する。
返事を待つ。
修正されたデータをもう一度確認する。
給与ソフトへ入力する。
結果を別の管理表へ転記する。
ここで、一度分けて考えてみます。
給与について判断する仕事
そして、
給与について判断できる状態まで情報を整える仕事。
これは、本当に同じでしょうか。

助成金や申請業務でも同じことが起きる

現在、私は社会保険労務士の方と、助成金申請業務を効率化する仕組みを考えています。
そこで改めて感じたのも、同じことでした。
助成金を扱うには専門知識が必要です。
制度の要件を確認し、
企業の状況を見て、
対象になる可能性を判断する。
ここは専門家の仕事です。
でも、その判断にたどり着くまでには、
企業へ質問する。
回答を待つ。
必要な書類を案内する。
提出されたか確認する。
不足していたら連絡する。
届いた資料を整理する。
入力内容と資料を照合する。
申請書へ転記する。
進捗を管理する。
という仕事があります。
私はここを見ていて、
専門家が専門家でなくてもできる仕事に、かなり時間を使っていることがある
と感じました。

もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
今までは、それが一番確実な方法だったからです。
でも今は、少し違う方法を考えられるようになっています。
「自動化できるか」ではなく「仕事を分けられるか」
業務改善の話になると、
「これはAIでできますか?」
「自動化できますか?」
という質問になりがちです。
私は、その前に一つ考えた方がいいと思っています。
その仕事を、もっと細かく分けられないか。
例えば一つの仕事が、
情報を集める
内容を整える
不足を確認する
専門家が判断する
結果を入力する
関係者へ連絡する
進捗を記録する
という流れになっていたとします。
この中の「判断」は、人がやった方がいいかもしれません。
でも、
情報を集める。
形式を揃える。
不足を見つける。
定型的な連絡を作る。
進捗を記録する。
こうした部分まで、毎回人がゼロからやる必要があるのか。
ここには考える余地があります。

実は、一番時間を使っているのは「仕事と仕事の間」かもしれない

最近、この部分を私は「接続部分の摩耗」と考えるようになりました。
会社には、すでにいろいろな道具があります。
Excel。
会計ソフト。
給与ソフト。
顧客管理システム。
メール。
LINE。
Googleスプレッドシート。
Notion。
それぞれ便利です。
ところが、
メールで届いた内容をExcelへ入力する。
Excelの数字を給与ソフトへ入力する。
給与ソフトの結果を別の表へ記録する。
スプレッドシートを見ながらLINEで催促する。
システムAを見ながらシステムBを更新する。
という仕事が残っています。
つまり、
システムはあるのに、システムとシステムの間に人が立っている。
人が接着剤になっているわけです。
そして、この接続部分は意外と疲れます。
転記する。
確認する。
間違っていないかもう一度見る。
返事が来たか覚えておく。
ステータスを更新する。
一つ一つは小さい仕事です。
だから改善対象として見逃されやすい。
でも毎日、毎月積み重なると、かなり大きな時間になります。
新しい人を採用する前に、一度だけ分解してみる
忙しくなれば、人を増やす。
それは当然必要なこともあります。
ただ、例えば新しく週20時間働いてもらう人を採用しようとしているなら、一度だけ考えてみてもいいと思います。
その20時間の中身は何でしょうか。
20時間すべてが、人の経験や判断を必要とする仕事でしょうか。
もし、
5時間が転記。
3時間が資料確認。
2時間が定型連絡。
2時間が進捗更新。
だったとしたら。
そこを減らすことができれば、
新しく入った人は、もっと価値のある仕事に時間を使えます。
これは、
人を減らしましょう
という話ではありません。
逆です。
人に、人にしかできない仕事をしてもらうための話です。

AIに任せなくてもいい

もう一つ大切なのは、すべてをAIに任せる必要はないということです。
紙から数字を読むならOCR。
Excelの繰り返し処理ならVBAやPython。
複数システム間ならAPI連携。
情報収集ならWebフォーム。
定型処理なら自動化。
文章を整理する必要があるところだけAI。
実際には、その仕事に合った道具を選べばいい。
場合によっては、新しいシステムすら必要ありません。
Excelを少し整理するだけで十分なこともあります。
入力フォームを一つ作るだけで、メールの往復が大きく減ることもあります。
重要なのは、
「AIを入れたい」から始めないこと。
まず、
「人がどこで時間を使っているのか」
を見る。
それから、
「ここは本当に人がやる必要があるか」
を一つずつ考える。
その順番です。

明日、一つだけ仕事を見てみてください

大げさな業務改革を始める必要はありません。
明日、職場で一つだけ見てみてください。
誰かがExcelから別のシステムへ数字を入力していないか。
メールで届いた情報を管理表へ転記していないか。
毎月同じ確認をしていないか。
資料が届いたか、人が覚えて確認していないか。
「○○さんに聞かないと分からない」という仕事がないか。
そして、その作業を見つけたら、
すぐに
「AIで自動化しよう」
と考えなくても大丈夫です。
まず、
これは本当に、最初から最後まで人がやる必要がある仕事なんだろうか。

と考えてみる。
それだけで十分です。
仕事を10個に分けたら、
7個は人がやる必要があるかもしれない。
9個必要かもしれない。
でも、もし2個だけ仕組みに渡せたら。
毎月繰り返す仕事なら、その2個はずっと減り続けます。
そして、その積み重ねが、
「忙しいからまた人を増やさないと」
だけではない選択肢を作ってくれます。
私自身も最近、いろいろな現場の業務を見ながら、この「仕事と仕事の間」にある小さな摩耗を意識するようになりました。
大きなDXより先に、
毎日誰かが当たり前のようにやっている、あの一手間。
そこに、まだ減らせる仕事が隠れているのかもしれません。
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