はじめに:インバウンド復活とZ世代の変化
コロナ禍を経て、訪日中国人観光客の数は徐々に回復し、再びインバウンド市場が動き出しています。旅行代理店や航空券予約に頼る時代は終わり、今の中国人観光客(特にZ世代・ミレニアル層)は、自らSNSで情報を集め、旅先での行動を自分でデザインしています。
彼らが注目するのは、単に「安く買える商品」や「有名な観光地」ではなく、SNSで話題になっている場所、リアルな体験、感性に合ったブランドや空間です。
この層に届くマーケティングを実現するには、彼らが実際に使っているSNSの中に“情報として存在する”ことが前提になります。
なぜ「RED × WeChat」が必要なのか?
訪日中国人観光客をターゲットにしたインバウンド施策がうまくいかない日本企業には、よく見られる2つの課題があります。
1. 従来の広告に依存しすぎている
多くの中国人観光客は訪日前にSNS(特にRED)で「買うもの」や「行く場所」を決めています。そのため、日本に来てから店頭で広告を見せても、そもそも「情報が届いていない」状態なのです。
2. 翻訳コンテンツでは共感されない
言葉が通じればよいという問題ではなく、中国の若者が共感する感性や“流行の文脈”に合っていないと響きません。ただ機械翻訳されたカタログやポスターだけでは、心が動かないのです。
この2つの課題を補い、訪日前→訪日中→訪日後まで一貫したコミュニケーションを設計できるのが、RED(小紅書)とWeChat(微信)を組み合わせたSNSマーケティング戦略です。
【訪日前】REDで「行きたい・買いたい」をつくる
RED(小紅書)とは?
・月間アクティブユーザー:3億人以上
・主要ユーザー:20~30代の女性(特にZ世代)
・特徴:商品購入や旅行先の情報を“検索”で調べるSNS
⏫「スギ薬局」公式アカウント
【具体的な運用方法及びコンテンツ戦略】
1. インフルエンサー(KOL/KOC)との連携
REDは、口コミサイトのように使われることも多く、消費者目線に立った投稿が非常に重視されるプラットフォームです。そのため、影響力のあるKOL(インフルエンサー)や、一般ユーザーに近いKOCと連携し、リアルな体験をもとにした投稿をしてもらうことが効果的です。KOLは拡散力、KOCは共感力に強みがあり、いずれも購買行動のきっかけになります。商品の提供やクーポン配布などを通じて、広告感を抑えた自然で信頼性のある情報として広げていくことがポイントです。
KOL「波波日本」アカウント(30.8万フォロワー)
KOC「Kakin」アカウント(約1.1万フォロワー)
2. ストーリー性のある体験投稿を仕掛ける
REDでは、ただ商品を紹介するだけの投稿よりも、使うシーンや背景にストーリーがある投稿の方が、エンゲージメント(閲覧・保存・コメント)が高まる傾向があります。ユーザーは“何を買うか”だけでなく、“どんな時に・なぜその商品を使うのか”という体験や文脈に共感するからです。
例えば、以下のような切り口が有効です:
・日常の中に自然に登場する様子を描く
例:バッグの中身紹介、朝のルーティーン、旅先での使用シーンなど
・悩みを解決するアイテムとして紹介する
例:乾燥肌対策、寝不足対策、ストレス軽減グッズなど
・「これだけは手放せない」という視点で紹介する
例:投稿者の“愛用アイテム”として紹介することで説得力を持たせる
・複数の商品を組み合わせて紹介する
例:「旅行の持ち物セット」「夜のスキンケアルーティーン」など、利用シーンをまとめて提案
・Before/Afterの変化を見せる
例:使用前と使用後の肌の状態、部屋の片付けビフォーアフターなど、視覚的な変化が伝わりやすい
こうしたストーリーのある投稿は、検索に強く、保存率も高く、結果的に購買にもつながりやすい傾向があります。テーマとしては「日本で絶対に買いたいお土産」「初めての日本旅行で便利だったもの」など、訪日文脈とも相性の良い切り口がおすすめです。
3. UGC(ユーザー投稿)を増やす仕組みを作る
・サンプリング+クーポンを提供し、投稿を促す
・投稿者をWeChatへ誘導し、関係構築へとつなげる
【訪日中】WeChatで接点をつくり、購買を促す
WeChat(微信)とは?
・月間アクティブユーザー:13億人以上
・中国人の生活インフラ(チャット・ニュース・決済・ショッピングすべて対応)
・特徴:日本でいうLINEに近い存在で、顧客との1対1チャットによる個別対応が可能なSNS/コミュニケーションツール
【具体的な活用方法】
1. 私域流量(プライベートトラフィック)の活用
WeChatでは、フォローした顧客と直接コミュニケーションが取れるため、外部プラットフォームのアルゴリズムに左右されず、自社主導のマーケティングを展開できます。この“私域”を広げていくことで、より継続的で効果的な顧客接点を築くことが可能になります。
2. 公式アカウントでクーポン配布&情報提供
⏫「無印良品」WeChat公式アカウント
WeChatの公式アカウントを開設することで、商品情報やクーポンの配信に加え、ブランドのストーリーやフォロワー限定の特別情報を届けることが可能になります。こうした継続的な情報発信により、顧客との関係を自然に深めていくことができます。
3. QRコードを使った店頭誘導
・店内に「WeChat追加で割引」案内を設置
・ミニプログラムへ誘導して、その場で購入や予約を完結
4. グループチャットで即時対応
・店舗スタッフがWeChatグループを運営し、商品紹介やセール案内を配信
・メンバー間のクチコミ効果も期待できる
【訪日後】WeChatで関係を継続し、再来日・越境ECにつなげる
・WeChatでクーポンや新商品情報を配信し続けることで、「また日本に行ったら買いたい」をキープ
・ミニプログラムを使えば、訪日後の越境EC購入もスムーズに提供可能
・REDで得た印象 → WeChatでの接点 → ファン化 → UGC投稿という循環が理想
「マツモトキヨシ」WeChat公式アカウント(クーポン)
「マツモトキヨシ」WeChat公式アカウント(ミニプログラム|越境EC)
「マツモトキヨシ」WeChat公式アカウント(ミニプログラム|越境EC)
RED × WeChatの連携モデル(実践フロー)
■ 訪日前(RED)
・KOLによる「日本で買うべき○○」の投稿
・旅行前の検索需要をキャッチ
・例:「東京で絶対買うべきコスメ3選」「成田空港で買える人気お土産」
■ 訪日中(WeChat)
・店頭でWeChatフォローを促進(QRコード提示)
・クーポン配布、ミニプログラムで購入完了まで誘導
・スタッフによる簡易チャット対応も有効
■ 訪日後(WeChat)
・フォロワーへの定期的な情報配信(新商品・セール情報)
・越境ECへの誘導(ミニプログラムやリンク連携)
・フォロワーがREDへUGC投稿 → 次の新規獲得につながる好循環へ
まとめ|インバウンド戦略の成功は、SNSの“流れ”を設計できるかどうか
かつてのように「中国語のPOPを置く」「免税対応をする」だけでは、もはや不十分です。今の訪日中国人は、日本を“暮らすように旅する”感覚で楽しみ、SNSでの情報収集や体験価値を重視する時代に入っています。
REDとWeChatを正しく活用すれば、訪日中の「一度きりの購買」で終わらず、再訪問、越境ECでの購入、さらにクチコミ投稿へとつながる関係性を築くことができます。
ご相談受付中
・自社の商品をREDに投稿してほしい
・訪日中国人にWeChatでクーポンを届けたい
・越境ECやリピーター施策を設計したい
そんな方は、ぜひお気軽にご相談ください。実例・KOLリスト・運用代行まで、貴社の状況に合わせたご提案が可能です。