青の教室 蒼真の15 第9章 合格発表
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第9章 合格発表
一月の終わり。
空は薄い冬の青で、
風は冷たく、乾いていた。
蒼真は、
スマホを握りしめたまま、
家の玄関で立ち尽くしていた。
(……来る)
サッカー名門校の専願入試。
結果が、今日届く。
胸の奥がざわついていた。
怖さと期待が混ざり合い、
落ち着かない。
(やりきった……はずだ)
でも、
結果を見る勇気が出なかった。
そのとき――
スマホが震えた。
(……来た)
画面に表示された文字を、
蒼真はゆっくり開いた。
「合格」
その瞬間、
胸の奥の何かがほどけた。
(……受かった)
息が、
ゆっくりと深く吸い込めた。
(俺……受かったんだ)
震える指で、
母に画面を見せた。
母は、
しばらく黙っていた。
そして――
目に涙を浮かべた。
「……よかった。
本当によかった」
その声は、
いつもの“管理”の声ではなく、
ただの“母”の声だった。
蒼真は、
胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。
(母さん……)
母は続けた。
「あなたの選んだ道で……
ちゃんと結果を出したのね」
蒼真は、
小さくうなずいた。
(俺の道……間違ってなかった)
その確信が、
胸の奥に静かに灯った。
***
その日の夕方。
青の教室に入ると、
友彦が静かに微笑んだ。
「蒼真。
おめでとう」
「……ありがとうございます」
友彦は、
蒼真の目をまっすぐ見て言った。
「これはね、
“逃げなかった人”の結果だよ」
蒼真は、
胸の奥がふっと温かくなるのを感じた。
(逃げなかった……)
怖さを抱えたまま、
走った。
その事実が、
今日の空を少しだけ明るくしていた。
***
紗月が、
静かに近づいてきた。
「蒼真くん……
本当に、おめでとう」
「ありがとう」
紗月は、
少しだけ目を細めた。
「今日の蒼真くん……
なんか、すごく軽いね」
「軽い……?」
「うん。
影が薄くなって、
光が強くなった感じ」
蒼真は、
胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。
(影が……薄くなった)
紗月は続けた。
「蒼真くんの15歳、
今日、ひとつ大きく進んだね」
その言葉は、
冬の風よりも温かかった。
***
翌日。
蓮の受験結果が出る日だった。
蒼真は、
落ち着かない気持ちでスマホを握っていた。
(蓮……どうだったんだろ)
そのとき、
スマホが震えた。
蓮からだった。
「受かった!!!」
蒼真は、
思わず声を上げた。
「よっしゃ……!」
胸の奥が、
一気に明るくなる。
(蓮……やったな)
すぐに返信した。
「おめでとう。
お前なら絶対いけると思ってた」
蓮からすぐに返事が来た。
「お前が走ったから、
俺も走れたんやで」
蒼真は、
胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。
(蓮……)
蓮は完璧じゃない。
怖さを抱えていた。
でも、
それでも走った。
(俺たち……同じなんだ)
その気づきが、
胸の奥の影をさらに薄くした。
***
夕方。
青の教室に蓮が飛び込んできた。
「先生! 受かりました!」
「おめでとう、蓮くん」
蓮は、
蒼真の方を向いた。
「蒼真、ほんまにありがとうな」
「なんで俺に礼言うんだよ」
「お前が“怖さ越えた”って聞いて……
俺も越えなあかんって思ったんや」
蒼真は、
胸の奥がふっと揺れるのを感じた。
(俺の……影と光が、
蓮にも届いてたのか)
紗月が、
静かに言った。
「二人とも……
本当に、すごいよ」
その声は、
冬の空をひらくように柔らかかった。
***
帰り道。
空は薄い金色に染まっていた。
蒼真は、
胸の奥に静かな光を感じていた。
(俺の15歳……
今日、確かにひらいた)
影はまだある。
でも、
その影はもう怖くなかった。
影があるから、
光が分かる。
光があるから、
影が優しくなる。
風が頬を撫でた。
(俺は……走れる)
その確信が、
胸の奥に静かに灯った。