どんなことでも、被害に遭っている以上、些細なことでも聞いて欲しい。
きっと誰もがそう思っています。
そして被害に遭われた方にとっては一大事で、きちんと対応してもらいたいことのはずです。
しかし、現実にはたくさんの相談が押し寄せてくる中で、全ての話を親身に聞いてもらうことは不可能な状態になっています。
ですので、相談をするときには少しポイントを押えながら話をする方が良いかと思います。
こちらでもお話しさせていただいたように、順序立てて話をする場合と比べ、感情面から話を持っていくと話を聞いてもらいにくくなります。
というのも、話を聞いた人にとって「状況がよく分からず、緊急性、重要性のある要件か分からない」からなんです。
警察を含め、多くの機関では「緊急性、重要性」を軸に業務を振り分けています。
お仕事をされている皆さんもきっと、同じように振り分けて仕事をされていると思うのですが、それと全く同じなんです。
つまり、相談するときには「緊急かつ重要」と思ってもらえるよう伝えると、訴えた内容に対して親身になってもらえる度合いが上がります。
直近あった、友人Aの例をご紹介します。
Aさんは一軒家に住む方で、自宅のフェンスの端を意図的にへし折られる被害に遭いました。
もちろんフェンスなので堅い針金なのですが、毎日毎日誰かがじわじわと力業で折り曲げていったようで、最終的には45度くらい曲がっているような状態になりました。
Aさんは、人の家の物を壊すなんて許せない! と怒っていました。
ごもっともです、Aさんの家は何も悪くないのにフェンスをへし折られるのは納得できないと思います。
それも毎日少しずつ曲がっていったそうです。
話を聞いていると、Aさんの家は道路に面した角の家で、フェンスのあるあたりにはちょうど横断歩道がありました。
恐らくですが、信号待ちをしているのか、もしくは誰かと話していて別れ際の立ち話でもしているのかで人が集まって、話し込んでしまうような位置に家が建っているようです。
「フェンスを折ったやつを捕まえたい!」とAさんは豪語していたのですが、私はこの話を聞いて難しいなと思いました。
というのも、被害がそこまで大きくないからです。
フェンス全体がなぎ倒されているとか、家の外壁にまで被害が及んでいるのであれば大きな被害になりますが、フェンスの端が折れているくらいだと、そのために捜査しましょう! と乗り気になっていただくのは厳しいのではないかと感じました。
もちろんAさんにとっては許せないことですが、Aさんにとって許せないことと、警察が捜査に乗り出す事案かどうかは本当に申し訳ないのですが別物です。
そして恐らく、日中に折られている様子がないという話だったので、夜の時間帯に毎日誰かとちょっとしゃべている時に、手持ち無沙汰で曲げたのではないかと思いました。
そんなことをする人……単純に学生くらいしか思い浮かびません。
このまま警察に行っても、Aさんは悪くないのに「そのくらい大丈夫じゃないですか」とでも言われかねないと思いました。
そこで少し、言い方を変えてもらうよう伝えました。
「何者かが、毎日家周辺で長時間居座っているようです。うちには娘がいて、娘の部屋の近くあたりなので心配です。その証拠にフェンスが毎日少しずつ折られています。娘も、話し声がずっと聞こえてくる日があってビックリしたと言っています」
とんちじゃないか! と言われるかもしれませんが、嘘は言っていませんし、本当に娘さんも怖いと思っているという話が出ていました。
フェンスを折られた事案だと緊急性があまりなさそうです。
しかし、娘さんの不安がもしストーカー的なものだったら? と考えたら緊急性は高いと思いませんか?
そんなわけで、上記のような説明で警察へ伝えたところ、それでもやや渋い反応はされたものの被害届を提出して受理してもらい、指紋採取にも来られたようでした。
さらには数ヶ月毎日巡回を行っていただいたようで、その間にとうとうフェンスへの被害もなくなったそうです。
折られたフェンスは直りませんし、犯人が見つかったわけではないようですが、それでも被害が止まったので良かったなと思いました。
また警察にも対応いただいて巡回までしていただいたのは、かなり効果があったのかなと感じました。
このように、緊急性、重要性もさることながら、どこに問題点があるのかがポイントだと思います。
今回の話ですと、一見すると「物が壊された」ことが一番分かりやすい被害なのですが、本当は家の付近に毎日誰かが長く居続けていることの方が物騒な話で警戒するべき事です。
何かが起こったときには、少しだけその背景にもスポットを当ててみて下さい。あなたにとっての最適解が、被害相談以外にも見つかるかもしれません。
困った時にはぜひご相談ください。