物語 第一話「思い出ベンチ」

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小説
思い出ベンチ
   皆さんには思い出の場所がありますか?沢山ある? 
   そうでしょうが・・・・・・
   1番の思い出の場所を思い浮かべて下さい。
   この物語は、そんな1番大切な思い出の場所のお話です。
   ではお楽しみ下さい。

   僕は、ため池の側にある、公園の古ぼけたベンチ。
   もう何十年もここで、多くの人達のお話を聞いています。
   その中でも、とても素敵な老夫婦の思い出を、お話したいと思います。
   あれは、5年前の今頃、そう桜も散りかける4月10日でした。
   老夫婦が僕に近付き。

奥様「あなた、お疲れでしょう。このベンチで少し休みましょう」
ご主人「そうだな、久しぶりに歩いたからね。休もうかね」
   老夫婦がゆっくり腰をおろした時、なんとも優しく温かい感触に
   僕の古傷も癒された事を覚えてます。

奥様「あなた、私達が初めて出逢った時の事を覚えてらいっしゃる?」
ご主人「覚えているとも」
奥様「このベンチでしたね」
ご主人「ああこのベンチだ」
   僕は思いを巡らしましたが? 思い出せませんでした。

ご主人「もう60年も前になるかな」
奥様「そうですとも、60年前の今日、桜が散り始めた4月10日です」

僕「あのときの2人だ」

   60年前の記憶の中に、この老夫婦らしき面影を見つけました。

奥様「私が腰かけて本を読んでいると、貴方がここいいですか? って
   ベンチは他にもあるのに、何故このベンチなんでしょう? って不思議
   でした」
ご主人「他のベンチの桜が、もうひとつ好きになれなくてね」
奥様「あら、そうだったのですね? てっきり私がお目当てだとばっかり思っ
   ていましたのに、聞かなければよかたわ ホホホホ」
ご主人「ハハハハ 、桜の下で本を読む君も魅力的だったよ」
奥様「無理なさらなくてもいいですのよ? もう昔の事ですから」
ご主人「結局一言も話さずに、その日は別れたんだったね」
奥様「あら、お話したこと、忘れてらっしゃるのね」
ご主人「・・・・・・話をしたかな?」
奥様「あなた、私にこうおっしゃったのよ。良い天気ですねって」
ご主人「そうだったかな?」
奥様「そうですよ。私は良く覚えていますよ。本当に真っ青な綺麗な
   お空でしたから」
ご主人「綺麗な青空だったな」
奥様「あの日から、私は毎日同じ時間に、このベンチに座っておりましたの
   よ」
ご主人「よほどこの場所が気に入っていたんだね」
奥様「違いますよ、本当に気のつかない方ですね」
ご主人「ん? どう言うことかな?」
奥様「貴方が、またやってくるかも知れませんでしたから」
ご主人「そうだったのか、それで、あの時も君はここに座っていたのか、
    偶然じゃ無かったんだな」
奥様「偶然じゃありませんよ。ホホホ そろそろ戻りましょうか、また来年も
   このベンチで昔話でもしましょうね」
ご主人「そうだな・・・・・・僕もがんばるよ」
   その翌年も綺麗に桜は咲いていました。
   そして4月10日を向かえました。
   その日も真っ青な青空が桜の枝の隙間から見えていました。

奥様「あなた、今年も綺麗に桜が咲きましたね。座りましょうか」
   僕はなんとも言えない気持ちになりました。
   座ったのがお一人だったのです。
   そう奥様だけが・・・・・・。

奥様「この本、覚えてらっしゃる?昨日本棚から出してきましたの」
奥様「貴方と出会った時に読んでいた本ですよ、ちょうどこの32ページ」
奥様「ここに書かれている内容がね、幸せに感じる事が出来る空間を共有する
   方は必ず現れるって書かれていますのよ。だから私は貴方をずっと
   待っていたのかも知れませんね。
   貴方、今笑ってるでしょ この写真の中の貴方のように・・・・・・」
奥様「この笑顔の先に居るのは、間違いなく私ですね。
   私が撮影したんですものね・・・・・・」
奥様「カメラの前では、いつも緊張して笑えなかった貴方が唯一笑った写真」
奥様「貴方はこの写真好きじゃ無いっておっしゃっていたけど・・・・・・
   私は1番のお気に入り」
奥様「だって笑ってる写真、この一枚しか無いんですもの・・・・・・」
奥様「私が何度もせがんで笑ってって、お願いした時に、最大の笑顔をして
   下さったのよね。
   この写真が今の私の1番の宝物なのよ? 貴方・・・・・・」

   SE 突風が吹く音

奥様「貴方ね? 来て下さったのね、風で桜の花びらが貴方の笑顔
   に・・・・・・」
奥様「来て下さってありがとう、貴方と生きた人生は最高に幸せだったわよ
   生まれ変わっても、また貴方の妻にしてくださる?」
奥様「そう、ありがとう、生まれ変わっても私、このベンチでこの本を読んで
   居ますので、貴方、私を見つけて、ここ良いですか? って声を掛けて
   下さいね。きっとですよ」
奥様「それじゃ、今日は貴方にも会えたことだし、戻りますね。
   また来年の4月10日にね」。
   奥様は、本の間にご主人の写真をそっと挟んで帰って行かれました。
   翌年の桜も見事に咲き、奥様を迎える準備は整っていました。
   が、4月10日に奥様の姿はこのベンチにはありませんでした。
   僕は、不安で心が揺れました。
   そして次の日の朝に、僕は懐かしい優しく暖かい感触を覚えて、
   目を覚ましました。
   そこには2羽の雀が止まって、楽しそうにお喋りをしていました。
   僕にはこの2羽の雀が、あの老夫婦だと思えて

僕「お帰りなさい」

   と声をかけました。
   2羽の雀は、笑ったように見え、青空高く飛び去りました。

僕「いつまでもお幸せに!」

   僕は姿が見えなくなるまで見つめていました。

                               おしまい


この作品は、私が初めて書いた処女作です。
兵庫県のとあるため池の側にある、桜が綺麗な公園のベンチに、老夫婦が座り
楽しそうに話されていたのを見て書いてみました。


次回は猫のお話をお届け致します。
お楽しみに。

こちらでは、貴方が主役の物語を描かせて頂きます。
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