環境問題読本⑧~現代社会・地学・生物・化学の4教科にまたがり、国語・英語でも取り上げられる学際的テーマ、それが「環境問題」です。

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8、循環型社会(Recycling-oriented Society)

(1)「大量生産・大量消費・大量廃棄」(Mass Production, Mass 
Consumption, Mass Disposal)から「省エネルギー・適正消費・リサイクル」(Energy Saving, Appropriate Consumption, Recycling)へ
 「循環型社会」(Recycling-oriented Society)の実現という「環境立国」(Building an Ecologically Sustainable Society)」の道が叫ばれていますが、ここでも福祉同様、ドイツや北欧が大いに参考になるとされています。
 例えば、ドイツでは戦後50年間をかけて電線の90%以上を地中に埋める作業を完了し、ゴミ問題に対しては1996年に「環境経済・廃棄物法」を制定しています。ここではゴミを出さないことを第一に掲げており、やむを得ずゴミが出るなら再利用する、どうしても無理な場合にだけ処分するという優先順位をつけています。また、役割を終えたテレビや冷蔵庫、車などについては製造企業に回収させ、再利用させようとしているのが特徴で、回収責任が企業にあれば、製造段階でゴミにならないように工夫すると期待されています。ドイツでは容器包装廃棄材の80%がリサイクルされており、18種類にゴミを分別する地域もあります。ドイツ環境省に発表した統計では、ゴミの量は減ってきており、処分場は十分な余力があると言います。
 これに対して日本では、リサイクル率はアルミニウム缶が約98%で、ペットボトルは約87%ですが、処分場の慢性的不足、周囲の環境汚染、不法投棄問題などが深刻です。家庭から出るゴミも産業廃棄物は増えており、処分場の余力も乏しく、さらに産廃処分場の建設問題をめぐって全国で紛争が起きています。また、アメリカでは環境ビジネスが市場として開拓されつつあり、世界に攻勢をかけていますが、ここでも日本は大きく遅れをとっています。

(2)循環型社会の構築のための3R
①リデュース(Reduce)=包装の簡略化のように無駄なものを省くこと。
②リユース(Reuse)=まだ商品価値のある物を再使用すること。
③リサイクル(Recycle)=素材やエネルギーとして再利用すること。
 循環型社会形成促進法(Basic Law for Establishing a Recycling-based 
Society、2000年制定)によって、廃棄物処理の優先順位が「発生抑制(リデュース)」―「再使用(リユース)」―「再利用(リサイクル)」―熱回収―適正処分と法定化され、特にリサイクルに関しては、容器包装リサイクル法(1997年施行)、家電リサイクル法(2001年施行)や自動車リサイクル法(Law Related to the Recycling of End-of-life Vehicles、2002年成立)の整備が着実に進んでいて、社会的認知も定着していると言えますが、リサイクルの前により環境負荷が小さいリユースの重要性がもっと強調されるべきであると指摘されています。例えば、冷蔵庫を家電リサイクル法に従って処理した場合、遠方の処理工場まで運搬し、フロンガスを回収した上で粉砕し、原料として再利用するのですが、運搬と処理に大きな環境負荷と費用が発生します。一方、リユースの場合は最寄りのリサイクルショップが回収すれば、運搬は最小限で済み、清掃・部品補充・動作チェックを行なって再商品化されるため、処理コストも極めて小さいのです。そもそも粉砕しないため、大規模な処理プラントやフロンガスも不要だというわけです。これはペットボトルのリサイクル率は向上しているにもかかわらず、廃棄される量はむしろ増えているという例に見られるような「リサイクルの限界」に対して、新しい動きを示すものとされています。
 いずれにせよ、大量に物を使い、捨てる「使い捨て経済」の社会から、3Rが浸透した「循環型社会」への移行はまさに日本の構造改革の過程ですが、それは消費抑制ではなく、本当に使う価値のある所へお金を向けさせ、新たな消費を生むのであるという認識を新たにする必要があるでしょう。

(3)環境問題の課題
①社会と個人の意識変革
 「環境教育」を本格的に導入した「環境立国」の道を取り、個々人においても身近なゴミの分別(「分ければ資源、混ぜればゴミ」と言われます)、リサイクル活動の推進、買い物袋持参といったことから、「人間と自然との共生」という意識を育てていく必要があります。

(1)グリーン・コンシューマリズム(Green Consumerism)
 消費者が企業に対して環境に良い行動を要求し、消費者自身も環境にやさしい消費生活を営もうとする運動です。

(2)ナショナル・トラスト(National Trust)
 住民が開発や公害から自然環境や歴史環境を守るために、土地や文化財を買い取ったり、寄贈を受けたりして、それらを保存する運動です。

(3)エコファンド(Eco-Fund)
 環境への取り組みなどの観点から企業を評価し、環境対策を行なっている企業の株式に集中的に投資する投資信託です。

(4)拡大生産者責任(EPR=Extended Producer Responsibility)
 OECDが名づけた概念で、製造物に対する生産者の責任を製品の生産から使用(廃棄)後まで拡大する制度です。この考え方はこの言葉ができる前から実践されており、その最初は1991年のドイツの包装廃棄物政令だとされています。

(5)無過失責任(Liability without Fault / Absolute Liability)
 故意、過失の有無にかかわらず、損害が発生すれば、その責任を負うこと。近代市民法では「過失責任主義」を原則としてきましたが、危険を伴う高度な科学技術を利用した企業などが出現するに及び、損害発生時に加害者の過失を立証することが容易ではなくなり、被害者救済が不十分となってきたため、「無過失責任主義」が導入されることとなりました。具体的に公害についてどこまで「無過失責任主義」が取れるかが問題となりましたが、1972年に大気汚染防止法、水質汚濁防止法が改正されて、事業者の無過失責任が認められました。また、1995年に施行された製造物責任法(PL法=Product Liability 
Act)は、製造物の欠陥に関わる被害について、無過失責任法理を導入したことで知られています。

(6) 自然の権利訴訟(Rights of Nature Litigation)
 自然環境を保護するために動植物や土地を原告として裁判を起こすことです。アメリカで始まり、日本でも1995年に奄美大島のゴルフ場開発計画に対し、アマミノクロウサギを原告とするアマミノクロウサギ訴訟が起こされたのを皮切りに、全国で自然の権利訴訟が起こされています。

②代替物質の開発とゴミを出さない社会作り(Development of Alternative Materials and Creating a Society that does not produce trash)
 日本をはじめとする高度経済成長を遂げてきたハイテク先進国家は、従来、自然の開発と利用にフル活用してきた技術力を、今度は環境保全や有害物質を生まない代替物質の開発に振り向けるべきであると指摘されています。現在では、徹底的にゴミ問題に取り組んできた環境先進国ドイツのように、ゴミを出さないことを第一とし、止むを得ずゴミが出るなら再利用し、どうしても無理な場合にだけ処分するといった優先順位を設け、製造企業に回収責任をもたせて、製造段階でゴミが出ないような工夫をさせるといった法整備も進んできています。また、環境ビジネス(環境産業=Environmental Industry、エコビジネス)の発達も、環境立国推進の見逃せない要因となるでしょう。

(1)環境基本法(the Basic Environmental Law)
 公害対策基本法(1967年成立)を発展解消させて、1993年に成立。地球環境問題に対応する内容となっています。また、公害防止や自然保護など公害対策を一元化させるために1971年に発足した環境庁も、2001年に環境省に昇格しています。

(2)グリーン購入法(Act on Promoting Green procurement)
 国や地方公共団体に対して、環境に配慮した商品の調達を義務付けた法律です。2001年施行。

(3)ゼロ・エミッション構想(Zero-emission Concept)
 廃棄物を出さない製造技術の開発を目指す計画で、産業の製造工程から出るゴミを別の分野の産業の原料にすることなどで、資源の消費を抑え、廃棄物を最少化しようとしています。国連大学が提唱して1994年4月にスタートしました。

(4)エコタウン事業(Eco-town Project)
 環境・リサイクル産業育成と地域振興を結びつけた事業のことで、1997年に創設されました。2002年現在で、北九州市など16地域が承認を受け、取り組みを進めています。

(5)アスベスト(asbestos、石綿)
 吸入することで肺がん・悪性中皮腫などを発症することがあるため、2006年にアスベスト健康被害救済法が施行されました。
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