(6)実は宇宙の構造はナゾだらけ:自然学
①「Why」どころか「How」も分からない「宇宙の構造」
「なぜなのか?」を問う哲学者、「どのようになっているのか?」を問う科学者~「宇宙の構造」の研究が進めば進むほど、分からない疑問が増えていくのです。
インフレーション・モデル~1980年以降、佐藤勝彦らによって提唱された、ミクロ的な量子宇宙とビッグバン以後のマクロ的宇宙との橋渡しの理論です。宇宙は誕生直後の10の-36秒後から10の-34秒後までの間に、エネルギーの高い真空(偽の真空)から低い真空(現在の真空)に相転移し、この過程で負の圧力を持つ偽の真空のエネルギー密度によって引き起こされた指数関数的な膨張(インフレーション)の時期を経たとしています。ビッグバン理論が抱える「地平線問題」と「平坦性問題」、さらに大統一理論のネックとされる「モノポール問題」の3つが理論的には一気に解決されるとされます。
地平線問題~宇宙はなぜこれほど一様で等方的なのかという問題です。ビッグバン理論では、宇宙の誕生時には物質やエネルギーの密度のゆらぎ(でこぼこ、これが後の銀河の種子になったと考えられます)があったはずですが、宇宙背景放射はきわめてムラの無い一様な状態であることが判明し、これは宇宙がその誕生時には密度が非常に均一であり、銀河の種子が無かったことを意味します。これに対して、インフレーション・モデルでは急膨張以前の段階でこうした均一性がチューニングされていたとしています。ちなみに1989年に打ち上げられた宇宙背景放射探査衛星COBE(コービー)によって、それまで見つからなかった宇宙背景放射の微妙なゆらぎを発見し、宇宙の初めには確かに銀河の種子があったことが証明され、ビッグバン理論に強力な裏付けを与えました。
平坦性問題~観測によれば、宇宙の曲率は限りなくゼロに近い所にあり、宇宙はなぜこんなに平べったいのかという問題です。確率論的にはほとんどゼロに等しい現象とされます。これに対してインフレーション・モデルでは、宇宙も初期には曲って見えたかもしれないが、インフレーションによる急激な膨張でそのゆがみが引き伸ばされ、今、観測できる限りの範囲では平らに見えるようになったとしています。
モノポール問題~大統一理論によれば、真空の相転移の理論的帰結として様々なモノポールが存在し得るとされますが、未だに見つかっていません。これに対して、インフレーション・モデルでは今日の宇宙はたった1つの対称性が破れた場から、言い換えれば、無数にできた真空の泡の1つから急膨張によって生まれたもので、モノポールは存在しないとしています。
宇宙の大規模構造~銀河の密集した部分が数億光年もの長きにわたって延々と並んだ、壁のような大構造「グレート・ウォール」を作っていることが分かりました。
グレート・アトラクター~巨大引力源とも呼ばれ、銀河の大集団と考えられています。近傍宇宙の大規模構造の一つであり、いくつかの銀河および銀河団の特異運動からその存在が予測されている銀河間空間内の重力異常です。さらに局所銀河団を膨大な重力で引っ張る(「ストリーミング運動」)超銀河団の存在も知られており、例えばラケニア超銀河団、シャプレー超銀河団、かみのけ座超銀河団、おとめ座超銀河団、へびつかい座超銀河団などがあります。
ボイド(泡、超空洞)~グレート・アトラクター同士の超大構造の間隙に延々と広がる、ほとんど全く物質の存在しない広大な空間です。
ダーク・マター(暗黒物質)~宇宙における全物質(銀河や超銀河団)を分布し、集合させているエネルギーを現在の観測事実に矛盾することなく算出すると、宇宙の95%もの未知なる物質の存在を想定しなければならないのです。そのうちの1つががダーク・マター(暗黒物質)で、これは宇宙の所々に塊で存在し、見えないのに重力を持つ物質です。最近では、ダーク・マターの重力の影響でその背後にある銀河がゆがんで見える現象「重力レンズ効果」が発見され、ダークマターが宇宙にどのように分布しているのかという地図づくりも進められていますが、その正体はいまだに不明です。
ダーク・エネルギー(暗黒エネルギー)~ダーク・マターとともに宇宙全体の95%を占めるとされている物質です。ダークエネルギーは宇宙全体に均等に分布していて、宇宙が膨張するスピードをどんどん速くする力を持っています。かつての宇宙論では、宇宙全体の重力でブレーキがかかり、膨張は遅くなっていくと思われていたのですが、遠くの超新星(ある星の一生の最後に起きる爆発現象)が、これまでの理論で予想される速度よりも速く遠ざかっていることが発見され、宇宙の膨張速度はどんどん速くなっていることが分かったのです。そのため、重力に逆らって加速しながら宇宙を押し広げる未知の力はダーク・エネルギーと名づけられました。この正体もいまだに不明です。
【参考文献】
『異貌の科学者』(小山慶太、丸善ライブラリー)
『ノーベル賞の100年 自然科学三賞でたどる科学史』(馬場錬成、中公新書)
『新しい科学論 「事実」は理論を倒せるか』(村上陽一郎、講談社BLUE BACKS)
『宇宙論の危機 新しい観測事実に揺れる現代宇宙論の最前線』(マイケル・D・ルモニック、講談社BLUE BACKS)
『宇宙を測る 宇宙の果てに挑んだ天才たち』(キティー・ファーガソン、講談社BLUE BACKS)
『よくわかる宇宙論の迷走と過ち ビッグバン理論は間違っていた』(コンノケンイチ、徳間書店)
『超ミクロの空間は<意志>に満ちた<霊界の宇宙>だった 死後の世界を突き止めた量子力学』(コンノケンイチ、徳間書店)